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マインドブレスレット ~異世界の女神がくれた鬼の力で最強?っぽい存在に!! 巨乳美少女達と送る異世界ハーレムストーリー~  作者: panpan
カルメ編

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ミーファ

2つ同時に更新しているためか、話の先を考えるたびにどっちがどっちかわからなくなります。

 闇獄鬼の力でとセリナの決死の行動により、マナに致命傷を与えることができた。

満身創痍になってもなお、夜光達の前に立ちふさがるマナ。

マナの刃が迫ってきたその時、突然彼らの間に割ってきたトーン。

彼は自身の夢を乗せたカルメを守るため、命を投げ出す覚悟でマナに戦闘続行を思い止まらせることを願い出た。


「なんなの? おっさん、死にたい訳?」


「私の命であれば差し上げます! ですからどうか……この船をこれ以上傷つけないでください! お願いします!」


 涙ながらに懇願するトーンの声音に偽りはなかった。

彼はマナの間合いの中にいる。

その気になればマナによってその命は一瞬で終わる。


「とっトーンさん! 何を言ってるんですか!? やめてください!」


 セリナが呼びかけるも、トーンはその場から動こうとしない。

助けたい気持ちはあるものの……夜光達のアーマーはかなりのダメージを負い、自らの意志で戦線離脱した。

夜光達自身もすでに限界を迎えており、負傷者もいる。

トーンを庇うことも彼を保護して逃げることも今の彼らには厳しいのが事実だ。


「おっさんマジで言ってる? こんな船ごときのために命差し出すとかマジボケ来てない?」


 船の盾となろうするトーンの人格を嘲笑い、マナは手に持つ剣を振り上げる。


「そんなに死にたきゃ、望み通りにしてやるわよ」


「やめてっ!」


 セリナの制止など無視し、剣を振り下ろそうとしたその時!!


ピギッ!


「!!!」


 耳障りな音と共にマナのシャドーブレスレットに亀裂が走った。

シャドーブレスレットもマインドブレスレット同様に、

特殊な素材で作られた機械。

水に沈めようが……象に踏まれようが……壊れることはない。

そんなシャドーブレスレットに亀裂ができたとなれば、マナが剣を止める理由となるには十分である。


「(まさか……さっきの攻撃で!?)」


 闇獄鬼が最後に放った拳によって、マナは致命傷を負った。 

だが夜光の真の目的は致命傷を負わせることではなく、

マナのシャドーブレスレットの破壊であった。

シャドーブレスレットを失えば……マナの戦意は問わず、結果的に夜光達の勝利となる。

全てを滅する闇獄鬼の力を用いればシャドーブレスレットの破壊も可能と考えた夜光。

あの拳もマナのシャドーブレスレットを狙ったものであり、マナはその衝撃で致命傷を負ったに過ぎない。

確証などない賭けではあったが、夜光の読みは当たった。


ギシギシ……


 シャドーブレスレットの亀裂はさらに広がり、ギシギシと音を立てて崩れていき、ただのガラクタに成り果ててしまった。


「ばっバカな……」


 シャドーブレスレットの破壊と同時にマナのアーマーも消え去り、マナは生身の人間に戻った。

あり得ない現実を目の当たりにしたマナの顔からは、余韻の笑みも殺意に満ちた形相を消え失せ、焦りと恐怖が張り付いたある意味人間らしい顔つきとなっていた。


「さすがのお前でも笑えなくなったみたいだな」


「くっ!」


 夜光の皮肉にマナは心底悔しがり、歯をギシギシ言わせて歯茎から血まで流すほどだった。

彼女の様子から万策尽きたと察した夜光達は安堵の息を漏らした。


「マナちゃん……一緒に帰ろう?

もう戦いは終わったんだから」


「だっ黙れ! あたしは負けてない! 

負けるなんてあり得な………!!」


 優しい言葉を掛けて歩み寄るセリナの気持ちを拒絶し、恐れをなしたかのように後退りするマナの顔が突然けたたましい炎に包まれた。


「あがががぁぁぁ!!」


 燃え上がる顔の熱さに耐えようと両手で顔を覆うマナだが、耐えきれず獣のような声を上げてしまう。

あまりの熱さに顔を甲板に打ち付け、その痛みで熱さに対抗しようと試みるが、効果はあまりなかった。


「マナちゃん!!」


 炎が遮るためにマナの顔は確認できないが、その様子から演技などではなく、本当のアクシデントだと悟ったセリナが一目散に彼女の元へ駆け寄る。


「触るなっ!」


 セリナが体に触れようとした瞬間、マナは彼女の手を振り払った。

炎が顔にまとわりついているにも関わらず、そのような行動が取れたのは、マナの常軌を逸したプライドゆえに出た、火事場の底力とでも言うべきなのかもしれない。


「ががぁぁぁ……ハァ……ハァ……ハァ……」


 突然出現した炎は20秒間マナの顔を焼き付くすと……煙のように一瞬で夜光達の視界から消え失せた。

顔が燃えたれば大抵の人間は死ぬか良くても大やけどを負うだろうが、マナはそのどちらでもなかった。

顔が焼けたというのにマナの服は焼けておらず、頭の鈴もコゲすらない。

だがそれ以上に夜光達を驚かせたのは、マナの顔であった。


「マナちゃん……なの?」


 マナの顔は今まで夜光達が見知っていた顔とは全くの別人へと変貌していた

整った顔立ちではあるが、夜光達の知るマナの顔とは明らかに異なっている。

頭からは白い煙が立ち上り、顔を覆うほどの火傷の跡が痛々しく浮き上がっている。

状況が理解できずにただ茫然とする夜光達。

そんな中……トーンだけが立ちあがり……マナの元へと歩み寄ろうとする。


「……ミーファ?」


 幽霊に遭遇したかのような顔で、マナに吸い寄せられるように1歩ずつ足を進めるトーン。

口からこぼれ出た名前は二度と呼ぶことなどないと思っていた愛しくも悲しい名前。


「その顔……その火傷……間違いない……お前は孫のミーファじゃないのか?」


『!!!』


 衝撃の発言に、夜光達は言葉を失う。

トーンの孫はまだ幼い頃に亡くなったと、トーン本人が語っていた人物。


「ミーファ……生きていたのか!?……うぐぉ!!」


 トーンの手が肩に触れようとした直前……マナは涙ぐむその顔を殴り、トーンを転倒させた。


「トーンさん!」


 セリナがすぐに駆け寄るが、トーンは彼女の手を借りることなくすぐさま立ち上がった。

頬には痛々しい痣が残り、内面からズキズキと痛みがにじみ出るが、トーンは痛みに怯まなかった。

死んだと思っていた孫娘が目の前にいる……天涯孤独な男が歯を食い縛って立ち上がるには十分な理由と言えるだろう。


「ミーファ……ミーファなんだろ? 幼い頃に死に別れたとはいえ、愛する孫娘の顔を見間違いはしない!」


「……」


「答えてくれ!」


 涙を流しながらマナに問い掛けるトーンの姿勢に心を打たれたのか……憐みを抱いたのか……マナはようやく口を開いた。


「そのキモい呼び方やめてくれる?」


『!!!』


 マナの口から出てきた声が鼓膜を震わせた瞬間、トーンを除くその場にいた者達は耳を疑った。

顔と同じく……その声も夜光達が今まで聞いていたマナの声とは異なっていたからだ。

だがそれはある意味、顔以上に変化が著しかった。


「バカの1つ覚えみたいに何度も何度も……マジウザい」


 可愛らしくも美しいマナの声……それが今、地の底から聞こえるうめき声のような聞き入れがたい声へと変貌していた。

もはや変声機でも使わないと出せないレベルの声と言える。

人の声というより…‥ガマガエルの鳴き声と言った方が表現として正しいのかもしれない。


「フフフ……醜い? この声。

まあそうでしょうね……あたしも自分の声とわかっていても吐きそうだわ」


「マナちゃん……一体何がどうなってるの? 教えてよ!」


 説明を求めるセリナに対し、マナは答える気はないと言わんばかりに自分の髪をいじり始める。

一見、面倒ごとを省こうとする怠惰な態度のように見える。

だが彼女の本心は、自身の醜い声を他人に聞かせたくないというコンプレックスから来る恥じらいだった。


「さあね……そんなに聞きたいならそこのくたばりぞこないにでも聞いたら?」


 トーンを見下す軽蔑しきったその目には強烈な殺意が込められていたが、どこかしら悲しみの色も帯びていた。

マナに釣られ……夜光達もトーンに視線を向ける。

トーンは懺悔を請う罪人のように膝を付き……その場でうずくまる。


「……あれはもう……10年前の話だ……」


-----------------------------------


 10年前……トーンはラジオ放送船”カルメ号”の造設した。

当時はラジオ局が少なかったので放送範囲がかなり狭く……受信装置も今より高額であったため、世間にラジオそのものがあまり浸透していなかった。

誰も足を踏み入れていない未知の領域な上、造設の費用や維持費は相当なもの。

普通なら造設を断念する以前に、行動を起こすこともしないだろう。

だが、ラジオを多くの人に知ってもらおうと思い立ったトーンや彼の意志に賛同した者達の思いがこの不可能を可能にした。

現在より多少スペックは劣るものの、当時は画期的な船として一部のラジオ関係者から注目を集めていた。

そして今回同様……処女航海に出ることになった当日……トーンは7歳の孫娘、ミーファを連れてカルメに乗船した。


「ミーファ……きれいな海だね。 キラキラ輝く宝石みたいだ」


「……」


「今晩この船で初めてのラジオ放送が流れるんだよ? ミーファも聞いてくれるかな?」


「……うん」


 トーンがいくら話しかけてもミーファは”うん”としか答えず、うつ向いて海を見ようともしない。

だがミーファは元々明るい女の子で、いつも大勢の友達に囲まれて遊ぶ普通の子供だった。

可愛らしい顔と美しい声を持つミーファは老若男女問わず、周りから愛されていた。

彼女が生まれた時にトーンが買ったカルメとはいつも一緒で兄弟のように育った。

彼女は祖父であるトーンの影響もあり、いつかラジオパーソナリティーとしてラジオ番組を持つことを夢見ていた。

そんなミーファが変わってしまったのは5歳の頃……両親とカルメと行った家族旅行だった。

ミーファ達が泊まっていた旅館で火事が起こり、火元に近い部屋にいたミーファ達は避難する前に日に囲まれ、逃げ場を失った。

ミーファは両親が小さな窓から脱出させたおかげで一命を取り留めることができたが、両親とカルメはそのまま炎に焼かれて命を落とした。

ミーファは生き残ったとはいえ、大切な家族を失ったことで心に大きな傷ができてしまった。

だが……ミーファが失ったのは家族だけではない。

顔を火傷したことでかつての愛くるしさが消え失せてしまい……美しかった声も煙による喉のダメージで醜い声へと変貌してしまっていた。

特に声は、歌やラジオが大好きなミーファにとって生きがいである。

それを失ったミーファの精神的ダメージは計り知れない。


-----------------------------------


『ミーファちゃん、顔汚い』


『お化けみたいで怖い』


『……』


 同年代の子供達からは悪気もなく顔に対する容赦なき言葉を投げかけ、怪物を見るかのような怯えた目で見られることが多かった。

幼く純真無垢な子供故の残酷で惨たらしい言葉は、大人であっても心が痛むだろう。

大人達はミーファの痛々しい火傷に同情して子供達に注意を促すが、思ったことをすぐに口にするのが幼き子供の特性であるため、あまり意味はなかった。

だがミーファにとって最もつらかったのは声に対する周囲の反応であった。


「おはよう……」


『アハハハ!! 変な声!』


『ミーファちゃん! お歌うたってよ!』


『おばびょう~(おはよう~)……ミーファちゃんのマネ、似てた?』


 日常では聞くことのないような声を面白がり、ミーファが声を出すたび……彼女の周りからは笑い声が絶えずこだました。



『ミーファちゃん、ウチの子がごめんなさいね?……プッ!』


『こっ個性的な声ね? ミーファちゃん』


 子供の誤った解釈を正すべき大人達ですら、ミーファの声に吹き出す始末。

ミーファにバレないようごまかしているつもりだが、当のミーファは自分がみんなに笑われていると気づいていた。

中には子供に混じって、お腹を抑えながら笑いこけている大人もいた。

ミーファにとって声は自身の象徴とも言える宝物。

その声を笑われる等、彼女にとってはこの上ない屈辱であった。

悔しさのあまり涙を流したことは数知れず……人に涙を見せたことはなかった。

彼女の小さな体に宿るプライドが”涙を見られるのは敗北である”と諭したのだ。

かつてお姫様のように愛されていたミーファが一変し、周囲から笑われる道化となってしまった。

この事実に幼いミーファの心が耐えらえるはずもなく、火事からまもなくしてミーファは別人のように暗くなり、人前に姿を見せることもなくなった。

特に会話は祖父であるトーンにすら積極的にしようとしない。


-----------------------------------


 そんなミーファの心を救おうとトーンが考えたのはカルメ号だった

その経緯となったのは2人が旅行前に交わした会話にある。


『おじいちゃん! 私、カルメに乗りたい』


『カルメに?』


『うん! カルメに乗っていろんな所に行って、みんなとラジオでお友達みんなとおしゃべりするのが夢なんだ!』


『そうかそうか……よしっ! おじいちゃんに任せておきなさい!

いつか、カルメに乗ってお友達と……いや、世界中のみんなとおしゃべりできるようにしてやる!』


『ホント! 約束だよ!?』


『あぁ、約束だ!』


 夢物語のような約束……これがトーンの原動力となった。

大抵の人間ならば、こんなのは幼い子供の描く絵空事だと流すだろう。

だがトーンは本気だった。

現実的な方法でミーファの夢を叶えようと決意した。

誰もが聞けば孫バカな男だと笑うだろう……金持ちならではの考えだと呆れるだろう……。

だがスケールが違えど……子や孫のために何かしたいと思うのが親心である。


「(ミーファ……もう1度、笑顔を取り戻してくれ!)」


 奇跡を信じるトーンと炎に心を蝕まれるミーファを乗せたカルメは果てしない大海原へと旅立っていった。

それが取り返しのつかない絶望への航海だとも知らず。

ルド「ここにきて回想かよ……」

ミヤ「決まっていたことなのだから仕方ないでしょう?」

ルド「ただでさえ更新速度が遅いのに、別作品にかまけやがって!」

ミヤ「でもあちらの方が読まれているようだけれど?」

ルド「それを言うな! なんか悲しくなる!」

ミヤ「一応、こっちが代表作だとは言っているけれど……」

ルド「ファンタジーよりもドロドロドラマの方が面白いってのかよ!」

ミヤ「そもそもファンタジーなのか疑わしいわね、この話」

ルド「ファンタジーじゃなくてファンタジー風だ! そこを間違えるな!」

ミヤ「どう違うのよ!それ」


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