逆転への秘策
思うように話をまとめられない結果、自分でも驚くほど長い文章になってしまいがちです。
ドープ山に影の1人【レオス】が現れた。すぐさま現場に向かったアストメンバー。レオスと対峙したメンバーはエクスティブモードでの総攻撃を繰り出したが、レオスに傷をつけることすらできず、ついにはその反動で全員疲労してしまい、膝をついてしまう。そしてついにレオスが動き出した。
「おいおい。少しは頑張れよお前ら」
あっけないアストに呆れ切ったレオスが言い放つ。
夜光達はどうにか立ち上がり、武器を構えた。
だが、エクスティブモードは一時的に精神力を上げる、言ってみれば必殺技のようなもの。その分疲労が激しい。前回の反省を活かして改良を加えられてはいるため、意識を失うことはないが、疲労感を完全に消すことはできなかったようだ。
「(うかつだった。楽観していた訳ではないが、全員の総攻撃を受けてもダメージを負わないとは・・・)」
総攻撃を提案してしまったスノーラはそのことを深く悔いた。
「じゃあそろそろ俺も暴れさせてもらうぜ?」
レオスはまず、夜光の前に立ちふさがった。
「このっ!」
夜光は勢いよく2本の剣でレオスの腹部を狙った。
だが命中しても、金属同士の音が響くだけだった。
「黒いの! 攻撃ってのはこうやるんだよ!」
レオスは身の丈以上ある金棒を夜光めがけて振り下ろした。
「くっ!!」
夜光は剣で受け止めるが、あまりの重さに夜光の足が地面に沈んでしまった。
「重いんだよ!! デカブツ野郎!!」
夜光は全身に力を込めて、金棒を弾き返した。
「ほう。なかなか骨があるじゃねぇか・・・だが!」
レオスは、無防備な夜光の腹部に重い拳を入れた。
「ごはっ!!」
「脇が甘いな」
夜光の腹部から鈍い音がした。衝撃がアーマーを通り越して、直接夜光にダメージを与えたのだ。
夜光は吐血し、そのまま数メートル吹っ飛ばれた。
「「「夜光!!」」」
「「夜光さん!!」」
夜光は倒れたまま動かなくなってしまった。
「テメェ! よくも!」
ルドが怒りに任せてレオスに突撃する。
「ルド、よせ!!」
スノーラの静止を無視して、ルドはレオスに飛び掛かり、頭部に斧を振り下ろした。
「でやぁ!!」
だが命中しても、レオスはまったくひるまない。
「クソッ!!」
ルドは再び飛び掛かり、今度は薙ぎ払うように斧でレオスに一撃喰らわせた。
だがやはりレオスには効いていない。
「まだまだ!!」
力任せに攻撃を繰り返すルドだが・・・
「攻撃に腰が入ってねぇぞ!? 牛!」
レオスはルドの頭上に金棒を振り下ろす。
「しまった!!」
攻撃に必死になっていたルドはよけることができずに、そのまま金棒に押し潰された。
「がはっ!!」
レオスが金棒を持ち上げると、倒れているルドの体は地面に半分埋もれていた。
『ルド! しっかりしろ!』
スノーラの呼びかけにも答えない。
起き上がらないルドを見て、レオスは次の相手を探す。
「次はそうだな・・・そこの猫。お前どうだ?」
次に狙われたのはセリアだった。
セリアは思わず震え上がった。
レオスとの実力差を目の当たりにしたのだから無理もない。
レオスがセリアに近づこうとすると、
「セリアちゃん!!」
セリナがレオスの前に立ちふさがり、シールドを張った。
「それ以上近づいたら怒るよ!!」
セリアを守ろうと錫杖を構えるセリナ。
だが手足はかなり震えていて、レオスに恐怖しているのは明白だった。
「おっお姉様! 逃げてください!」
セリアが逃げるように言っても、セリナは首を横に振る。
「逃げないよ!! これでも私、お姉ちゃんだもん!!」
それは逃げたい気持ちを抑えて、戦おうとするセリナの勇気の言葉だった。
「ほう。妹を守るために体を張るとは、肝の座った姉ちゃんじゃねぇか」
レオスが感心したような言葉を吐くと、ライカがセリナのそばまで飛んできた。
「馬鹿のくせに、何言ってんのよ」
などと皮肉を言うが内心セリナを称賛していた。
「あたしがあいつを抑えるから、あんた達はその隙にここから離れなさい!」
ライカはすばやくレオスから距離を取り、
「はあ!!」
鉄扇を仰いでできた風の刃をレオスにぶつけた。
そこへさらに、レオスの後方数メートルからスノーラが銃弾を放った。
「(ちっ! どうも遠距離タイプは苦手だぜ)」
舌打ちしたレオスは足元の野球ボールサイズの石を拾うと、石に精神力を込める。
「オラァ!!」
スノーラ目掛けて投げつけた。
「何っ!?」
突然のことにスノーラはよけきれず、右肩に石が命中した。
「うっ!!」
右肩に鈍い痛みを感じたスノーラは右肩を抑え、痛みに耐えた。
「馬鹿な、あんな石1つで肩をやられるなんて・・・」
骨は砕けていないようだが、これでは銃は撃てない。
「スノーラ!!」
ライカは倒れたスノーラに向かって思わず呼び掛けた。
・・・それが失敗だった。
「しまった!!」
ライカの動きが一瞬止まったのをレオスは見逃さなかった。
レオスはその大きな手でライカの頭を掴んだ。
「おいおい。戦闘中によそ見は禁物だぜ?」
「このっ!! 離しなさいっ!!」
ライカは必死に抵抗するが、レオスの手は緩まない。
「わかったわかった。離してやるよ」
レオスはライカの頭を離すと同時に、ライカの腹部に膝蹴りを入れた。
「かはっ!!」
「さすがに、タダでは無理だがな」
ライカは吐血し、夜光のように数メートルほどふっ飛ばされ、地面に落ち、そのまま動かなくなった。
「ライカちゃん!!」
セリナの呼び掛けに応答がない。
「・・・そんな」
セリアは恐怖のあまり、腰を抜かした。
「まずい・・・このままでは本当に全滅してしまう!」
そこへスノーラに笑騎から通信が入った。
『スノーラちゃん! さすがにこれはヤバいで!! すぐに転送システムでみんなを回収するわ!!』
「あぁ、頼む。これ以上は危険だ」
スノーラも戦闘続行は不可能だと思い、転送システムの要請を頼んだ・・・その時だった!
「・・・んっ?」
レオスの前にゆっくり近づく黒い影・・・
「夜光!!」
「夜光さん!!」
それは再び立ち上がった夜光であった。
腹部がまだ痛むのか、やや中腰になっている。
「やってくれたじゃねぇか。デカブツ野郎」
強気な発言に見えるが、息はかなり乱れている。
それは夜光のダメージの大きさを物語っている
「俺の拳を受けて再び向かってくるとは、大した度胸だな」
「丈夫さと寝た女の数が自慢なんでな」
夜光がやせ我慢に近い冗談を言うと、笑騎から通信が入った。
『アホ! こんな時に何を冗談かましとんねん! お前のダメージかて軽くないんやから、転送システムを動かすまで待っとけ!』
「・・・おい、デブ。それは動くまでどのくらいかかる?」
『誰がデブじゃ! お前だけ置いていくで!!』
「その時は俺がお前をあの世に送ってやる!」
『なんちゅう身勝手な奴や・・・大体5分くらいや』
それを聞くと、夜光はセリアとセリナに歩み寄る。
2人は夜光の登場で少し安心したが、まだ腰は抜けている。
「お前ら、まだ動けるなら少し手を貸せ」
夜光は2人に協力を求めた。
「手を貸せって、あいつをやっつける作戦でもあるの?」
不安げにセリナが尋ねると「あるかよそんなもん」とあっさり否定した。
「あ・・・あのではどうするのですか?」
「・・・お前ら耳貸せ」
夜光は小声で2人にあることを指示した。
一方のレオスは3人が話している間、手を出さなかった。それは余裕という訳ではなく、3人がどうやってこの状況をひっくり返すつもりなのかという興味本位によるものだった。
「・・・えっ?」
「ねぇ、夜光。そんなことしてどうするの?」
夜光の指示の意味がわからない2人は疑問を抱く。
「いいから言われた通りにしろ!」
説明する気はないようだ。
「・・・わかった!」
「・・・」
セリナとセリアは再び立ち上がり、武器を構えた。
「・・・作戦会議はもういいのか?」
レオスの質問に、夜光は冗談交じりにこう返す
「そんな大層なものでもないがな。わざわざ待ってくれてありがとうよ。お礼は肉がいいか?」
ライオン型のレオスに対する夜光の冗談にレオスも冗談でこう返す。
「それもいいが、お前らが俺に向かってくればチャラにしてやるよ」
「・・・ああいいぜ? 逃げるまでの間ならな」
「よっしゃ! 来い!!」
レオスが豪快に金棒を振り回す。
「じゃあお前らさっき言った通りな」
「はっはい!」
「まかせて!」
まずセリアがレオスに向かって突撃する。
「真向勝負か! いいだろう!」
セリアはレオスの前で勢い良く飛び上がり、
「やあぁぁぁ!!」
力強く剣を振り下ろした!
もちろんレオスは金棒で防御した。
そこへさらにセリナが突撃していった。
「同時攻撃か?」
しかし、セリナの攻撃ではレオスにダメージを与えることはできない。
まして、エクスティブモードでない通常攻撃などレオスには無意味だ。
レオスは堂々と攻撃を受けようとした・・・その時だった。
「えーい!!」
セリナが狙ったのはレオスではなく、レオスの足元だった。
「何っ!?」
次の瞬間、地面が爆発した。
セリナは本来、火球を飛ばす遠距離攻撃がメインなのだが、あまりに命中率が悪いため、メンバーから近距離攻撃をするように言われていた。
しかしいくら命中率が悪くても、至近距離で放つ火球なら、さすがのセリナも外しようがない。
爆発と同時にセリナとセリアはレオスから離れた。
「うおおお!!」
爆発と共に足元の地面が崩れたため、レオスはバランスを崩して転倒した。
「さてと・・・そろそろ行くか」
夜光はエクスティブモードを起動し、レオスに突撃した。
「くっ!! やべぇ!!」
レオスは起き上がろうとするが、その巨体ですばやく動けない上、もともと疲労していたためすぐには起き上がれない。
そしてその隙に、夜光が闇を帯びた剣をレオスに振り下ろした。
「黒いの! 転倒させたくらいで俺にダメージなんぞぉぉぉ!!」
レオスは声にならない悲鳴を上げた。
それは夜光の攻撃が効いたと言うより、攻撃した場所が問題だった。
「・・・思った通り」
夜光が凶悪な笑みを浮かべて狙ったのは・・・レオスの股間だった。
「もう一発!!」
夜光はもう片方の剣を再びレオスの股間に振り下ろした。
「ぐほっ!!がが・・・おま・・・お前・・・」
直接届いていなくでも、疲労でアーマーの性能が落ちているため、その衝撃は多少伝わっていた。
ましてや、股間を攻撃されれば大抵の男はひるむ。
「お・・・お前! 今のはさすがに卑怯だろ!!」
両手で股間を抑えながら痛みに耐えるレオスに、夜光は冷たく言い放つ。
「バーカ!! 喧嘩なんて勝てばいいんだよ勝てば。 スポーツの試合じゃあるまいし、卑怯呼ばわりされる覚えはねぇよ」
その光景を見ていたスノーラとセリアは顔を真っ赤にし、セリナはなんのことかわからずに首を傾げた。
そして再び笑騎の通信が入る。
『みんな! 転送の準備できたみたいやから今から回収するで!?」
笑騎の通信と共に夜光達の体は光り始めた。
「それじゃあなデカブツ。そろそろ退却させてもらうぜ?」
夜光が剣を収めて、転送されようとした時、レオスが最後にこんなことを尋ねた。
「黒いの! お前名前はなんて言うんだ?」
敵に本名を名乗る義理はないと思った夜光はとっさに
「・・・闇鬼とでも呼んでろ」
自分のアストの名前を言い残し、夜光達はホームへと転送された・・・
そして残されたレオスは笑みを浮かべながら
「・・・闇鬼か。 覚えておくぜ?」
レオスは立ち上がるとドープ山の方へ歩き出し、そのまま森の奥へと姿を消した・・・
ホームに転送された夜光達は、そのまま医療ルームで手当てを受けることになった。
全身打撲の夜光とライカとルドは骨や内臓に異常はなかったが、体に大きなアザがあったため、1週間ほど医療ルームで安静にすることになった。
スノーラは右肩に打撲があったが前の3人に比べたら軽傷なので、ギプスを付けて少し経てば完治するそうだ。
セリナとセリアはケガはしていないが、エクスティブモードの疲労や戦闘での恐怖ですっかり疲れ果てて、医療ルームのベッドで熟睡した。
もちろんほかのメンバーも疲れ果てているため、その日は6人全員で医療ルームで一晩過ごすことになった・・・
翌日、セリアとセリナは帰宅し、3日後にスノーラもギプスが取れたため帰宅した。
ケガが治りきっていないライカは、夜光のいびきがうるさいからと部屋を変えてもらった。
その夜光は医者も驚くほどの脅威的な回復力で、1週間のはずが3日で完治した。
ところが生活費惜しさにケガが治りきっていないと嘘をつき、無料で泊まれる医療ルームに居座ったため、誠児の手によって強制的にアパートへと帰宅させられた。
そして1週間後・・・
ルドとライカのケガもすっかり治り、ようやく帰宅の許可が降りた。
許可が降りた翌日・・・
ルドが空腹のため、ホームの食堂で朝食を食べていた時だった。
「おはよう。ルド」
声を掛けてきたのはゴウマだった。
「おはよう! ゴウマ国王も飯か?」
「いや、君に渡す物があってね。スタッフに聞いたらここだと教えてくれたんだ」」
そう言うとゴウマは上着の内ポケットから小さな包みを取り出し、ルドに手渡した。
「なんだよこれ?」
ルドが包みを開けると、中にあったのは独特の模様がある1本のハチマキだった。
網目がしっかりしているので、布を切った物ではなく糸で編んだハチマキのようだ。
ハチマキを見た瞬間、ルドは驚きの表情を見せた。
「これって、闘志のハチマキじゃないか!?」
「そうだ。 ケンタウロス族が”息子”の成長を祈って作る伝統のハチマキ。
昨日ご両親から手紙が届いたんだ。結婚式の騒動でしばらく森を出ることを禁止されてしまったので、代わりにハチマキを渡してくれと頼まれたのでな? 慌てて笑騎を遣いに出して、今朝届いたんだ」
神聖な結婚式を中止にしてしまった罰として、両親は謹慎を言い渡されたのだ。
しかしこのハチマキには1つ重要な意味があった。
「・・・父さん・・・母さん・・・」
意味を知っているルドは嬉しさのあまり涙を流した。
闘志のハチマキとは、ケンタウロスの”男”にだけ与えられる親からの勲章のようなものだ。
女には本来、髪飾りを渡すことがケンタウロスの決まりだが、両親はルドを息子と認めると言う意味を込めてハチマキを渡したのだ。
その気持ちに気づいたルドは力強くハチマキを握りしめたのであった・・・
一方の夜光は・・・
「クソッ!! なんで俺が掃き掃除なんてしなきゃなんねぇんだよ!!」
箒を片手にぶつくさ文句を言う夜光。
実はケガを偽って医療ルームに居座った罰として、ゴウマにホーム周辺の掃き掃除を命じられたのだ。
「・・・自業自得だ」
隣で一緒に掃除をしている誠児は、ゴウマに頼まれて夜光がさぼらないように見張っている。
「ったく!! 俺はどっかのギャグアニメのおじさんかよ!?」
「口を動かす暇があったら手を動かせ!」
「(ちっ! こいつがいる以上抜け出せないか・・・)」
逃げるのを諦めて掃除をしていた夜光の元に歩いてくる人影があった・・・
「夜光!」
名前を呼んだ方向に視線を向けるとそこにルドが立っていた。
「ルドか。 俺になんか用か?」
夜光の前まで歩くルドはなぜか顔を赤くしていた。
「な・・・なあ夜光。 話があるんだけどいいか?」
「まあいいぜ? 3分くらいなら」
長い話を聞く気はないという意味のようだ。
「あの・・・その・・・」
まるでセリアのようにもじもじしながら、口ごもるルド。
「言いたいことがあるなら早くしろ!!」
しびれを切らすのが早い夜光に誠児は思う。
「(掃除が嫌だからって当たるなよ・・・)」
そしてルドが口を開いた。
「あ・・・あのさ! 夜光のこと・・・”兄貴”って呼んでいいか!?」
ルドの告白のような質問に夜光はこう返す
「・・・新手の告白か? それ」
「ばっバカ! んな訳ないだろ!? 尊敬しているって意味だよ!」
思わず真っ赤になって否定するルドに、夜光はやれやれと首を振り、
「まあ、呼びたいなら好きにしろ」
とだけ言うと、ルドは満面の笑顔で
「そ・・・そうか! ならこれからもよろしくな! ”兄貴”!」
「まあよろしく」
「じゃあオレ、そろそろ帰るよ! またマイコミでな!」
ルドはそう言い残すと、その場を逃げるように立ち去った。
「・・・よかったな。夜光。”尊敬”してくれる子ができて」
笑顔で意味深な言葉を口にする誠児に
「全く、良い男ってのも楽じゃねぇな」
意味深な言葉で返す夜光であった・・・
誠児「両親とルドが上手くいってよかったですね!?」
ゴウマ「あぁ。これも夜光やみんなのおかげだ」
誠児「でもまさかルドが私と同じ精神科医師になりたいだなんて驚きましたよ」
ゴウマ「そうだな。 2人の夢が叶うように、ワシは全力で応援するぞ!」
誠児「ありがとうございます!・・・ところで次の話は演劇会でしたっけ?」
ゴウマ「そうだ。 ワシもうっかり忘れていたが、本番はもうすぐだ」
誠児「大丈夫かな?夜光の奴。いつも練習に寝坊してメンバーに怒られているみたいだし・・・」
ゴウマ「・・・本番当日は寝坊しないことを祈る」




