表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
マインドブレスレット ~異世界の女神がくれた鬼の力で最強?っぽい存在に!! 巨乳美少女達と送る異世界ハーレムストーリー~  作者: panpan
鬼ヶ島編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

176/205

コウちゃん

鬼ヶ島編はこれで終わりです。

 闇魔刀……そして闇獄鬼の力でゼロンに巣食う鬼達を滅することができた夜光。

セリアやゴウマの説得もむなしく、ゼロンは夜光への恨みを残して姿を消してしまった。

心にしこりを残し、夜光達は鬼ヶ島を去った。



「……またこのパターンか」


 意識を取り戻した夜光の視界に映ったのは、親の顔ほど見たホームの医務室だった。


「……ギリギリ動けるか」


 城では鉛のようだった夜光の体に、本来の重さが蘇りつつあった。

必要以上な睡眠を取ったためか、頭には鈍い痛みが伴っている。

ダルさも多少残ってはいるが、上半身を起こすくらいはできた。


「気が付いたか……」


 医務室に入ってきたのは花束を持ったゴウマだった。

意識を取り戻した夜光に対し、特に驚くようなそぶりは見せず、花束の花をベッドの脇にある花瓶に移し替える。


「あれから1週間も目が覚めないから心配したぞ? 医師から毒素は消えていると診断されたものの、みんな肝を冷やし続けていた」


「……あれからどうなったんだ? 確か……大きな鬼になってあの鬼達を追い払った所までは覚えているんだが……あっ! ゼロンは!?」


 ゼロンの名を口にした瞬間、ゴウマは目を下に向けたままゆっくりと首を横に振った。

その意図を察した夜光はそれ以上は言葉を紡がなかった。


「あの巨大な鬼は闇獄鬼。 闇魔刀に封じ込められていた古に伝わる鎧だ」


「鎧?」


「あぁ……闇魔刀に選ばれし真の闇神にのみ、力の開放を許される破滅の鎧だ。

かつて闇鬼と呼ばれていた頃のワシですら、それは叶わなかった」


「闇神……」


 それは、この世界に来た時にハナナの口から出た名称だった。

意味がわからず、すっかり彼の頭から抜けていた。


「闇神は闇に選ばれし最強の称号だ。 授かっていた”闇鬼”もろとも鬼一族が滅びたことで、称号そのものも滅びたと思っていた。

だがまさか……お前が選ばれるとはな……」


 力なく笑うゴウマが、懐から金属の小さな破片を取り出した。

それは夜光がハナナから譲りうけた……というより押し付けられた闇神の指輪だった。

嫌々ながらも、ほぼ毎日夜光の指で輝き、鬼ヶ島でもしっかり付けていた指輪が今、夜光の目の前で粉々になっていた。


「それって……闇神の指輪」


「これは……闇神の指輪などではない」


 指輪の残骸を、花瓶が乗っているサイドテーブルに置く。


「これは……”パスリング”だ」


「パスリング? ライカ達が身に着けている?」


 パスリングとは、人魚やケンタウロスなどの異種族を人間に変化させる指輪。

セリアとセリナ以外のマイコミメンバー達は、このパスリングで人間となり、ディアラット国で生活している。


「そうだ……とはいっても、あの子達の付けているものとは少し仕様が異なるがな」


「どういう意味だ?……」


「こいつは、ワシの精神力をお前に供給する……いわばパイプのようなものだ。

今までのお前はワシの精神力を加えることで、闇鬼の力を制御することができていたんだ」


「……」


「闇の力というのは強力な分、とても扱いの難しい力だ。

その力に溺れて破滅していった者は数知れない。

お前は素質はあっても心が弱すぎた。

この指輪を使わなければ、お前もゼロンのように我を忘れて己の欲望に支配されていたかもしれん」


「じゃあなんで、指輪は粉々になったんだ?」


「お前が強くなったからだ」


 そう返すゴウマの顔はとても朗らかだった。


「夜光……今のお前の心は強くなった。 このワシ以上にな……だからこそ、指輪は役目を終えて散ったんだ」


「強くなったって……自分ではそんな気はしないんだけどな……」


「お前の目を見てすぐにわかったよ。 お前が以前よりも強く、優しくなったとな……いや、もしかしたら……今のお前こそ、本来の姿なのかもしれんな」


「よしてくれ……僕は親父とは違う。 他人のために何かするようなガラじゃない」


「ワシとて、お前のように人の心を動かすようなことはできん。 まして……自分達の命を削ってまで助けたいと思うまではな……」


 ゴウマはサイドテーブルとは反対側に置かれている椅子に腰を下ろし、夜光に視線を改めて向ける。


「それは……あいつらの優しさだ」


「そうだな……だが、あの子達をそこまで強くしたのはお前だ。

もっと自分に自信を持ってもいいのではないか?」


「どうかな……それはそうと、誠児やあいつらは大丈夫なのか?」


「あぁ、多少のダルさは残っているが、みんな元気にしている。

特にあの子達は交代でお前のそばについていてくれたんだ。 あとで礼を言っておけ」


「そうか……」


 それからしばらくゴウマの近況報告に耳を向けた。

それによると、やはりマイコミメンバー達の実習や試験は不合格となり、夢を掴む最大のチャンスを失ったようだった。

ゴウマは気にするなと掛けるが、夜光の心情は揺れる。


ガチャ


「あっ!!」


 ふいに扉が開き、人影が医務室に足を踏み入れる。

次なる来訪者はセリアだった。

ゴウマの話した通りにローテンションで夜光のそばにつき、今日は偶然セリアが担当していたのだ。


「夜光さん、お目覚めになっていたんですね」


「あぁ……なんとかな」


 夜光のベッドに駆け寄り、その手を両手で包み込み、生きているぬくもりを感じるセリア。

ほっと胸を撫でおろすその目からは、喜びの涙が流れていた。


「ごめん……お前にもみんなにも心配させたみたいだな」


「いえ……いいんです。 こうして無事な姿を見せて頂けただけで……」


「……ありがとう、セリア」


「……」


 2人の顔を交互に見て、何かを察したゴウマが椅子から腰を上げる。


「セリア、ワシはみんなに夜光のことを知らせにいってくる。 夜光のことを頼むぞ?」


「はっはい……」


 セリアに後を任せ、ゴウマは医務室を後にした。

残されたセリアはしばらく夜光の手を握って嬉しさに心を浸透させていた。

夜光も心配させてしまった罪悪感から、気が済むまでそっとしておいた。


※※※


「……すみません。 長々と……」


 気持ちが落ち着きたセリアが申し訳なさそうに夜光の手を離すが、夜光は首を横に振る。


「いや……謝るのは僕の方だ。 お前はみんなに夢を諦めさせてしまった挙句、こうやって命まで分けてもらって……」


「いいえ。 私もみんなも自分で選んだことです。 それに、誰も夢を諦めてはいません。

それにみんな、次の機会に向けて頑張っています。

ですから、ご自分を責めたりしないでください」


「そうか……みんな強いな」


「そうですね……でもそれは、夜光さんがいたからです」


「そう言ってもらえるのは嬉しいな」


「フフフ……あっ!そうだ」


 何かを思い出したセリアがサイドテーブルの引き出しを開け、中にある紙の束を取り出した。

それは、セリアが今回の小説大賞用に書き続けていた小説の原稿だった。


「それって……」


「はい……夜光さんがいつ起きてもいいように、ここに置いておいたんです。

約束……覚えていますか?」


「……覚えているさ」


 セリアが夜光に想いを伝えたあの日、彼女が書いた小説の最初の読者になると約束していた。

だが夜光は今だに心界の文字を読めないため、セリアが音読することになっている。


「その……夜光さんがよろしければ、私が音読しますので……」


「いや……待ってくれ……」


 セリアが読み聞かせようと椅子に腰かけるも、夜光は彼女の持つ原稿に手を伸ばした。


「あの……どうされました?」


「これ……自分で読みたいんだけど、いいか?」


「えっ!? でも、夜光さん……」


「お前が努力した書いた小説なんだ。 僕も努力して読まないと書いたお前とは釣り合わないと思うんだ。

時間は掛かると思うけど、自分の力で最後まで読みたいんだ」


「……」


「頼む……」


「……わかりました」


 夜光の決意を嬉しく思うセリアは、ベッドの上に原稿を置いた。


「ありがとう……あっ! セリア……あの時の告白の返事なんだけど……」


 セリアが告白した際、夜光は精神的に不安定な状態な上、恋愛そのものに恐怖心を抱いていたので、適当な言葉でうやむやにしてしまった。

そのような曖昧な返事をしてしまったことを、夜光はずっと後悔していた。


「適当な返事をしてすまなかった」


「気にしないでください。 あんな状態では無理もありません」


「お前の気持ちは素直に嬉しいと思う。 僕のそばにいてくれたセリアやみんなのことを受け入れている自分がいるのも確かだ……でも僕には誰かを好きになる自信がない。

仮にお前の気持ちに応えたとしても、お互いに幸せになれるかどうかわからない。

それに誰かを選べば、選ばれなかったみんなに大きな傷をつけることになる。

そんなこと気にするなと言われるかもしれないけど、僕には恐ろしくてそんなことはできない」


「……」


「こんな優柔不断な答えですまない。 はっきりと言えれば男らしいかもしれないけど、

これが僕の本心なんだ」


「……ここまでひどい回答はきっと小説の中でもないでしょうね。 はっきりと申し上げて幻滅致しました」


 夜光の本心を黙って聞いていたセリアが口にしたのは彼を蔑むような言葉だった。

だが言葉とは対象的に、表情は穏やかだった。


「ですが……それが夜光さんの本心なら、私は何も言いません。

それに……こうして私やみなさんの想いを知ってくれているだけでも、嬉しく思います。

少々納得しがたい所もありますけど……」


「そうだろうな……当然だ」


「……わかりました。 夜光さんのその答えを受け入れます。

その代わり、1つお願いを聞いてはもらえませんか?」


「お願い?」


 セリアは言い出しにくそうに、顔を赤らめながら手をもじもじとさせる。

そのしぐさに夜光も何を言い出すのかと気が気でなかった。


「あの……もしよかったら……これから夜光さんのことを……”コウちゃん”って呼んでもいいですか?」


「……えっ?」


 セリアの口からようやく出てきた意外すぎる願いに、思わず呆気にとられる夜光。

蛇足だが、コウちゃんのコウは夜光やこうのコウから取っている。


「はい……あっ! もちろん嫌なら……」


「別に嫌って訳じゃないんだ。 なんでまた……」


「その……なんと申しますか……少しでも夜光さんと近しい仲になりたいと思いまして……でも呼び捨てなんておこがましいと思いまして……だから、色々考えて、コウちゃんに決めたんです」


「(コウちゃんも十分おこがましい気がするけど)……わかった。せっかく考えてくれた呼び名なんだし、そう呼んでくれ」


 はっきりとしない自分のせめてもの罪滅ぼしと言う意味も込めて、夜光は呼び名を承諾した。


「あっありがとうございます」


 セリアは感激と言わばかりに喜びを体で表現した。

その様子はまるで告白をOKしてもらえた少女のようだ。


「でっでは……これからもよろしくお願いします。 コウちゃん」


「あぁ……こちらこそ……」


バタンッ!


「「!!!」」


 突然ドアが勢いよく開き、複数の人影が雪崩のように入ってきた。

夜光とセリアがドアに視線を向ける。


「なっ! みなさん!」


『……』


 そこにいたのは、マイコミメンバー達だった。

予期せぬアクシデントに気まずい空気が部屋中を包み込む。


「あはは……ごめんセリアちゃん。 でっでも別に盗み聞きなんてしてないよ!?」


「セリナ! シー! それ以上言ったらさっきの話を盗み聞きしたことが2人にバレちゃう!」


『……』


 セリナとレイランのボケのような会話に、周囲が言葉を失う。


※※※


「2人ともごめんなさい。 聞き耳を立てるつもりはなかったのだけれど……」


「別にいいさ。 お前達に聞かれたくない話じゃないからな」


 ミヤの謝罪を快く受け入れる夜光に、レイランとキルカがその身をすり寄せる。


「さすがダーリン! 心が広いね!」


「それでこそ、我の愛しいパパだ」


「おっお前達! 夜光さんはまだ不調なのだ! そんなハレンチなマネはよせ!」


「構わないよ。 2人も厚意でしてくれているんだ。 あまり無下にはしないでおこう」


「やっ夜光さん……」


 いつものように、キルカとレイランの積極的なアピールに物申すスノーラ。

夜光も普段なら迷惑そうな顔で沈黙するか、鬱陶しいと言わんばかりに2人を払いのけていたのだが、本心で話せるようになった今は、素直に気持ちを受け入れるようになっている。

それはとても喜ばしいことではある。

だが、惜しげもなく胸を押し付けるレイランとキルカを受け入れるその姿は、セリア達の複雑な恋心には納得しがた部分もあった。



------------------------------------------


 同時刻……。


「くっ!……この僕が……あんな男に……」


 悪態をついているのは、鬼ヶ島から脱出したゼロンだった。

薄暗い手術室の台で横になっている彼の体にはいくつもの包帯がまかれているが、所々から血がにじみ出ている。


「時橋夜光ぉぉぉ!!」


 憎き男の名を叫ぶと同時に、医療器具の乗ったドレッサーを床に倒した。。

メスなどの金属類は音と立てて床に落ち、ガラス瓶などの割れ物は破片となって散らばる。

鬼達に体を乗っ取られたことで、ゼロンの精神には大きなダメージが残り、彼の心を不安定にさせている。

その心を無理やり正常に戻そうとして、ゼロンは夜光に強い憎しみをぶつけているのだ。


「……随分と荒れているようだな」


 そう言って暗闇の中から現れたのは、騎士団総長クレンツ ガルテラスだった。


「まあ結果がどうあれ、こちらも良いデータが取れた。

それは感謝しよう」


「黙れっ!」


 あざ笑うかのような口ぶりのクレンツにイラ立ちを覚えたゼロンが吠えた。


「私は君がどこで何をしようと感化する気はない。

だが私達との契約は守ってもらう。

そのために君の死を偽って、生かしているのだからね」


「……わかっている」


「だったらいい……」


 クレンツはそれだけ言うと、暗闇の中に消えて行った。


「時橋夜光……お前だけは必ずこの手で……」


 セリアへの歪み切った愛情が、夜光への憎しみへと変わってしまった。

セリナ「コウちゃんか……セリアちゃんって意外とおちゃめなことをするんだね」

セリア「かっからかわないでください」

セリナ「からかってなんていないよ! すっごく可愛いと思うよ?」

セリア「そっそれより、鬼ヶ島編がようやく終わりましたね」

セリナ「そうだね。 途中で遠回りしたから余計に時間が掛かったよ。

それで……次の話ってなんだっけ?」

セリア「えっと……豪華客船が舞台だそうです」

セリナ「豪華客船? なんだかミステリーな感じだね」

セリア「それと……メインキャラはお姉様だそうです」

セリナ「えっ? 私!?」

セリア「頑張ってください、お姉様」

セリナ「うっうん! 頑張るよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ