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マインドブレスレット ~異世界の女神がくれた鬼の力で最強?っぽい存在に!! 巨乳美少女達と送る異世界ハーレムストーリー~  作者: panpan
カルメ編

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200/205

友情の跡

更新遅れてすみません。 

しばらく体調を崩してました。

 想いと憎しみの激突……気まぐれな勝利の女神はどちらにも微笑んでくれることはなかった。

死と絶望に堕ちるマナの手をセリナが寸前の所で掴んだ。

どれほど堕ちても親友として手を差し出してくれる彼女の温かな心に、マナの絶望から少しだけ救われた。

ようやく真の友となることができた2人……だがすでに死は目前にまで来ていた。

マナはセリナを冷たく突き放し、暗い海の底へと落ちていった。

”ありがとう”……。

だが彼女の言葉なき心は、セリナにしっかりと伝わっていた。



 カルメを脱出した夜光とセリナはそのまま近くの港町まで約1時間飛び、そこで待っている仲間たちと合流した。

近くとは言っても……ジェット機並みのスピードを持つイーグルで掛かった移動時間であるため、そこがどれだけ離れているかはある程度想像することはできるでだろう。

トーンは町の病院へと運ばれ、負傷したミヤやライカは転送装置にて先にホームへと回収されていた。

もっと早く転送すればよかったのだが、ホームはそもそも就労施設。

騎士団のような国家的組織と違って24時間バックアップできる訳ではない。

まして今は深夜……無理を言って頼んだ分、そのような物言いは贅沢の領域である。



「コウちゃん! お姉さま!」


 病院の前に着陸し、イーグルから降り立った2人のもとに駆け寄るセリア達。

互いに無事を喜び合う夜光たちは厚い抱擁を交わし合う。

だがセリナは心ここにあらずと抱擁の腕に力をほとんど入れることができていなかった。


「マナはどうした?」


「……」


 キルカが何気なく尋ねるも……無言を貫くセリナに代わり、夜光が首を横に振る。


『!!!』


 夜光の返答と能面のようなセリナの顔でマナの死を悟ったマイコミメンバー達に衝撃が走る。

喜びに満ち溢れていた空気が一変し、通夜のような悲しく空しい空気が冷たい風に交じって夜光たちの肌をなでる。

セリナをどうにかして慰めたい気持ちはあるものの……誰1人として言葉が見つからなかった。

ひとまずトーンの無事を確認しようと病院内に留まった夜光達だったが、様々なことが重なりすぎたことで疲労が重なったのか、マナの死という信じがたい事実から目を背けたいと無自覚に願ったためか、全員待合室のソファに身を預けて自然と眠りの世界へと浸っていった。


※※※


 翌朝……トーンの治療が無事に終わった。

命に別状はなく、あとは意識が戻るのを待つだけ……だが愛しい孫の死を知った時のショックは計り知れない。

カルメでの出来事やマナの死をマインドブレスレットでゴウマに報告しつつ、訃報を伝える勇気が持てないとこぼす夜光達に……。


『わかった、トーン殿にはワシが伝えよう……お前達は1度戻れ』


 帰還を命じつつ、ゴウマが代理を引き受けた。

夜光達はその言葉に甘え、帰還命令に従ってホームに戻った。


-----------------------------------------


「……ここは?」


「目が覚めたようですな」


 意識を取り戻したトーンの視界に最初に映ったのは、優し気な笑みで顔を覗くゴウマだった。

あれから数日の時間が流れており、カルメの事件は大陸中に知れ渡っていた。

世界初の海を渡るラジオ局であるカルメの処女航海における沈没事故……表沙汰にはエンジントラブルによる事故ということで処理されている。

幸か不幸か、アストとマナの戦闘を目撃した人間がトーン以外いないため通った案である。

そうなったきっかけはセリナの必死の訴えにある。


『みんなにマナちゃんを悪者だと思ってほしくない』


 真の友を世間が悪として見ることをセリナは非常に嫌がっていた。

事実故、”子供のわがまま”と言ってしまえばそれまでだが、夜光達やゴウマはこの訴えを受け入れ、口をつぐむことにした。

否、セリナが何も言わなくとも、マナのことを公表しようと考える者などいなかった。

トーン自身も設備の整った病院へすでに移動されていた。


「ゴウマ国王様……」


「カルメでのことは聞きました……」


「ゴウマ様……ミーファは? あの子は?」


 トーンの問いかけに対し、ゴウマは首を横に振る。

その意味を理解したトーンの顔は一瞬絶望に彩られるが、ゆっくりと吐く息とともに能面のような顔へとすぐ変貌した。

あまりのショックに、悲しみや絶望を通り越して無感情になってしまっていた。


「マナは……ミーファさんは自分の命を犠牲にして、私の娘を助けてくれました。

彼女のような優しい女性を娘の友達に持てたことを……私は誇りに思います」


「そうですか……」


 ショックを受けてはいるが、すでにトーンの涙は枯れ果てていた。

悲しむことすらできず、ただただ窓から青空をぼんやりと眺めているその姿に、ゴウマも言葉を詰まらせた。


「ゴウマ様……滑稽とは思いませんか?」


「……」


「妻を失い……娘夫婦を失い……挙句の果てに孫すら救うことができなかった……。

それにも関わらず、今もなおしぶとく生きている……こんな老いぼれほど哀れで滑稽な存在はないと思いませんか?」


「……かもしれませんな」


「天涯孤独に身を置きながらも……私は生き続けてきました。

ミーファとの夢をかなえるために……それが私にできる唯一の使命だと思っていたから……。

でももう疲れた……夢を追いかけることも……孤独に生きることも……」


 それは初めて口にしたトーンの秘められていた本心……生きることに疲れ切り、死を安息とすら感じる男……それこそが、トーンと言う男の本来の姿だった。


「その気持ち……理解できないことはありません。

私もかつて最愛の妻を失い……あなたのように人生に絶望したことがあります。

そんな私の人生に意を与えてくれたのもまた妻でした……彼女が志半ばで紡ぐことができなかった夢をこれからも紡いでいく……その夢をこれからも描き続けるために私はこうして生き続けています。

あなたも同じ想いを抱いているのではありませんか?」


「えぇ……ですが、夢を叶えた所で喜びを分かち合える家族はそばにいない。

それでは何のために私は夢を追いかけ続けているのか……どうして未だに家族の元へ逝けずここにいるのか……わからないんです」


 トーンはベッドから起き上がり、窓の淵に手を掛ける。

体は未だに痛みを訴えてるが、無の境地となった彼の心が痛覚を鈍らせていた。


「そもそも私が描こうとしている夢だって……幼い孫と1度語った程度の絵空事に過ぎません。

そんな薄っぺらいもののために……天涯孤独を生き続けるなど滑稽とは思いませんか?」


 天涯孤独の苦しさ……孫を救えなかったつらさが表情を歪ませ、死の安らぎを求めるトーンの心が窓の淵に掛けた手に力を込める。


「だからさっさと家族の元へと旅立って楽になりたい……ですか? 賛同できかねませんな」


「どうせ老い先短い身です……今逝こうがあとで逝こうが同じではありませんか!」


「あなたのために言っているのではありません……私はセリナのために言っているのです!」


「セリナさんのため?」


「セリナにとってミーファさんは同じ夢を追う真の友でした……その友を目の前で失ったあの子の心には、今でも大きな痛みを抱いています。 私はこれ以上……あの子に痛みを与えたくはない」


「そんなこと……私の知ったことでは……」


 トーンが最後まで言う前に、ゴウマはサイドテーブルの上にあるラジオに手を掛けた。


キュイーン……。


 ラジオは電波を受信し……音声と化してスピーカーから流れ始める……。


「なっ何を……」


「失礼……少し、お耳を傾けていただけますか?」


 トーンは突然のことに困惑し、思わずラジオから流れる放送に耳を傾ける。


『……はい! ジャンクさんありがとうございました! とっても良い声でしたよ!』


 病室に流れ込んできたのはとあるラジオ番組のミニコーナー。

一般公募で集まったゲストが、2分間に身近な世間話を公開するというもの。


『では次のゲストさん、張り切ってどうぞ!!』


『はいはい! セリナ ウィルテットです! よろしくお願いします!!』


『なんとなんと!! あのセリナ姫がゲストに来ちゃってます!! 私、この番組を持って長いのですが、こんなに緊張するゲストは初です!!』


『いえいえ……そんな大層なもんじゃないですよ! それに今日の私はゲストですから、遠慮なくドーンと来てください!!』


 それはまぎれもなくセリナの声……彼女もまた、一般公募で選ばれたゲストの1人となる。

ラジオから流れるセリナの声は普段と変わらない明るく元気な彼女の声……その不思議な魅力からか、耳をくすぐられたメインパーソナリティーがクスクスと笑声を漏らした。


『ではではお言葉に甘えて……セリナ ウィルテットさん、あなたの話を聞かせてね!』


 スタートを告げるお決まりのフレーズと同時に奇怪なBGMが流れ始めた。


『えっとえっと……この前妹のセリアちゃんと本を買いに行ったときの話なんですけど……』


 セリナが放送に持ち込んだ話は、セリアと本屋に行った際……艶本を買いに来たハケ医師とうっかりぶつかり……その際彼が頭に付けていたカツラが落ちて曇りなきツルツルとした頭を露見してしまったという……漫画やアニメでは使い古された古典的な話である。


『アハハハ!!』


 ここ心界でもあまり新鮮味のないありふれた話ではあるが……単調な話を大げさに表現するセリナのトークにメインパーソナリティーの女性はツボにはまっていた。


『どうでした!?』


『とっても面白かったです! 久々にお腹を抱えて笑ってしまいました』


『えへへへ……』


 単に笑いの沸点が低いだけかもしれないが……終始彼女達は笑顔だった。

”ラジオでみんなを笑顔にする”……セリナとミーファの夢にまた1歩近づいた瞬間だったのかも……しれない。


※※※


「突然失礼致しました……ふと、この放送が利きたくなりまして……」


「なんとも彼女らしい……放送ですな」


 コーナーが終わり、ゴウマがラジオの電源をオフにすると……病室内は再び静寂に包まれた。

唇がわずかに緩み……力なく微笑むトーン。


「セリナもあなた同様……ミーファさんのことで心に大きく深い傷を負いました。

この傷はきっと……永遠に消えることはないでしょう……」


「ではなぜ……彼女は笑えるのですか? なぜ彼女はマイクの前に立つのですか?」


 同じ心の痛みを持つセリナとトーン……だが対照的な言動を取るこの違いを、トーンは理解することができずにいた。


「それがあの子の……セリナとミーファの夢だからではないからでしょうか?」


「夢……」


「ラジオパーソナリティーとしてマイクの前に立ち……視聴するみんなに笑顔を届ける。

それがセリナとミーファの夢です。

だがその夢はまだ叶っていない……だからこそ! あの子は立ち止まらず、未来に向かって歩き続けているんです。

夢が叶えば、ミーファもきっと喜んでくれると信じて……あなたも同じ想いを抱いてカルメを作ったのではありませんか?」


「それは……」


 ゴウマ自身はセリナの口から本心を聞き出せた訳ではない。

あくまでゴウマの想像の域に過ぎない。

だが親子故の何かが、確信に近いものを彼に感じさせているのもまた事実。


「セリナもあなたのように絶望の底に心を沈めていました。

だが涙を拭い、痛みに耐え……笑顔でマイクの前に立っています」


「……」


「今すぐ答えを出してほしいとは申しません。 ですが生きて……その答えを見つけて頂きたい」


「もしも……見つけられなかったら?」


「ならばそれもまた人生……酒でも酌み交わして愚痴を言い合いましょう……お互い向こうへ逝けばいくらでも時間はあるのですから」


 糸が切れた人形のようにその場で腰を落としたトーン。

その時窓から小さな風が入り、トーンの頬をそっと撫でた。

すでに真冬であるにも関わらず、その風はどこか春風のようなぬくもりがあった。

まるで誰かが自分を励まそうと頬に手を添えているような感覚……否、誰かではない。

空から見守っている家族たちが風となってトーンの元へと降り立った……のかもしれない。


「……」


 トーンの瞳から流れた1粒の涙……温かなその涙にはこれまで流してきた悲しみや後悔はなく、これから最後の瞬間まで夢を追い生き続ける誓いが込められていた。


 それから数週間後にトーンは退院し、再びカルメ再建に向けて動き出していった。

今回の一件でパーソナリティー時代の貯金は底を尽居てしまった上、ほとんどのスポンサーが無謀な行為であると彼から離れていった。

もはやカルメ再建など絶望的どころか不可能と言った方が良い言葉通りの夢物語……だがトーンに諦めるという選択肢はない。

それは使命や義務と言った耳障りの良いものではなく、失うもののない男の開き直り。

だがそれでも、トーンにとってたった1つの生きる目的。

叶わぬまま朽ち果てるやもしれぬ先の長い道であるが、彼にとって大切なのはゴールではなくチャレンジ。

それこそが彼の胸に宿る温かな家族の心であるかもしれない。

そんなトーンの夢の先……その結末は定かではないが、どんな結果になろうともそれが精一杯の努力の形。

その努力を天国の家族に示すことが、トーンと言う男のこれからの人生となると……彼は心から信じている。


-----------------------------------------



 同時刻……某ラジオ局。


「あっ! みんな!」


 放送を終えて局から出てきたセリナの目が受付ホールで出迎える夜光達の姿を捕らえた。

セリナをここまで送り届け、そのまま放送が終わるまで待っていたのだ。

傷が癒えたライカやミヤの姿もそこにある。

手を振りながら駆け寄る彼女の姿は無邪気さの残る子供そのもの。

それは普段と変わらないセリナの姿ではあるが、どこかしら無理をしている節が見受けられる。

だがそれはやせ我慢ではなく、つらい過去を乗り越えようとする彼女なりの戦いと言うことはみな理解している。

それ故、”無理はしなくていい”等の優しく察するような言葉は全員の胸の内に押し込んでいる。

それは良識的に言えば好ましい行為ではないが、今のセリナにとって無理をすることは必要なことなのだ。


「お疲れ様でした、お姉さま。 とても良い放送でしたよ?」


「えへへ……これでもパーソナリティー志望だもん! これくらい余裕だよ!」


「……」


 余韻に浸るセリナのピースサイン……その際、夜光の目にチラリ見えた右手の火傷。

マナを助けようと必死に握りしめた右手……火傷自体はハケの治療ですでに完治している。

痛々しい火傷の跡は手術を受ければ消すことは可能だったが、セリナが強く拒否した。


『これはマナちゃんがいた証なの……マナちゃんを忘れないための……だから消したくない』


 マナという掛けがえのない親友が確かにセリナの隣にいた……それを示す友情の証。

それが右手に残る火傷の跡……少なくともセリナにとっては……。


「慢心はいけません。 どんな仕事でも初心を忘れず、常に己を磨くことが良い結果を生むのです」


「うぅぅぅ……スノーラちゃん真面目だよ……」


「セリナ様が不真面目なのです、だいたいセリナ様は……」


「ひぃぃぃ!! 説教はパース!!」


「あっ! どこへ行くのです!?」


 スノーラの説教に恐れをなして外へ駆け出すセリナ。

彼女の透き通った瞳に青く澄み渡る空が映る。


「(マナちゃん……)」


 空にいるマナに語り掛けるセリナの右手がぬくもりに包まれた。

まるで誰かに握られたような感触にセリナがふと視線を隣に横にずらす。


「(……)」


 セリナの視界に映ったのは笑顔で隣を並走するマナ。

固く手を握り合い、共に地を駆ける2人……。

マナは空にいるものだと思っていたセリナだったが……それは違っていた。

友はすぐ隣にいたのだ……いついかなる時も……。


「一緒に頑張ろうね! マナちゃん!」


「(……)」


 セリナの言葉に笑顔でうなずくマナ……。

その笑顔につられてセリナも満面の笑みを浮かべ、地を蹴る足にさらなる力が入る。

セリナとマナ……2人は真の友としてこれからも共にいる。

そして駆け出し続ける……夢に向かって……。



ハナナ「なんだかんだでクリスマス……1年が経つのは早いものですね」

きな子「ウチは年末ジャンボにしか興味ない」

ハナナ「まだ買ってないんですか? 年末ジャンボなんてどこで買っても同じでしょ?」

きな子「ドアホ! 年末ジャンボは買う場所で全てが決まるんや!! これやからど素人は!!」

ハナナ「(素人って……)。 っていうか、年末ジャンボ当たったら、使い道決まってるんですか?」

きな子「ひとまず……ガチャ投資や」

ハナナ「夢のある金を夢のないことに使うな!」

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