チチハラ
ちょっとボケた話をします。
船上パーティーにて、ウラシが考案した催し物が開催されようとしていた。
だがそれは、ウラシが自分の取り巻き達を自慢したいだけのただの茶番であった。
厳しくもバカバカしい参加条件で参加者が1人も集まらない中、夜光の不用意な発言によって、彼とマイコミメンバー達が催しに参加することになった。
デッキでの借りを返すために、マイコミメンバー達は参加を決意するのであった。
『それではこれより、モテ男大会を参加したいと思います!
今回参加するのは2組!!
まずは【男の求める全てを持つ男】ウラシ様!!』
司会者に紹介されたウラシがふてぶてしい笑みを浮かべたまま、会場内に手を振る。
その際、取り巻きの女達がわざとらしくウラシに体を寄せ付ける
今回ラジオドラマにも出演するオトヒメに至っては、濃密なキスで会場内の注目を集めてくる。
「そしてもう1組は、【今世紀最悪の浮気クズ野郎】時橋夜光さんです!」
「おい待て!! なんだよ!!その悪意全開の肩書きは!?」
『笑騎という方からこれで頼むと……』
「あの野郎!!」
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「ざまぁみぃ……クズのくせにハーレム自慢なんぞするからや……ヒヒヒ……」
当の笑騎は隅のテーブルで料理を頬張りながら舞台上で怒り狂う夜光を嘲笑っていた。
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『では大会のルールについてですが……”まず愛人達が主人たる男性に愛を示す。
そして、会場内のみなさんが羨ましく思った男性の名前をテーブルに置いてある紙に書き、投票箱に入れる。 票の多い方の勝利となる” 以上です』
『……』
アバウト過ぎるルールに夜光達だけでなく、招待客も口をあんぐりとして思考が停止する。
「なあ……ルールの意味がわからないのは僕だけか?」
「……いえ、私も全く理解できません」
「スノーラちゃん。 愛を示すってどういうこと?」
「私が知りたいです……」
「試行錯誤した結果がこれって……1周回ってすごいわ」
「取り巻きの連中もすごいだの天才などわかりやすいお膳立てなんぞしやがって……見てるこっちの身にもなれっての」
「愛を示すとなると……やはり性行為か?」
「えぇぇぇ! ボク、こんなムードもないところでダーリンに初めてを捧げたくないよ!」
「あなた達はどうしてそう突発な考えしかできないの?」
夜光達に動揺が走る中、司会は右手を上げる。
「では始め!!」
『えっ?』
司会者の合図が何を始めるものなのかすらわからず、夜光達はカカシのように舞台上で突っ立ってしまう。
『ウラシ様~』
「おいおいハニー達。 僕の体は1つしかないんだ。 取り合いはやめてほしいな」
『は~い!』
ウラシの方は取り巻きの女達が突然ドレスを脱ぎ去り、下に身に着けていた露出度の高い水着を露わにした。
裸同然の取り巻き達はウラシにまとわりつき、彼への奉仕を始めた。
ある者は胸や尻を押し付けながら過激なマッサージを、ある者はワインを口移しでウラシに飲ませ、ある物は巨大な谷間でウラシの頭を挟み込んで枕の代用品と化す。
そして、その中心部にいるウラシは”羨ましいだろ?”と言わんばかりにふてぶてしい笑みを浮かべ、ことあるごとに会場内の男性陣を見下ろす。
『……』
会場内の反応は……。
笑騎を含めた大半の男性陣は、取り巻き達の体を視線で舐めつつ、ウラシを憎々しく睨みつけている。
女性陣とトーンを含めた一部の男性達は恥じらいもなくいちゃつくウラシ達に呆れ、目を背ける始末。
中には小さな子供も混じっているので、母親が手で目を覆い、純粋なその心を守る。
「揃いも揃ってよくやるわね……」
「感心してる場合じゃないよ! ボク達も何かしないと……」
「何かって……あんなアホ共を相手にオレ達が何をするんだよ?」
マイコミメンバー達は知恵を集め、ウラシ達への対抗策を考え始める。
「(はぁ……余計なことを言うんじゃなかったな……なんだか頭が回らないし、タバコでも吸って落ち着くか)」
夜光は落ち着きを取り戻すため、懐からタバコを1本取り出して口に咥える。
「ダメです」
「あっ!」
口に咥えたタバコをそう言って取り上げたのはセリアだった。
「コウちゃん、今日はこれで4本目じゃないですか。 少し吸い過ぎです」
「(なんでそんな本人も知らない本数がわかるんだ?)」
「タバコは体に悪い物だと聞いています。 少し控えた方が良いですよ?」
「そっそうだな(深く考えるのはよそう……)」
セリアの記憶内容に気になる点はあるものの、今まで見てきた彼女のどす黒い一面が記憶を巡り夜光を思い留まらせた。
「ダーリン。 代わりにボクのおっぱいを吸う?」
タバコを断念した夜光を見かねたレイランがドレスの胸部に手を掛け、中身を夜光にだけ見えるように少し浮かす。
「待てレイラン。 良き提案ではあるが、お前は乳が出るのか?」
「あっ!そうだ……ボクまだおっぱい出なかったんだ」
「(そういう問題かよ……)」
母乳が出ないことをキルカに指摘され、しぶしぶ乳を差し出すのを諦めたレイラン。
キルカも自身の乳を搾る動作を見せ、無念の苦を浮かべている。
「しょうがない……今回はお母さんにおっぱいを譲るよ」
「……えっ? 何の話?」
突然名前を呼ばれたミヤがレイランの方に振り向く。
「ねえお母さん、ダーリンにおっぱいあげて」
「……はい?」
レイランの言葉が理解できず、首を傾げるミヤ。
そんな彼女の反応に女としての鈍さを感じたのか、キルカがなぜかため息をつく。
「だから、ダーリンにおっぱい上げてほしんだ」
「いっ意味がわからないわ。 だいたいどうしてわたくしが……」
「だってボク達の中でおっぱい出るのお母さんだけだし」
「説明になってないでしょ!!」
レイランが本気で言っていることを悟ったミヤが、自分の胸を両手で庇う。
顔は赤くなり、無意識に後ずさりしている。
「いいじゃん! 減るもんじゅないし!」
「こっこら! やっやめなさいっ!!」
レイランがミヤの背中に回り、羽交い絞めにする。
「さぁパパ。 存分に飲むといい」
「おっおい! キルカ!」
嫌がる夜光の腕に絡みつくキルカ。
だが彼女の細い腕では筋力がすさまじい夜光を引くことはできない。
ミヤの方も、レイランがケガをしないように抵抗を甘くしてはいるので、拘束しきれてはいない。
2人の理解不能な企みは失敗すると思えた……が!
「ミヤ、許せ」
突然スノーラとセリナがそれぞれミヤの腕に絡み尽き、彼女を拘束したのだ。
「なっ! あなた達、何をしているの!?」
「色々考えたのだが、良い対抗案が思いつかなくてな。
もうこうなったらレイラン達の案を採用することにした」
「はぁ!?」
「大丈夫! ほかの人におっぱいが見えないように私達が目隠しになるから安心して」
「そういう問題じゃない!! スノーラまで何を考えているの!?」
「わかっている……自分がどれだけ愚かしいことをしているのかは……だがあの連中に一矢報いることができないのは、少々癪に障る。 時間も限られている中で策もない現状、これに掛けるしかない」
「ばっバカなことを言わないで!」
さすがのミヤもセリナとスノーラの加勢で身の危険を感じ、本気で抵抗を試みる。
だがいくら彼女でも、3人に拘束されている状態を抜け出すのは難しい。
「やっやばい……げっ!!」
「兄貴、すまねぇ」
ミヤ同様、危険を感じた夜光がその場から逃げようしたが1歩速く背後に回っていたルドが夜光を羽交い絞めにする。
その上ライカまでもが夜光の腰に腕を回して自由を奪う始末。
「おっお前達まで何のつもりだ!?」
「悪い兄貴……このまま何もせずにいるのも性に合わないからさ。 イチかバチか賭けに出ようってことになったんだ」
「冗談じゃない! ライカまでどうしたんだ!?(いつもだったらこんなことに手を貸さないはずなのに……)」
「だって、あいつらがお兄ちゃんにした仕打ちがどうしても許せないじゃない?」
「それは当の本人を辱めてまでやるべきことなのか!?」
「パパ……辱めるとは心外ではないか? みなの公認で美女の乳が吸えるのだ。
心置きなく吸い付くのが男の本能ではないか?」
「本能だけで人に赤ちゃんプレイを強制させるな!!……ってのわぁ!!」
ライカ達を言い争っている間に、レイラン達に拘束されているミヤが夜光の目の前にまで近づいていた。
「せっセリア! なんとかしてくれ!」
最後の望みを掛けてセリアに助けを求める夜光。
ヤンデレ気味なセリアならこんな状況を許しはしないと考えてのことだ。
「……コウちゃん。 今回だけは目をつむります」
「はぁ!?」
夜光が授乳を阻止したい気持ちはある。
だが彼女も夜光を傷つけ嘲笑ったウラシ達に強い怒りを覚えている。
その怒りが、セリアの中の嫉妬心を押さえつけてしまっているのだ。
「失礼します」
「あぅ!……」
セリアの手によってミヤのドレスの胸部がずらされ、巨大な乳房が先端まで露わになった。
あまりの恥ずかしさに、ミヤは叫び声を上げることすらできなかった。
ミヤを取り囲んでいるセリナ達の体で周囲には見えていない。
だが人前で乳を放り出していることに変わりはなく、ミヤは涙目で顔を赤く染める。
「さあ兄貴。 もうここまで来たらぶちゅっとやっちまえ!」
「ルドお前……他人事だと思って……」
「実際他人事だしな……よっと!」
「がっ!」
ルドとライカとキルカの3人で、夜光の膝を折らせ、ちょうど夜光の頭がミヤの胸の辺りに来るよう高さを調整させる。
「待て待て!! 本気でやめろ!!」
「うるさいわね! 男なら覚悟を決めなさいよ!」
「ほらパパ! 口を少し開くのだ」
「はごごご(やめろぉぉぉ!!)!!」
キルカとライカの手で強引に口を開かされた夜光。
口元をゆっくりとミヤの乳首に近づいて行き……。
「はぅ……」
ついにミヤの乳首に夜光の唇が触れ合った。
舌が無意識に乳首に触れてしまい、艶っぽい声がミヤの口から漏れる。
「ほら夜光、赤ちゃん頃を思い出して!」
「(そんなもん思い出せるか!!)」
「はぅ……やっ夜光君……舌……舌を動かさな……」
内心で言ったつもりでも人は無意識に舌を動かしてしまう。
それが乳首を舐めると言う動作に繋がってしまったのだ。
「ほら、ダーリン。 お母さんのおっぱい、おいしい?」
「(言葉の意味をちゃんと理解して言ってるのか!?)」
イタズラな笑みを浮かべたレイランが、夜光に吸われているミヤの乳房を軽く絞る。
気のせいかと思われるが、口内にわずかな甘味を感じる夜光。
もしもこれが夜光自身の強要ならばセクハラ以外の何ものでもない。
だが現状は周囲の女性陣(ルドは少々異なるが……)が強要しているもの。
無理やりこの行為をハラスメントと呼ぶのであれば、飲酒を強要させるアルハラにちなんで、
”チチハラ”とでも言うべきなのかもしれない。
『……』
会場内も夜光達に目を奪われてシンと静まり返り、ウラシ達すらあまりの光景に言葉を失う始末。
強制とはいえ、大の男が人前で美女の乳を吸うシーンは思春期の男子でも興奮よりも戸惑いが勝ってしまうだろう。
母親達はあまりの羞恥に「”あんな大人にならないでね!”」、「”あんな大人に関わらないでね!”」と子供達の未来を案じ強く抱きしめる。
「(いっいつまで続くんだ? これ)」
夜光のチチハラはそれから10分ほど続いた。
解放された夜光とミヤはまるで生気を失ったかのような青い顔をしていた。
「……」
ミヤはドレスを着直し、胸を抑えたまま舞台袖で小さくなっていた。
「……」
「なんでお前ばっかり!!」
夜光も精神的なダメージが底知れず、チチハラを羨ましがって突っかかって来る笑騎にさえ無反応だった。
※※※
「投票結果が出ました!……優勝は夜光さんチームです!!」
『!!!』
「ばっバカな!! 僕があんな不細工な庶民に!!」
「こんなの何かの間違いよ!!」
『そうよそうよ!!』
投票の結果、夜光達が勝利した。
「やりました!」
「やったぁぁぁ!!」
「フンッ! 口ほどでもないわね!」
「思い知ったか!」
「ざまぁみやがれ!」
「良い肴になりそうだな……」
「ダーリン愛の勝利だね!」
ミヤ以外のマイコミメンバー達は負け犬の遠吠えを繰り返すウラシ達の姿にスカッとし、ハイタッチやハグ等で喜びを分かち合っていた。
勝者である夜光とMVPであるミヤは大会終了後、しばらく人目を避けるようになってしまった。
ハナナ「……なんですか?このくだらない茶番は……作者から私への挑戦ですか?」
誠児「(……また始まったよ)」
ハナナ「誠児さん、1つ聞いていいですか?」
誠児「なんでしょうか?」
ハナナ「誠児さんは忌まわしい巨乳と淑やかな貧乳、どっちか好きですか?
場合によってはこのバズーカが黙ってません」
誠児「(実質一択じゃないか!)……えっと、貧乳が好きです」
ハナナ「そうですか。 ではその証明に貧乳の女の子にチチハラしてきてください」
誠児「それただのセクハラじゃないですか!!(それ以前に証明になるのか?それ)」
ハナナ「ではマイコミメンバーさん達の乳を捥いだ後、顔を踏んずけてきてください」
誠児「(扱いの差がひどいな……)。 それも無理です!」
ハナナ「なんですかそれ!! やっぱり誠児さんも巨乳派なんじゃないですか!!」
誠児「そっそんな無茶苦茶な!!」
ハナナ「巨乳主義者め!! 成敗してくれるぅぅぅ!!」
誠児「うわぁぁぁ助けてぇぇぇ!!」




