一気一丸
バトルシーンが上手く書けず、悩みながらも進めます。
ゴウマからスノーラの意識が戻ったとの連絡があった。
しかし、その連絡を聞いてもなお、心配すらしないライカにルドの怒りを露わにする。
一触即発な2人の前に突如現れた夜光。
父への憎しみと夢への憧れの中で苦しむライカに、夜光は生きていく中で答えを見つけるように告げた。
ホームの医療ルームでは、意識を取り戻したスノーラは医師の診察を受けていた。
心配で駆けつけたゴウマとセリナとセリアの3人が心配そうな顔でソファに座っている。
診察の結果、このまま安静にしていればすぐに動けるようになるようだ。
それを聞き、3人はほっと胸を撫で下ろした。
ゴウマは念のため、スノーラの怪我の具合を医師から詳しく聞くために別室に移動した。
残ったセリアとセリナはゴウマが戻ってくるまでスノーラのそばにいることにした。
安堵したセリナは目に涙を浮かべ「よかった・・・スノーラちゃんが助かって」とグズってしまった。
スノーラは申し訳なさそうに「ご心配をおかけしました」と手で涙をぬぐってあげた。
そこへ、医療ルームのドアが開く音が部屋中に響き渡り、3人は自然とドアに目線を向けた。
「スノーラ! もう大丈夫なのか!?」
そう叫んで入ってきたのはルドであった。
額からかなりの汗を流し、少し息も切らしている。
その様子から、ルドがどれだけ心配していたかを伺うことができる。
「あぁ、もう大丈夫だ。 心配を掛けてすまなかった」
スノーラの元気そうな姿に、ルドもほっと胸を撫でおろす。
全員が安堵する中、気まずそうな顔でスノーラ達に近づくライカ。
彼女の姿を見た途端、周囲には重い空気が漂った。
自分を庇ってくれたスノーラに対し、感謝すらしなかったライカが現れたのだから無理もない。
「・・・お前は大丈夫だったか?」
沈黙と言う名の重い空気を打ち砕いたのはスノーラであった。
自分の身を案じるスノーラに、ライカは目をそらしつつ無言で頷く。
その返答で、スノーラは「よかった」と安堵の表情を浮かべる。
「・・・」
ライカはスノーラが心配で駆け付けたという訳ではない。
彼女自身、なぜ自分がここへ来たのかは明確に理解できてない。
ただ、自分の苦しみとどうやって向き合えば良いか、それを考えていると、自然にここへ足が動いてしまったのだ。
「(あたし・・・どうすればいいの?)」
思い悩むライカの頭に浮かぶのは夜光が言ったあの言葉。
『・・・そうやって言えばいいんだ。 難しい言葉は使わなくてもいい。わからないの一言でもいい。 つらいなら吐き出せ! 自分の中に押し込めるな!』
”過去という重荷を下ろす”。
ライカには言葉の意味がわからなかった。
何も分からず、難しい顔でたたずんでいるライカの気持ちを察したのか、スノーラが優しい声でこう尋ねる。
「ライカ、何か悩みでもあるのか?」
その言葉に反応するかのように、ライカの目が一瞬泳いだ。
その様子を見逃さなかったセリナは「悩みがあるの?」とライカの手を握る
「あっあたしは・・・」
口ごもるライカに対し、会話の苦手なセリアも「だだ大丈夫ですか?」と心配そうな声を掛けてくる。
「・・・」
ライカの心情を知っているルドは、何も言わずに静観している。
ここで自分が口を開けば、ライカはまた心を閉ざしてしまうと思ったからだ。
「(あたしは、どうすれば・・・)」
この時、ライカの脳裏に夜光の顔が思い浮かぶ。
『自分から言わないと誰も何も言わない。自分から動かないと何も動かない。お前は何も言わずに誰かに気づいてほしいって都合の良い甘ったれたことを考えているだけだ!』
最初は意味不明な言葉であったが、こうして自分を心配してくれる人達を目の前にして、ライカにはこの言葉の意味が少しだけ理解できたような気がした。
「みんなに自分の本音を話せば、何か変わるのかもしれない・・・」
今まで本音を封印してきたライカにとって、それは大きな壁であった。
本音を言えば、憎い父親と同じ役者になりたい自分を認めることになる。
ライカはそれが嫌で仕方なかった。
許すことのできない父親と諦めきれない夢、ライカの心を苦しめる2つの意志。
そんな自分を心配してくれるマイコミメンバー達。
そして、不器用ながらも温かい言葉をくれた夜光。
それらがライカの心に、変化をもたらした。
「みんな・・・ごめんなさい!」
『!!!』
ライカ突然の謝罪に全員驚いた。
そしてそのまま、ライカは言葉を続ける。
「あたしずっと、舞台女優になりたいって夢を追うことができなくて、誰かに八つ当たりしたくて、セリアやスノーラに冷たくしたり、単身で影と戦ってしまいました! 謝ったって傷つけたことやケガをした事実が変わらないのはわかっているし、許してほしいなんて思ってない!
ただ、みんなに謝りたいの・・・本当にごめんなさい!」
ライカが自分の本音を吐き出した後、周囲は静けさを増した。
、
すると、スノーラが再び口を開いた。
「素晴らしい夢だな」
「・・・えっ?」
「女優になったら、お前の初舞台に招待してくれ。もちろん最前列にな。
それでケガのことは忘れてやる」
スノーラは満面の笑顔でライカを許し、その夢を信じた。
「ライカちゃん女優さんになるの!?すっごーい! あんなに演技が上手なら絶対なれるよ!
私応援してるから! 私にできることがあったら何でも言ってね!」
ライカの夢を全力で応援すると言うセリナ。
「あ・・・あの・・・」
セリアがライカに歩み寄り、消えそうな声でおそるおそる
「練習の時はその、怖かったですけど・・・でっでも、演技ができていなかった私もえっと・・・悪いので、お・・・教えていただけますか?」
ライカに怒鳴られたことにひどくショックを受けていたセリアでさえ、またライカと演劇練習しようといってくれた。
「みんながそう言うなら仕方ねぇな。 でも今後はなんでも話すようにはしてくれよ?
じゃねぇとまた殴りに行くからな」
口は悪いが、ルドの顔にはにこやかだった。
「みんな・・・」
誰1人自分を責めたりせずに、こんな自分を仲間として迎えてくれ、夢を応援してくれるメンバー達。
「ホント、馬鹿ばっかり。このプログラム」
ライカの目から大きな涙がこぼれ落ちる。
彼女はこの瞬間、本当の意味でマインドコミュニケーションに入ったのかもしれない・・・
その時、緊急コールが室内に鳴り響いた!
部屋の空気が一気に緊張感に包まれる中、全員がマインドブレスレットのカバーをスライドさせた。
画面にゴウマが映り、状況説明を始めた。
『みんな。プラクという富豪の屋敷に影が出現した』
富豪という言葉にスノーラは反応した。
「富豪? それってまさか」
「あぁ。おそらく、ライカが戦ったスコーダーが率いる強盗団の仕業だろう。今、騎士団が応戦しているが、スコーダーに苦戦している。
怪我人も多数出ている。今回は君たちに騎士団が退却するまでの時間稼ぎをしてもらいたい」
「了解しました」
スノーラがベッドから起き上がろうとした時体中に激痛が走り、思わず前屈みになった。
ルドは慌ててスノーラの肩を掴み、ゆっくりとベッドに寝かせため、大事には至らなかった。
『スノーラ。まだ怪我が治っていない君を行かせる訳にはいかない。
ここで安静にしているんだ。いいね?』
ゴウマの言葉にセリナたちも賛同した。
「そうだよ。スノーラちゃんはここで休んでて。影は私たちでなんとかするから」
スノーラはメンバーにとってのリーダー的存在。そうでなくても、戦力を減らすのは危険だ。しかし、今のスノーラでは足手纏いにしかならないのが事実。ルドの言う通り、今は安静にするのがベストだと判断したスノーラはしぶしぶ「わかりました」と待機命令を受けた。
「夜光君にはさっき連絡した。ちょうど出現地のすぐ近くにいたようだから直接向かうそうだ」
「よし!いくか!」
ルドの掛け声と共にライカ達は医療ルームを出た。
場面は変わり、プラクの屋敷の近く・・・
そこでは騎士団とスコーダーとの戦闘が行われていた。
しかし、大勢の騎士団を相手にしているがスコーダーだが、体には傷一つついていない。
そこから数百メートル離れた所に闇鬼を装着した夜光が、一足先に来ていた。
「ったく。久々にいい店見つけたってのに、いきなり呼び出しやがって」
ぶつぶつ文句を言いながらメンバーの到着を待つこと10分・・・ようやくメンバーが到着した。
イーグルから降りたセリナが「夜光、今日は早いね~」と遅刻せず来た夜光に関心を抱いた。
しかし、それが2回目のセリフなのは覚えていないようだ。
「偶然近くにいただけだ」
夜光がそうぶっきらぼうにいうとセリアが近づいてきた。
その手には鞘に納められた2本の黒い剣が抱えられていた。
「どうしたんだ?それ」
そう聞くと、セリアはか細い声でこう答える。
「あ・・・あのお父様にこれを渡しそびれたので届けてくてと言われまして・・・」
「渡すってこの剣か?」
セリアは頷き、2本の剣を夜光の腰に付ける。
sこへちょうど、ゴウマから通信が入った。
『みんな、目的地に着いたか?』
それにルドが「あぁ。着いたぜ?」と答える。
『今回はスノーラがいない分、戦力が低くなっている。今回はあくまで騎士団が退却する
までの時間稼ぎが目的だ。もし、危険と判断したら、エスケープパネルを押して、戦線離脱するんだ。決して無理をするな』
ゴウマの忠告に、セリナは「わかってるよ!」と杖をブンブン振り回し、気合を入れる。
『それと、夜光君。剣は受け取ったか?』
夜光は「あぁ、受け取った」と腰の剣を軽く叩いた。
『それは君専用の武器《闇双剣》だ。 切れ味は抜群だが、多少重量はある。まあ、元々筋力のある君なら大丈夫だろう』
「大丈夫って、俺は剣なんて使ったことねぇぞ?しかも2本って(宮本武蔵じゃあるまいし)」
2本の剣や刀を操って戦う戦闘【二刀流】。幸い夜光は両利きなので振り回すことは可能だが、剣の扱いは素人だ。
ケンカの経験とその際に鉄パイプと武器にしたことはあるが、剣の心得はない。
『まあ、護身用と思ってとりあえず持っていてくれ』
「・・・はぁ」
夜光たちが屋敷に到着するとそこではスコーダーと騎士団が激しい戦闘を繰り広げていた。
騎士団はざっと100人くらいいるが、そのほとんどは倒れている。
残った騎士団が剣や銃器で応戦するが、スコーダーには傷一つつかない。
そして、スコーダーは手に集めた電気を一気に放出し、それを浴びた騎士団は次々倒れていく。圧倒的な力の差があるのは歴然だった。
これでは騎士団が全滅するのも時間の問題だろう。
そこへ、騎士団の1人が夜光たちに近づいてきた。
「君たちがゴウマ国王がおっしゃっていたアストか?」
「あぁ、そうだ」
ルドの言葉を聞くと、なぜか騎士の表情が少し険しくなった。
「私はタスクという。この部隊の騎士団長を任されている。見ての通り、我が部隊ではあの影に対抗できん。敵を目の前に撤退など騎士団の恥だが、そうも言ってられない。我々が撤退する間、時間を稼いでくれるか?」
セリナは「大丈夫!まかせて下さい!」と自分の胸を叩く。
「では、よろしく頼む」
そう言うと騎士団長は再び部隊の方へと戻っていった。
夜光たちはすぐさま、スコーダ―の元へ走った。
無言でスコーダ―の前に立ち塞がる夜光達。
彼らが視界に入ると、スコーダ―はこう尋ねる。
「アストの方々ですが。あなた方が現れたということは騎士団は撤退するということですね?」
夜光たちが騎士団の撤退までの時間を稼ぐということをスコーダーは読んでいたようだ。
皮肉っぽく「ずいぶん、良い勘しているな」などと誉める夜光。
「えぇ、まあ。それよりこの前の氷使いの方はご無事でしたか?」
「なんとかな。だから今回は休みだ」
「それは良かった。お怪我をさせてしまったことを深くお詫びしますとお伝えください」
スコーダーはわざわざ頭を下げて謝罪する。
夜光はスコーダーの本当に申し訳なさそうに発する言葉に少し戸惑いを覚えた。
「えらく優しいな。敵の心配をするなんて」
「事情があるとはいえ、私が怪我をさせたのは事実。謝罪するのは当然の礼儀です」
これほど潔い態度を取られると夜光以外のメンバーも戸惑う。
「なんか良い人っぽいね?」
セリナがスコーダーに対する評価を改める始末。
その時、ライカが鉄扇を構えた。
「最もなこと言ってるけど、それは向こうにいるお仲間たちと自首してから言いなさい」
夜光たちがスコーダーの後ろの方を見ると、強盗団が何かを入れた袋を屋敷から運んでいるのが見えた。
夜光たちは袋の中身はすぐに想像がついた。
「なるほどな。良い人を装って、本当はお前も時間稼ぎが狙いか」
ライカに続いてルドも武器である斧を構えた。
「ねぇセリアちゃん。あの強盗の人達、プレゼントを配りにいくのかな?」
能天気なことを言う姉に対し「とっとりあえず、武器を構えた方がよろしいかと」と武器を構えさせるセリア。
「えっ? うん!わかった」
状況がよくわからないながら、セリアの言うどおり杖を構えるセリナ。
「(あれも記憶障害か? それともただのアホか?)」
セリナの記憶障害に疑問を抱きながらも夜光も構える。
ただし、闇双剣はぶっつけ本番で使うのもなんなので、素手で挑むことにした。
「さすがに6人のアストと戦うとなっては、全力で応戦するほかないようですね」
スコーダーは腰に掛けてあった剣を抜いた。
それはかなり刀身が細い剣【レイピア】だった。
「すっ、隙だらけですね」
セリアの言う通り、スコーダーはレイピアを構えず、ただつっ立っているだけだ。
「そうだな。でもこういう無防備状態が一番危険なんだよな?」
ルドの言葉にライカがうなずく。
「そうね。隙を見せて相手の出方を伺う。戦闘ではよくある話ね」
「まあ間違っても、この状況で攻撃する奴は・・・」
夜光がフラグめいた言葉を言ったその時!
「えーい!!」
セリナのなんとも可愛らしい掛け声と共に、セリナが錫杖から火の玉を出し、スコーダーに投げつけた。
火の玉はそのまま一直線に進んだが、スコーダーから逸れて屋敷に直撃した。
あまりのことに全員唖然とした。
「・・・何してんの!?あんたは!?」
ライカが大声で詰め寄る者の、セリナはキョトンと首を傾げる。
「えっ? だって、無防備だったし・・・」
「そこは普通、警戒するところだろ!!」
ルドの言葉に、「えっ!? そうなの!?」と本気で驚いたセリナ。
「・・・っていうか、攻撃したならせめて当てろよ」
燃え盛る屋敷を見ながら、呆れ果てる夜光。
「あわわわ。どうしよう」
「とりあえず、あのサソリ野郎がやったことにしとけばいいだろ?」
スコーダーに罪を擦り付けようとする夜光。ゴウマの怒りの通信が入った。
「あっ、お父さん。どうしよう。私お家燃やしちゃった!!」
『そのことについては、あとで一緒に謝罪しよう。それより、今は目の前の敵に集中するんだ!』
そう言われ夜光たちは再びスコーダーに視線を戻そうとした時だった。
スコーダーは刀身に電流が走ったレイピアを構え、すばやく空を裂くように突いた。すると、レイピアから電流が一直線に放出された。
「よけろ!!」
夜光の合図でぎりぎり全員よけることができた。
「みんな! 大丈夫か!?」
ルドがみんなの安否を確認する。
そして、再びレイピアを構えるスコーダー。
「どうやらあなた方は自分たちの能力をまだ制御できていないようだ。放置していては、屋敷の仲間達に危害が及ぶ可能性があります。申し訳ないが、ここで大人しくして頂きます」
スコーダーは左手を前方にかざし「影兵」と発すると地面から人影が次々と現れた。
「どどどうしよう!? 囲まれちゃったよ!」
影兵に囲まれ、再びパニクるセリナ。
「こうなったら、こいつらぶちのめして、サソリ野郎をやっつけるしかねぇだろ!」
ルドの提案にゴウマを採用した。
その際、バラバラに行動するのは危険と判断したゴウマが、戦闘に不慣れなセリナとセリアにルドを付け、初めて自分の武器を使う夜光にライカをサポートして付くよう指示した。
『では、くれぐれも無理はするな!』
ゴウマとの連絡はそこでいったん切れた。
夜光「お前、戦闘の時はすみっこにでも引っ込んでたらどうだ?」
セリナ「えぇ!? なんで!?」
夜光「なんでじゃねぇだろ。空気を読まずに攻撃するわ、攻撃したらしたで、俺らに当たりかけるわ、屋敷に当たるわ」
セリナ「うぅぅ。ごめんなさい」
夜光「それかいっそ、その錫杖で直接叩くとか」
セリナ「こんな感じ? えいっ!!」
夜光「痛っ。俺を叩くな!・・・ってなんか背中が熱い」
セリナ「夜光!! 背中燃えてるよ!!」
夜光「ぎゃぁぁぁ!!」