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マインドブレスレット ~異世界の女神がくれた鬼の力で最強?っぽい存在に!! 巨乳美少女達と送る異世界ハーレムストーリー~  作者: panpan
カルメ編

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199/205

最後の嘘

この章もようやく終わりが近づいてきました。

疲れた・・・・・・。

 最後の力を振り絞って互いに放たれた2つの火球。

片や信頼………片や力……2人の少女に待ち受ける運命とは……。


-----------------------------------------


ゴォォォ!!


 マナの放った火球は周囲のありとあらゆるものを蒸発させながら夜光とセリナ目掛けて直進していく……

その力はまさに人の持つ破壊衝動そのものと言える。

そして……セリナが放った黒い火球もまた、吸い寄せられるようにマナの火球へと飛んでいく……。

奇跡か……はたまたセリナの想いが成せたのか……2つの火球がぶつかり合うことは避けられないものとなった。

そして勝負は力によるせめぎ合いに移行するかと思った……その時!!


『なっ何!?』


 放たれた2つの火球が触れた瞬間……黒い火球がマナの火球を浸食の如く包み込んでいく……。

ただ敵を焼き尽くすマナの火球とは異なり、セリナの黒い火球は人が持つ負の気そのものを焼き尽くす。

闇を照らす光のように……マナの歪んでしまった心をセリナが全身全霊で受け止めようとしているのだ。


シュゥゥゥ……。


 ものの数秒で2つの火球は1つとなり……黒い火球の中でマナの火球を中で焼き尽くすことで火球の大きさも連動して収縮し始めた。


『こっこんなバカなことが……こんな訳のわかんないことが合ってたまるかよ!!』


 目の前に現実を直視できないマナであるが、火球は徐々に小さくなっていき……やがてピンポン玉くらいにまで収縮したその時……。


ピキッ!


 ガラス玉が割れるような音と共に火球にヒビが入り、そこから火球全体にヒビが走った。

マナの力がわずかにセリナの力を上回り、それがヒビとなって現れたのだ。


 パキーン!!


『!!!』


「「!!!」」


 力を押さえつけられなくなった火球は粉々に砕け、周囲に強烈な爆風を発生させた。

夜光とセリナ、そしてマナは飛ばされないようにその場で踏ん張るが……。


バキバキ……。


 アストとマナの激しい戦闘と今の爆風によって……甲板に大きな亀裂が走った。

今まで奇跡的に沈没を免れていたカルメであったが……とうとう限界を迎えた

船の形を維持することすら不可能になったカルメは崩壊を初めてしまった。


『くっ!!』


「何っ!?」


「マナちゃん!!」


 ついには夜光達の足場にまで亀裂が走った!

今の一撃に全神経を集中していたことでその他への注意を疎かにしていた3人……特にセリナとマナはすでに身動きが取れないほど疲労が蓄積している。

そんな彼らが成すすべなく亀裂の隙間に落ちてしまうのは必然と言わざる終えないのかもしれない。


-----------------------------------------



「……」


 亀裂の隙間に落ちたマナはパーティー会場内で倒れていた。

とはいっても……パーティー会場はすでに真っ二つに引き裂かれ、見るも無残な光景へと変わっていた。

力を使い果たしたことでマナ人間の姿に戻ってしまい、逃げる力すらない。


「ちくしょう……このあたしが、たかだかゴミを相手にしたくらいで……なんて惨めな……!!」


 悪態をつく中であってもカルメは大きく揺れ……周囲から様々な崩壊の音階が鳴り響く。

もはや今のカルメの未来は沈没のみ……だがそれは、今のマナにとって死を意味する。

マナの体は今……無理を押して力を使い切った反動で、普通の人間であれば焼け死ぬほどの高熱を帯びている。

その熱によって身に着けていた服や下着も消し炭と化し、セリナにもらったお守りも黒焦げとなっている。

そんなマナが極寒の海へと沈めば……その体は粉々に砕け散る。

そうなったらいくらミストの力に身を喰わせたマナであっても死は免れない。

かといって逃げる力など残っていない。

それを悟ったマナはすでに生きることを完全に諦めている……だからこそ、このような悪態がつけるのだ。


「まあ……どうせ助かったとしても、命令違反でエアルに殺されるだけだし……ちょうどいいか」


 生への執着を捨て、死を受け入れるマナ……そんな彼女の決意と連動するかのようにマナが横たわる床が崩れ落ちた……その時!!


「マナちゃん!!」


 落ちる最中のマナの手を掴んだのは……セリナだった。


「あっあんた……」


「何してるの!? 早く私の手に掴まって!!」


 ギリギリマナの手を掴むことができたものの、セリナの細腕で人1人の体を引き上げることは厳しい。

さらにセリナは、先ほどの戦闘で力を完全に使い果たしてしまっている。

普通であれば数時間は意識を失う所だが、セリナは気力だけで自分を奮い立たせた。

そうでなくとも、熱した鉄のようなマナの手を握りしめるなど、常人には到底耐えられない芸当を彼女は気力だけでやりとげている

これを奇跡と呼ばず、何が奇跡であろうか。


「何のつもり? あたしに恩でも着せようって訳?」


「友達を助けるのは当たり前でしょ!?」


「しつこいガキね……あんたはあたしの……」


「友達だよ!!」


 マナの言葉を遮り、セリナは腹の底から声を上げた。


「マナちゃんがなんて言おうと、私達は友達!!

影がどうとか……ミストがどうとか……そんなの関係ない!!

私はマナちゃんと一緒にいたいの!!」


「……」


 セリナのまっすぐな心にマナは思わず言葉を止めた。

残虐な本性を目の当たりにし、セリナや夜光達の命を躊躇なく奪おうとしたマナ。

誰もが見捨てるはずであろう女を……セリナは友と呼び、我が身を顧みずその命を救おうとしている。

そのあまりに純粋過ぎる心にマナは問いかけた。


「なんでよ……なんであんたはあたしにそこまでするの?

なんでこの期に及んであたしを友達だと呼べるの?

あんたは一体……何なの?」


「……そんなのわかんないよ!

私は私……マナちゃんと一緒に夢を追い掛けたいだけ……」


「夢……」


「そうだよマナちゃん……私達2人の夢。

一緒にラジオパーソナリティーになってみんなに笑顔を届けようよ。

2人で頑張れば……きっと夢はかなうよ!」


ポタポタ……。


 マナの腕を伝わって流れてくるのは真っ赤なセリナの血。

先ほどの衝撃で負傷したケガからにじみ出た血が重力に従って滴り落ちていっているのだ。


「あっあんた・・・・・・」


 流れる血の量は時間が経つにつれ・・・・・・セリナが痛みに耐えるつれ増量していく。

それがどれほど危険な行為であるかは、セリナ自身が一番よくわかっている。

だがそれでも、セリナの頭にマナを見捨てるという選択肢はなかった。

己が命を使い果たそうともマナを助けるという執念が彼女に予測不可能な力を与えているのだ。


「(・・・・・・きれい)」


 今まで多くの血を浴びてきたマナ。

そのどれもが泥水のような汚ならしいものだった。

まるで薄汚い欲望が血液にまで侵食しているかのように・・・・・・。

だがセリナから流れる血は今まで見たこともないほど美しく見えた。

これを例えるのであれば・・・・・・友のために流す涙・・・・・・それがもっとも近い表現であろう。


 ピキッ!ピキピキ・・・・・・。


「!!!」


 床が再び耳障りな音を立て始めた。

マナがぶら下がっている崖にも亀裂がどんどん侵食していっている。

2人の重量がそれを加速させ、もういつ崩れ落ちてもおかしくない。


「ちょっと! いい加減離しなさいよ!」


「やだっ!」


「このお花畑女! このままだとあんたも死ぬってことくらい察しろよ!!」


「マナちゃんを助ける!! 絶対絶対助ける!!」


「・・・・・・ホントバカな子」


 人間の汚れを知りつくしたマナが初めて出会った汚れなき少女。

どうしようもない状況であるとわかりきってもなお、命を賭けて友を助けようとする愚か者。

彼女の純真無垢な心がマナの歪んだ心に一筋の光を差し込み、マナの口許を優しく緩ませた。

ようやくマナは戻ったのだ。

本来の姿・・・・・・ミーファに。


 ピキピキ・・・・・・。


 だが現実は容赦なく、2人に襲いかかる。

崖はいよいよ崩壊を始め、ほの暗い海が2人を呼び込もうとしている。


「(もっと早く・・・・・・あなたに会いたかったわ)」


 マナは最後の力を振り絞り、セリナの手首を掴んで引き剥がそうと力を込めた。


「まっマナちゃん! なにしてるの!?」


「あんたと心中なんて真っ平よ!! さっさとこの汚い手を離せ!!」


 冷たく放つ言葉と裏腹に、セリナをこのまま道連れにしたくないと願うマナの温かな想い。

あくまで冷血な悪魔として最期を迎えることでセリナが抱くであろう罪悪感や後悔を少しでも軽減できるよう・・・・・・彼女なりの最期の優しさだった。


「(セリナ・・・・・・せめて・・・・・・せめてあなただけは生きていて。 私の分まで・・・・・・夢を追いかけ続けて。

決して・・・・・・私のようにはならないで・・・・・・いつまでも変わらないあなたでいてね)」


「マナちゃん! お願いやめて!!」


「(セリナ・・・・・・)」」


 マナを助けたいと願うセリアの想いとセリナに生きていてほしいと願うマナの想い。

互いに譲れぬ2人の想いが哀しくぶつかり合い・・・・・・徐々にセリナの手が緩んでいった・・・・・・。


「!!!」


「・・・・・・」


 セリナの手をほどいた瞬間、マナは微笑んだ。

とても温かな哀しい笑顔・・・・・・そこに後悔は微塵もなく、とても晴れ晴れとした心地の良い何かが彼女の心身を包み込んだ。


「マナちゃぁぁぁぁぁん!!」


 一切言葉を発することもなく、マナは暗い海へと引きずり込まれていった。

そのわずか一瞬の間・・・・・・マナの目に懐かしい顔が写った。


「(パパ・・・・・・ママ・・・・・・カルメ・・・・・・」


 これがいわゆる走馬灯なのかもしれない。

だがそこには確かに愛しい両親とカルメの姿があった。

そしてマナに微笑みかけている。


 ”また家族みんなで暮らそう”


 笑顔から伝わる温かな想い。

天国にいる家族が自分を迎えに来てくれた・・・・・・マナはそう理解した。


「みんな・・・・・・ただいま!」


 ザブーン!!


 高熱を帯びたマナの体が暗く冷たい海に沈んだ瞬間、

巨大な水しぶきが海中から地上数メートルにまで吹き上がった。

その威力はすさまじく、セリナの周囲に一瞬だが豪雨を振らせるほどの余力まで見せた。


「マナ・・・・・・ちゃん・・・・・・」


 海面上に漂う大量の赤黒い液体・・・・・・それがなんなのかセリナは考えようとしなかった。

いや、考えたくなかったというのが正しい表現であろう。

セリナがマナに送った鈴・・・・・・今の衝撃でボロボロのガラクタと化した鈴が海中に沈んでいく・・・・・・まるでマナの後を追いかけていくように・・・・・・。


※※※


「セリナ!!」


 そこへ現れたのは夜光だった。

沈没寸前の船の中でセリナとマナを必死に探し回り、セリナの叫び声を聞いてようやくたどり着くことができただがもう・・・・・・時既に遅かった。


「セリナ、どうした?」


「マナちゃん・・・・・・」


「・・・・・・」


 能面のようなセリナの顔・・・・・・そして焼けた右手・・・・・・それらが何を指しているのか・・・・・・夜光には察することができた。


「セリナ・・・・・・ちょっとごめん」


 掛ける言葉がわからないまま夜光はセリナを担ぎ上げ、マインドブレスレットで呼んだイーグルに乗せてカルメを脱出した。


--------------------------


「セリナごめん・・・・・・僕がもっと早く駆けつけていたら・・・・・・」


「・・・・・・」


「セリナ・・・・・・」


 掛け替えのない親友を失ったセリナを元気付けるような都合の良い言葉などない・・・・・・それでも口を閉ざすよりはマシと言葉を振り絞ろうとする夜光よりも先に、セリナの唇がわずかに動き出した。


「ったんだ・・・・・・」


「え?・・・・・・」


「ありがとうって言ったんだ・・・・・・マナちゃん」


 実はマナがセリナの手を振りほどいた直後、マナはセリナに向かって口を開いていた。

ほんの一瞬のことで声すら出していなかったが、セリナにははっきりと伝わっていた。

”ありがとう”と・・・・・・。

それは紛れもなく、友としてセリナに送った嘘偽りのない本音であった。

少なくとも……セリナはそう受け取っていた。


「マナちゃんは・・・・・・やっぱりマナちゃんだったんだよね?・・・・・・みんなみんな、嘘じゃなかったんだよね?」


 マナと過ごした時間・・・・・・マナと交わした言葉・・・・・・マナと共に描いていた夢・・・・・・そのどれもが嘘だったとセリナはどうしても信じられなかった。

たとえマナが嘘だと嘲笑おうと・・・・・・強く否定しようと・・・・・・。

同じ夢を追っていた親友との絆を切り捨てることなどセリナにはできなかった。

理屈や常識では計り知れない・・・・・・それが友情という未知なる力である。

その力が・・・・・マナの冷たく閉ざされた心に温もりをもたらしたのだ。

決して嘘偽りばかりではない2人のこれまでの日々・・・・・・その証明こそがマナがセリナに送った言葉だったのかもしれない。


「・・・・・・そうだよ。 マナはマナだ。

セリナの・・・・・・僕達の大切な友達だ。

これからもずっと・・・・・・だろ?」



「うん・・・・・・」


 夜光の背中に顔を埋め、セリナはこらえていた涙を解放した。

マナを失った悲しみ・・・・・・マナを救えなかった自分への怒り・・・・・・マナとの絆は確かにあったのだと言う喜び・・・・・・いろんな感情が嵐のようにセリナの心を締め付ける。



 ゴォォォ!!


 去り行く2人の後方で音を立てて沈み行くカルメ。

様々な思い出と共に海が闇の中へとカルメを引きずり混んでいく・・・・・・大きな悲しみだけを残して。



 

スノーラ「決まっていたこととはいえ、やはりやるせない終わりだな」

キルカ「美少女の旅立ちほど悲しいことはない」

スノーラ「終わりといえば、香帆の話も完結したようだな」

キルカ「完結はしたが、転生させて新たな話を書くと言っていたな」

スノーラ「まだこちらの話が終わっていないというのに・・・・・・相変わらず勝手な」

キルカ「それにしても・・・・・・よくもまあ次から次へと書こうとするものだ」

スノーラ「ただの趣味と侮っていたが・・・・・・そこだけは関心する」

キルカ「まあ・・・・・・そこだけはな」

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