悪魔の子
すいません。
今日で今週でゴウマの回想を終わらせるつもりだったんですけど、ちょっと家の方でトラブルがあtって、書ききれませんでした。
いつもの更新日に終わりたいと思います・・・これ何回目だっけ?
認識が薄いために、周囲から非道な扱いを受ける障害者達。
絶望している彼らの力になろうと、ルビはゴウマ達の協力を得て、支援施設【ホーム】を設立した。
さらには、ミスト対策のための装置、アストの量産にも、力を注ぎ始めていた。
順風満帆な毎日を送る中、ゴウマとルビがホームに向かうその道中、馬車の窓から1人の少年の姿が、ルビの視界に入った。
「どうしたんだ?ルビ。 窓から何か見えたのか?」
「あそこにいる男の子・・・ホームの相談窓口でお母さんとよく見かけているんだけど・・・」
ルビはどんな時でも、会話をする際は”必ず相手の目を見て話す”ことを、自分や家族、ホームのスタッフ達にも日頃言い聞かせている。
そんなルビが、ゴウマと目を合わさず、外を見たまま話している。
ゴウマは何か良くないものを感じ、ルビが見る外の世界に目をやる。
「なんだ?あの子・・・傷だらけじゃないか・・・」
ゴウマの視界に映ったのは、馬車から数メートル離れた住宅の影にうずくまる銀髪の少年。
整った顔は痣だらけで、Tシャツの袖から見える少女のような美しい白い肌にも刃物で斬られた切り傷が複数ある。
そこへ、同年代くらいの少年3人が、少年の元に駆け寄る。
1人目はガタイの良いガキ大将のような風貌の少年(以下大将)。
上半身は真ん中がパックリと開き、うっすらと浮き出ている腹筋を見せびらかすような服装をしている。
2人目は丸坊主で目つきの悪い、タンクトップ姿を着た少年(以下丸坊主)。
漫画の不良がそのまま飛び出してきたような風貌だ。
3人目は眼鏡を掛けたガリ勉風の少年(以下メガネ)。
ほかの2人とは違い、服装はサラリーマンのようなカッターシャツと黒いズボン
カッターシャツに関しては、最上部のボタンまでしっかり閉めている。
3人共、タイプは若干異なるが、うずくまる少年に向ける目には憎悪に似たおぞましい物は共通で宿っている。
「!!!」
うずくまる少年が顔を上げ、自分を見下げる3人に目が合うと、地面の砂を右手に取れるだけ掴み、3人に向けて投げつけた。
「「「うわっ!!」」
3人が砂で目を眩ませた瞬間、少年はその場から駆け出し、路地裏に逃げて行った。
「おいっ! 待てゴラッ!」
「逃がすな! 追え!」
3人はすぐさま少年の後を追って路地裏に向かって走り出す。
「!!!」
「ルビ!!」
尋常とは思えない彼らの様子に、ルビは無意識に馬車から降り、走り出していた。
ゴウマも馬車を降り、ルビを追って走り出すが、驚いた拍子に固まってしまった一瞬の遅れが、予想以上にルビとの間隔を広めてしまった。
・・・それが、ゴウマとルビの運命を狂わせる最後の歯車だった。
「ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・」
「待ちやがれ!!」
走るにつれ、徐々に息の量が上がり、並行して速度も落ちていく少年。
元々体力がないため、走るのはギリギリ人並みレベル。
その上、体中の痣や切り傷から感じる痛みが少年の速度をさらに軽減させてしまう。
「オラっ!!」
「うっ!」
追ってきた大将が、後ろから少年の背中にタックルを当てた。
少年はたまらずその場で倒れてしまった。
大将は逃げられないように、少年の背中を踏みつけて体重を掛ける。
両手を地面につけ腕に力入れるが、体格の差で少年は体を起こすことができなかった。
「手間を掛けさせやがって」
続いて追ってきた丸坊主とメガネも少年を包囲する。
「もう逃がさねぇぞ! この悪魔野郎!!」
丸坊主は倒れている少年の顔を踏みつけるばかりか、ぐりぐりと動かしてさらなる痛みと与える。
「ぼっ僕は悪魔じゃない・・・」
丸坊主の足に耐えながら、少年は絞り出すような声で反論するが、それが気に入らないと言わんばかりに、丸坊主は少年を踏みつけている足にさらなる力を加える。
「嘘をつけ! 僕は本で読んだんだぞ! 悪魔が化けた人間は、君のように突然怒って暴れ出す頭のおかしい人間だって! ママもお前が悪魔だって言ってたんだぞ!」
先ほどの全力疾走が響いているのか、メガネの息はかなり上がっていた。
だが、少年を見下すような冷たい視線だけはやめなかった。
「お前みたいな悪魔は俺達が退治してやる!!」
その言葉を合図に、3人は少年に殴る蹴る等の暴行を加え始めた。
悪魔と呼ばれる少年は、物心ついた頃から感情がかなり不安定で、ふとしたきっかけで怒りが爆発し、時には大暴れすることもある。
そのため、周囲からは悪魔が取りついていると言われ、それを真に受けた3人が悪魔退治と言う名のいじめを行っていたのだ。
少年の痣や切り傷も、もちろんこの3人が付けたもの。
「くっ!」
「いってぇぇぇ!! 何しやがる!!」
少年は最後の抵抗で、大将の腕に思い切り噛みついた。
だが、あっさりと振り落とされ、再び地面に突っ伏してしまった。
「この悪魔野郎・・・もう許さねぇ!!」
大将はポケットからサバイバル用の小型ナイフを取り出し、足元の少年に刃先を向ける。
「ちょっちょっと! さすがにそれは・・・」
「やっちまえ! 悪魔を殺してしまえ!!」
ナイフと言う凶器を目の当たりにし、メガネは躊躇を促すが、丸坊主は殺害を希望する。
「お前みたいに人間を傷つけるような悪魔は生きてちゃいけないんだ!・・・死んじまえ!!」
大将がナイフを背中目掛けて振り下ろした瞬間、少年は死を覚悟した。
だが次の瞬間!!
「やめて!!」
駆け付けたルビが少年を守ろうと無意識に彼の体に覆いかぶさったのだ。
大将は勢いをつけてしまっているため、途中でナイフを止めることができず、そのままナイフがルビの背中に突き刺さってしまった。
刺し傷からは血がにじみ出し、ルビはそのまま意識を失ってしまった。
「ひっ!!」
”人間”を刺してしまった大将は罪悪感に見舞われ、腰が抜けてその場で尻餅をついた。
「ねっねぇ! この女の人、ルビ女王だよ!」
恐る恐る刺されたルビの顔を確認したメガネが2人に向かって叫ぶ。
「おっおい! じゃあ俺、女王を殺したのかよ!!」
「何やってんだよ! どうすうだよこれ!」
「わっわざとじゃねぇよ! おっ俺は悪魔を退治しようと・・・」
幼い少年達とはいえ、現女王をナイフで刺したとことは謝って済む話ではないことは理解できていた。
「ぼっ僕は関係ないから!!」
「おっ俺だって関係ない! 刺したのはお前なんだからな!」
責任を大将に押し付け、丸坊主とメガネはその場から逃げ出してしまった。
「おっおいお前ら!」
刺した本人である大将も、罪の意識に耐えられずその場から逃げ出してしまった。
「ルビ!!」
3人と入れ違いに、ゴウマがルビの元に駆けつけた。
ナイフを刺されているルビに駆け寄り、ゴウマは彼女を介抱して呼びかける。
「ルビ! ルビ! 返事をしてくれ!!」
「ご・・・ゴウマ・・・」
ルビの意識がわずかに戻った。
目はうつろで、体もぐったりしたままだったが、唇だけはかすかに動かすことができた。
「るっルビ‼大丈夫か!? すぐに医者の所に連れて行くから!もう少しだけ頑張ってくれ!」
「あの子は・・・」
ゴウマは一瞬、横で放心している少年に目を向ける。
「大丈夫なのか?」
少年はビクっと肩を震わせ、言葉を出さず、静かに頷いた。
「大丈夫だ。 ルビ」
「よかった・・・ごめんなさい。 勝手なことをしてしまって・・・」
「謝るな。 お前は悪くない!」
「・・・ゴウマ。 もし。私に何かあったら、子供達を・・・ホームを・・・お願い」
「バカなことを言うな! お前は死んだりしない! 家族を置いて死んだりしない!」
「・・・そうよね。 私には、愛するゴウマが・・・大好きな家族が・・・いるものね・・・」
「そうだ! この傷を治して、また家族で楽しく過ごそう!」
「・・・えぇ。 これからも幸せに・・・」
ルビはそこで再び意識を失ってしまった。
その後すぐ、ゴウマとルビが乗っていた馬車の御者が数名の騎士団を引き連れてゴウマ達の元に駆けつけた。
ゴウマとルビが路地裏に入った後、たまたま近くを巡回していた騎士団達に出くわし、軽く事情を説明して付いてきてもらったのだ。
ルビはすぐさま騎士団達の手で近くの病院に運ばれ、緊急手術を受けた。
・・・だが、その結果もむなしく、ルビは息を引き取ってしまった。
「嘘だ・・・うっ・・・うわぁぁぁぁぁ!!!」
ルビの死を目の当たりにしたゴウマは、壊れたラジオのように、ただただ泣き叫んだ。
そんな彼の脳裏に浮かぶのは、愛していたルビの笑顔だけだった。
数日後、ルビの死が大々的に報じられ、国民達は深い悲しみに涙した。
セリアとセリナも母の突然の死に大きなショックを受け、自室に引きこもってしまった。
その後、騎士団の懸命な調査によって、ルビを刺した大将や、及び仲間である丸坊主とメガネが連行された。
大将は「女王を殺す気なんかなかった!」とルビを故意に殺害してはいないと主張している。
「本当に申し訳ありませんでした・・・ですが、あの子達は未来ある子供です。
きちんと今回のことを注意しますから、どうか許してください」
3人の親はこのように謝罪の弁を述べるものの、我が子を擁護する言葉も付け加えていた。
「本当に私の子が刺したのですか? そこにいたもう1人の少年が刺したんじゃありませんか?
あの子はいつも訳のわからないことで怒り出しますから・・・それで女王様も殺したんじゃ・・・」
大将の親に至っては、証拠がないことを盾にして、少年に罪をかぶせようとしていた。
だが、大将自身が自白しているので、その主張は通ることはなかった。
そして、裁判の結果……。
普通ならば、女王の殺害は間違いなく極刑だが、実行したのがまだ幼い子供であることと、殺意がなかったと言うことが証明され、極刑にはならなかった。
だが罪が重いと言うことには変わりないため、3人には国外への永久追放を言い渡された。
無論、親達も連帯責任と言う名目で、共に追放となった。
親達は内心、嫌がっていたが、国の判決に逆らう訳もいかず、渋々了承した。
「(ふざけるな! 子供だからなんだ! あいつらがルビを殺したのは事実だろう!!
それなのに、追放だと!)」
国外とはいえ、ルビを殺した子供達がのうのうと生きていることに、ゴウマは強い怒りを覚えた。
裁判の結果はあくまで裁判官が決めることであって、いくら国王であるゴウマでも、独裁国家ではないディアラット国で極刑を執行させることはできなかった。
「(私は絶対に認めない!!)」
国外追放当日……。
夜の闇に紛れて、大将達は自分達の親と共に国を出ようと門まで歩いていた。
そこへ1つの人影が立ちふさがる。
「なっなんだお前は!?」
彼らの目の前にいたのは、闇鬼を身に纏ったゴウマであった。
手には城の警備兵から盗んだ剣が持たれていた。
ゴウマはルビを失ったショックから、ミストに支配されかけていた。
闇鬼を身に着けて抑えようとするが、あまりにも強力なミストであるため、闇鬼の姿のまま、自らの強い殺意に従ってしまっていた。
「お前達に生きる資格はない・・・」
「ひぃ!! バケモノ!!」
闇鬼に腰が抜ける母親達と子供達。
父親達は勇敢にも、落ちていた木の棒で闇鬼に殴り掛かろうとした。
「どけっ!!」
『うわっ!!』
だが、そんな攻撃が闇鬼に通じるはずもなく、軽いパンチで倒れてしまった。
闇鬼は大将に近づき、剣の先を向け、はっきりとした殺意を現わす。
「たっ助けて! パパ! ママ!」
大将の叫びもむなしく、、誰1人、恐怖から動くことができないでいた。
「お前には生きる資格はない! あの世でルビに謝れ!!」
ゴウマは剣を振り上げ、勢いよく振り下ろそうとした・・・その時!!
「やめろ!!」
ゴウマの後ろから静止を求める声が轟いた。
ゆっくり振り返ると、そこにいたのは……。
「・・・ウィン」
「兄さん・・・やめろ・・・」
ハナナ「うぅぅぅ・・・痛い」
きな子「ハナナ様どないしたん? 腕なんか抑えて」
ハナナ「例のワクチン接種に行ってきたんです」
きな子「必要ないやろ? いろんな意味で・・・」
ハナナ「世の中いつ何が起きるかわかりませんから」
きな子「そもそもワクチンって女神に効くんかいな」
ハナナ「やってみないとなんとも・・・」
きな子「っていうか、よくワクチン打てたな。 予約とか無理やろ?」
ハナナ「そこは大丈夫です。 住民票とか接種券とか、必要なものは全部偽造したけど、バレませんでしたし」
きな子「・・・えっ?」
ハナナ「はい?・・・」




