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マインドブレスレット ~異世界の女神がくれた鬼の力で最強?っぽい存在に!! 巨乳美少女達と送る異世界ハーレムストーリー~  作者: panpan
~最終章~ マインドブレスレット編

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202/205

ラビィーナ

 ミツヤ……かつて影となって心界の敵とされた哀れな少年の名。

封印されてもなお、人間達の醜い欲望が彼を刺激してその力を強めていく。

もはや本人も押さえつけられないところまで来ている中……彼はウィンに己の状況を話し、ウィンもそれを信じている。

ウィンが影として殺人を続ける意図がわずかに見えたゴウマ。

一方の夜光は、ゴウマの気づかいによって数日休暇を言い渡された。


---------------------------------------


「休暇と言われても……どうすればいいんだ?」


 ゴウマから休暇を言い渡された翌朝……。

目が覚めてもなお、夜光はベッドから起き上がることなく……ただぼんやりと天井を眺めていた。

かつての彼ならばこれ幸いにと酒だ女だギャンブルだとはしゃいでいた。

だがそれは、堕落した人間を装うことで人を遠ざけようとしていた彼自身のカムフラージュ。

酒は強い方なのでそこそこ飲むが、最低限の節度はわきまえている方である。

女性関係については、自分に好意を向けるマイコミメンバー達を失望させようとチャラ付いた男を演じてきたが……実際の所は夕華のことを引きずっており、女性を深い仲を築く気など全くなかった。

風俗通いに関しては、男性故の逆らえぬ運命で自ら進んで通っていたが……ここ最近はマイコミメンバー達に気を遣って絶っている。

ギャンブルは人を遠ざけようとしてやっていたことであって、実際はほとんど興味がない。


「誠児は今日仕事だしな……」


 誠児とは休暇が合えばほぼ必ず2人で飲みに行っていた……たまに笑騎が加わることもあったが、それでも2人で飲みに行くことが多かった。

誠児は夜光にとって唯一心を許せる友……素で話すことができるため、普段口にできない悩みや相談事も彼にだけは話していた。

今のように誠児と休みが合わなければ、1人町に出て適当に過ごしていた。

これまで通りに休暇を過ごすことも不可能ではない。

だが……今の夜光に妥協したその選択肢は頭になかった。

その要因となっている存在こそ、マイコミメンバー達である。

夢を掴む千載一遇のチャンスと自らの寿命を犠牲に夜光の命を救い……互いの記憶が混ざりあったことでひた隠しにしてきた本心が彼女達の記憶の中へと流れていった。

偶然が成したことではあるが、それ以降の夜光は彼女達への恩を返そうと態度を改め、誠児同様に本心を話せる間柄にまでなった。


「よく考えたら……あいつらと休日に遊びに行ったことなんてなかったな」


 夜光とマイコミメンバー達はこれまで長い時を過ごしてきた。

だがそれは、ホーム関係のイベントかアストとしての任務や修行のいずれかであり……プライベートな時間を過ごしたことはこれまでにないのだ。

心を通わせたとはいえ……彼らの関係性は”仲間”であって”友人”ではない。


「(それにこの際……きちんとあいつらと向き合ってみるのもいいかもしれないしな……)」


 夜光の脳裏に浮かび上がったのはセリアからの告白に対して返した自分自身の返答。

以前セリアが勇気を振り絞って口にした愛の告白……セリアを含め、マイコミメンバー達からの好意を察していた夜光はみんなを傷つけたくないとあいまいな返事をしてしまった。

セリア達は快くその返答を受け入れてはいるものの……夜光自身はまだ心に引っかかりを覚えている。

夜光がマイコミメンバー達を大切にする気持ちに嘘偽りはなく……彼女達自身もそれを理解している。

だが告白の返答以降……夜光とマイコミメンバー達の関係にはこれといって進展などない。

故に夜光は、この休暇にマイコミメンバー達との関係性と自分自身の気持ちを改めて確認するため……意を決して彼女達と休暇を過ごす決意をした。


「とは言ったものの……これといって何か当てがある訳でもないし……第一あいつらと予定が合うのかも……? 誰だ?」


 あれこれと思い悩む夜光のマインドブレスレットに通信が入った。


『コウちゃん、おはようございます』


 画面に姿を現したのはセリアであった。

電話でなくマインドブレスレットによる通信であるため、緊急連絡ではないかと夜光は上半身を起こす。


「どうかしたのか? また影が現れたのか?」


 少し顔が険しくなった夜光の反応に、セリアはハッと口を手で覆う。


『いっいえ、そういう訳では……驚かせてしまって申し訳ありません。 実は……コウちゃんにお話しがありまして……』


「話?」


「『父様からお聞きしました。 何日か、休暇をお取りになったとか……』


「まあ取ったというか……取らされたというか……ひとまずしばらくは暇だな……」


『そうなのですね……あの実は……明日からお姉様やマイコミの皆さんと一緒に”ラビィーナ”へ行くことになりまして……』


「ラビィーナ?」


『ディアラット国から馬車で半日ほど行った所にある温泉で有名な観光街のことです。 

この所、色々ありましたし……温泉でゆっくり休養を取ろうと思いまして……それでもし、よろしければ……コウちゃんもご一緒にどうかと思いまして……』


「(温泉ね……まあちょうどみんなとどこかに行こうと思っていたところだし……最近は働き詰めで結構あちこちガタガタ言ってるし……いいな)」


『あの……どうでしょう?』


「あぁ、僕も行くよ。 どうせ行くところもやることもないし……」


『!!! わっわかりました……では明日の朝、お迎えに行きますので……皆さんには私からお伝えしておきます!!』


「おっおう……」


 本人は平静を装っている気でいるものの……その声音やキラキラした目からは純粋な嬉しさがにじみ出ていた。


『では明日……失礼します!』


 セリアは軽く一礼すると、唐突に通信を切った。


「なんか……いつもよりハイテンションだったな……あいつそんなに温泉が好きだったのか?」


 セリアの謎テンションに引っかかりを覚えるものの……明日に備えて軽く準備に入る夜光だった。


--------------------------------------


 同時刻……セリアの自室にて、夜光を除いたマイコミメンバー達が密集していた。


「言えました……」


『……』


 夜光との通信を切ったセリアは息を整え、周囲を取り囲うマイコミメンバー達に己が成果を報告する。


「セリアちゃん。 お水飲む?」


「ありがとうございます……いただきます」


 セリナから水の入ったグラスを受け取り、王族らしからぬ一気飲みで中身を全て胃の中へと流し込んだ。


「全く……だからあたしがやるって言ったでしょう?」


 満身創痍と言っても相違ないセリアを憐れむように溜息をつくライカ。


「いえ……そもそもこの話を皆さんに持ち出したのは私ですから……」


 彼女達がセリアの元に集った理由……それは2時間ほど前にまでさかのぼる。


※※※


「皆さん、ご足労いただきありがとうございます」


 セリアはマインドブレスレットにて、夜光を除くマイコミメンバー達に話があると言って自室へと集まってもらった。


「それは構わないのですが……マインドブレスレットを個人的なことで使うのは控えるべきかと……」


 マインドブレスレットは原則として緊急時以外の使用は禁止されている。

理由はアスト達の正体の露見とマインドブレスレットの存在を世に伏せるため。

アストは表沙汰には非正規な戦闘部隊として知られており、詳細を知っているものはゴウマやホームのスタッフ達を除けば騎士団長や極一部の大臣のみ……。

その存在もキルカが仲間に加わった頃まではほとんど世に知られていなかった。

だが……これまでの影やデウスとの戦いにて、数々の勝利を収めてきたその功績が多くの者達に評価され、今や英雄として大陸中にその名が知れ渡っている。

故にその正体が露見するようなことになれば……好奇心に駆られた者達が夜光達を魔女狩りの如く追い回すのは容易に想像できる。

そうなれば……闇の大陸で夜光達が心休まる場は失われることになる。

また、マインドブレスレットという極めて高度な技術が詰まった機械が世に広まれば……それを悪用する者達が必ず現れる。

そうなれば影よりも質の悪い無法者達が大陸中にあふれる災難を止める術もないやもしれない。


「すみません。 いけないことだとはわかっていたのですが……どうしても皆さんに来ていただきくて……」


「……」


 セリアの思いつめたような顔にスノーラはルール違反を咎める言葉を口に出せず、息とと共に飲み込んだ。


「それで……わたくし達に話したいことと言うのは?」


 セリアの自室は一般の部屋よりも広いものの……応接室のように客の足を休ませる椅子やソファの完備は不十分であるため、ベッドを代用することで全員の腰を下ろすことができた。

そして全員が一息ついたところでミヤの言葉から、会話の幕が上がった。


「実は昨日……お父様からコウちゃんが数日間の休暇を与えたという話を耳にしました」


「あぁ、それならオレも昨日誠児から聞いたぜ? 最近の兄貴……働き詰めだったみたいだし……」


「はい……でもコウちゃんはきっと……休暇を持て余してしまうと思うんです。

最近のコウちゃんが以前のように夜の街へ出かけることがなくなっているのはご存じですか?」


「確かに……よく街で泥酔したパパが女に絡む姿を幾度となく見てきたが……ここ最近は見ないな」


「競馬やカジノといったギャンブル施設にも行っていないようなんです……」


「そういえばダーリン。 ここの所マイコミに遅刻しなくなったよね? 前はお酒の飲みすぎで遅刻ばっかりしていたのに……」


「きっと……コウちゃんなりに責任を感じているんだと思います……」


『……』


 セリアの”責任”という言葉にマイコミメンバー達の顔に暗雲が立ち上る……。

彼女達は夢と寿命と引き換えに夜光の命を救った……。

それは純粋に夜光に生きていてほしい思いからであって、恩を着せるつもりなど微塵もない。

だが夜光からすれば、無限に広がるみんなの未来に傷をつけてしまったことに違いはない。

だからこそ……これまでの自分を改め、真面目に仕事に専念しようと思い立っているのだ。

口には出さないものの……ゴウマや誠児……そしてマイコミメンバー達全員……夜光の気持ちを察している。


「ですから……少しもコウちゃんにゆっくりしてもらおうと思って……旅行を計画したんです」


「旅行……ですか……良い案だとは思いますが、何か当てがあるのですか?」


 スノーラの問いかけにセリアは浅く頷き……おもむろに机の引き出しから1枚のチラシを取り出し、マイコミメンバー達の視線が集まるテーブルの上に広げて置いた。


「これって……ラビィーナのチラシじゃない」


「ラビィーナ?」


 聞きなれない言葉に首をかしげるセリナにライカが続けて説明する。


「この辺で有名な温泉街のことよ……人気なだけあって、宿泊施設の予約がなかなか取れないことでも有名だけど……」


「はい……本来は数ヶ月先まで予約でいっぱいでとても宿泊などできないのですが……」


 セリアがチラシを裏がえすと……そこには”ラビィーナスタンプラリー開催!”と鮮やかな色どりの大きな文字達が並んでいた。


「このチラシによると……明日、ラビィーナでスタンプラリーが開かれるそうです。

すべてのスタンプを制限時間内に集めることができれば……ラビィーナの宿泊施設に予約なしで泊まることができるようです。

宿泊費は掛かりますが……それでも予約困難なラビィーナに宿泊できるというのは大きなメリットかと……」


「スタンプラリーって……あちこちでスタンプを押すイベントだろ? えらく簡単だな」


 スタンプラリーを軽く見ているルドに対し、セリアが首を振りながら言う。


「いいえ……このイベントは毎年この時期に期間限定で行われるようなのですが……未だかつてスタンプを集めきった人はいないそうです」


「(どんなスタンプラリーだよ……)」


「まあ……スタンプラリーはともかく、温泉にゆっくり浸かるというのはよさそうね。

宿泊にこだわらなくても……日帰りでゆっくり温泉を楽しむのも……」


「それはダメです!」


 ミヤの言葉を急な大声で遮るセリア。

多少性格に難があるものの……基本的に内気な性格で物静かなセリアの行動としては異様に思える行動である。


「なっ何がダメなの?」


「温泉に浸かってコウちゃんに休養を取っていただきたいとは思うのですが……もう1つ、皆さんにお伝えしたいことがあるんです」


 セリアが語ったもう1つの話……それは夜光への想う彼女なりの決意の表れでもあった。


『……』


 セリアの話を一通り聞き終えたマイコミメンバー達の顔は紅葉のように赤く染めあがっていた。

キルカだけはおもしろそうだと言わんばかりに口元を緩ませ、何かを企んでいると誤解させるような怪しげな笑みを浮かべていた。


--------------------------------------


「コウちゃん……コウちゃん……起きてください」


 翌朝……セリアの声で目を覚ました夜光。

真っ先に視界に入ったのは、朝日に彩られたセリアのまばゆい笑顔だった。


「セリア……あれ? どうしてここに?」


「昨日お迎えに参りますと通信でお伝えしたじゃないですか。 皆さんもいらっしゃってますよ?」


 部屋にはすでに外出着に身を包んだマイコミメンバー達が夜光の起床を待っていた。

部屋の主たる夜光の許可もなくマイコミメンバー達の入室を可能にしたのは、セリアが以前管理人からもらい受けた(夜光本人は知らない)合鍵である。

いかに王女といえど、勝手に他人の合鍵を作るのは犯罪であるが……セリアの異様な迫力に圧倒されたマイコミメンバー達は誰1人としてそのことに触れようとはせず、無論他言もしない。

蛇足だが、ゴウマや一部の関係者達は合鍵のことを黙認している。


「あぁそうだったな……ってあれ? 僕、鍵掛けてなかったか?」


「コウちゃん、それよりも仕度をお願いします。  外で馬車を待たせていますので……」


「そっそうか……じゃあすぐ仕度をするからみんな馬車で待っていてくれ」


 セリアにせかされるまま、夜光は仕度を始め……セリア達は部屋から出ていく。

寝ぼけた頭を洗顔でリセットした際、鍵に関しての疑問も洗い流されてしまった。


--------------------------------------


「では、お願いします」


 仕度を済ませた夜光が馬車へと乗り込むと、セリアが小窓越しに御者へ馬車を発進させるよう促す。

馬車はまだ見えぬラビィーナに向けて前進した。

レイラン「やっと最終章に入ったと思ったら、いきなり温泉旅行って……なんか突拍子もないね」

ライカ「そんなのいつものことでしょ? あちこちでシリアスな話ばっかり書いていたせいで、逆にこっちの話が書きづらくなったってぼやくぐらいだし……」

レイラン「知らないよ……というか、ぼやくくらいならきちんと完結させてから次に行ってよね」

ライカ「あれも書きたいこれも書きたいって欲を出した報いよ」

レイラン「なんか本当に完結するのかガチで不安になってきた」

ライカ「そんなの別にあんただけじゃないわよ」

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