刃に込めた血
今回はおそらく今までで1番短い話になっていると思います。
詳細は活動報告で。
闇魔刀を求めて鬼ヶ城を訪れた誠児達。
最上階にて闇魔刀を発見したのもつかの間、かつて滅びた鬼一族が魂となって現れた。
鬼達は、戦争を起こそうとゴウマに呼びかけるも、彼はそれを断固として否定した。
『血迷いましたか!?闇鬼様! 鬼一族は最強となるべき存在!
そのために必要なのは力のみ!
それはあなた様が1番よく説いていたことではないですか!?』
「・・・何度も言わせるな。 ワシはもう闇鬼ではない! 人間なんだ・・・」
鬼達の期待を裏切るような感覚に襲われ、ゴウマは思わず鬼達から目をそらす。
その行動が、鬼達に残されていた闇鬼への期待や希望を大きく崩してしまった。
「お前達の期待に応えられないのは申し訳ないと思う・・・だが、これがワシの答えなんだ。
闇鬼はもういない・・・お前達の目の前にいるのは、1人では何もできないただの人間なんだ」
『・・・なんと弱々しい言葉だ』
恨み言のようにそう言い残すと、鬼達は煙のように姿を消してしまった。
辺りには気配もないため、この場から立ち去ったのか、成仏したのかはゴウマにもわからない。
今の彼にわかるのは、鬼達が自分を軽蔑してしまったことだけ。
自身で選んだこととはいえ、かつて共に命を掛けて戦ってきた同胞達を裏切ってしまったことに、ゴウマは深く心を痛めていた。
「親父・・・」
「・・・ワシなら大丈夫だ。 それよりも、準備を急ごう」
ゴウマは心の痛みを一時胸の奥にしまい、闇魔刀を手に取った。
※※※
車いすに乗せていた夜光を一旦誠児の上着を枕代わりにして床に寝かせ、
ゴウマは手順を改めて説明する。
「もう1度手順を説明しておく。 まず、この闇魔刀にお前達の血を塗り付け、力を一時的に弱らせる。
そしてワシが、闇魔刀を夜光に突き刺す。
その際、みんなはワシと夜光から少し離れておけ。
カイトは万が一のために待機していてくれ」
「了解ッス!」
「・・・では、時間が惜しい。 さっそく始めるぞ!」
ゴウマは1度深呼吸で心を静め、ゆっくりと鞘から闇魔刀を抜く。
鞘から抜けた闇魔刀からは、禍々しい光があふれ、それを目にした誠児達は蛇に睨まれた蛙のようにこわばってしまっていた。
闇魔刀の持つすべてを滅する力に対し、誠児達の生存本能が無意識に体を支配していたのだ。
「・・・さあみんな、血を」
ゴウマの言葉を耳にし、誠児は勇気を振り絞って闇魔刀に近づく。
「・・・」
誠児は闇魔刀の刃で親指を少し切り、にじみ出たわずかな血を刃にこすりつける。
刃にはわずかな赤い痕跡がこびりついた。
「これでいいんですか?」
「あぁ、それでいい」
マイコミメンバー達も誠児に続き、同様の手順で血を塗りたくる。
足のないスノーラだけは、ゴウマ自ら赴いて刃に血を塗った。
9名分の血を刃に付けたが、パッと見てもほとんど目立たない血の量に、誠児達は少々不安がってしまう。
「・・・よし。 みんな少し離れていなさい」
誠児達を少し下がらせた後、ゴウマは闇魔刀を逆手に持ち、夜光の胸に刃先を向ける。
その光景に誠児達の心に不安がよぎるが、夜光の死と言うそれ以上の恐怖が心を覆いかぶさる。
「夜光・・・戻ってこい!!」
意を決したゴウマが闇魔刀を夜光の胸に突き刺した。
その瞬間、闇魔刀がまぶしく輝き、誠児達の目をひるませてしまった。
「あがっ!!!」
次の瞬間、誠児達は心臓を力強く握りしめられるような激痛に襲われた。
全員胸を抑えてその場で膝を付き、意識を失わないように深く呼吸を整えるが、すぐに全員倒れてしまった。
そのあまりの痛みに、誠児達は悲鳴すら上げることができなかった。
「(こっこれが親父の言っていた痛みなのか!?・・・いっ意識が持って行かれそうだ・・・)」
「みっみんな大丈夫ッスか!?」
カイトの問いかけに答えられるほどの余裕が誰にもなかった。
「ごふっ!」
元々体の弱いセリアに至っては、口から血を吐いてしまっていた。
次第に痛覚を感じられなくなっていき、誠児達は暗闇に吸い込まれるように意識を失ってしまった……。
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意識を失ったマイコミメンバー達の脳裏に、ある映像が映写機のように投影された。
それは、夜光が心の中に封印していた忌まわしき記憶。
”本当の彼”を抑え込んでいる壁となっている記憶。
闇魔刀の力で間接的に命を分け与えたマイコミメンバー達の心に流れてきた夜光の心の記憶だった。
夜光「作者の奴。また妙な事を始めやがって・・・」
誠児「まあ、本人の希望だからな。 俺達がどうこう言う話じゃないだろ?
それに、余裕があれば本編も進めるって言ってたぜ?」
夜光「ろくに更新日時を守らなかった作者に余裕なんてできると思うか?」
誠児「でも・・・そろそろ年末だし、時間くらいできるんじゃ・・・」
夜光「休日の大半を無駄に寝過ごすような人間だぜ? 信用できるかよ」
誠児「気持ちはわからなくもないな・・・」
夜光「まあ、長い休暇だと思って、期待せずに待つとするか・・・」
誠児「・・・他人事のように言うけど、過去話もお前が主人公だってわかってるよな?」




