家族への信頼
毎度のことながら遅れてすみません。
今年も色々ありましたが、来年もマインドブレスレットをよろしくお願いします。
では良いお年を~。
豹変した夜光の猛攻で川に落とされたアスト達。
残されたライカ、ルド、キルカの3人は乱れる心を静め、夜光に再度武器を向ける。
「あんた、自分が何をしたかわかってんの!?」
セリア達を躊躇なく攻撃した挙句、川底へ突き落した夜光に対し、ライカは怒りよりも深い悲しみを感じていた。
目の前の事実を否定してほしいという願いを込めて夜光に問いかけるも、返ってきたのは耳を疑う返答であった。
「俺が今理解しているのは、お前らが敵だという認識だけだ・・・そして、残りは3人」
夜光は闇双剣の刃先をライカ達に向け、追い詰めるかのようにゆっくりと歩き出す。
その光景を目の当たりにして、ルドは首を横に振りながら「・・・やめてくれ」と涙の混じった声で懇願するかのような声を呟く。
「はぁぁぁ!!」
ほとんど戦意を喪失している2人とは違い、キルカは超スピードで攻撃を仕掛ける。
夜光は真正面から闇双剣で薙ぎ払うが、スピードが勝っているキルカには当たらず、空を斬るだけであった。
周囲を縦横無尽に動き回り、夜光を翻弄すると同時に、攻撃を隙を伺うキルカ。
「・・・」
案の定、夜光はキルカの動きを捕えることができず、首を左右に動かすだけで立ち往生してしまう。
「(いけるっ!)」
この機を逃すまいと、キルカはエクスティブモードを起動し、夜光の胸の急所を狙う。
キルカだけでなく、ライカとルドもこの攻撃は決まったと確信していた。
「何っ!?」
完璧に決まったと思われたキルカの攻撃を夜光は闇双剣の刃の表面を盾のようにして、キルカのトーテムを受け止めた。
夜光は口元を緩めせて「ワンパターンなんだよ、お前」とキルカを嘲笑うかのような言葉を口にする。
確かに夜光はキルカの動きを捕えてはいなかったが、攻撃に転じる一瞬の隙は見逃さなかった。
しかし、防がれた原因はそれだけではない。
キルカは自身の攻撃力の低さを補うために、夜光の急所ばかりを狙いを定めていた。
それゆえ、彼女が攻撃するポイントは、自然とほぼ同じ位置となってしまいる。
先ほどの受けたキルカの攻撃で、夜光はそれを直感的に感づいたため、とっさにガードすることができた。
「失せろっ!!」
夜光はガードして止めていたトーテムを弾き飛ばし、もう一方の闇双剣でキルカに渾身の斬撃を浴びせた。
「あぐぁっ!!」
キルカは衝撃で後方に吹き飛ばされ、城壁に体を強く打ち付けてしまった。
「あっ・・・」
それが決定打となり、キルカは意識を失い、エモーションも強制的に解除されてしまった。
「「キルカ!!」」
ライカとルドがキリカに駆け寄り、彼女の安否を確認する。
息はあるが、頭から出血しており、体には数か所の痣ができている。
医者ではないライカとルドでも、キルカがかなりの手傷を追っていることは確認できた。
「まとめて始末してやる」
夜光は再びエクスティブモードを起動し、全身から黒いオーラのように具現化した精神力があふれ出し始めた。
「くたばれっ!!」
夜光がその場で2本の闇双剣を振り下ろしたと同時に、闇双剣から黒い衝撃波が、ライカ達目掛けて走り出した。
技のスタイルだけで言うと、セリアの体力や精神力を奪う衝撃波と酷似しているが、その威力は明らかにケタ違いであった。
「くっ!」
どちらかと言えば鈍重なルドはともかく、ライカは衝撃波を避ける自信はあった。
だが生身となったキルカが衝撃波を受ければ助かれないと思ったライカは、とっさにキルカの体に覆いかぶさり、彼女の盾となろうとしていた。
それを見たルドも、キルカとライカの盾になろうと、2人の前に立ち、衝撃波を受け止めようと構えた。
「きゃぁぁぁ!!」
「うわぁぁぁ!!」
衝撃波をまともに浴びた3人はそのまま光の中に飲み込まれていった。
衝撃波が収まると、夜光の視界に映ったのは、がれきの山と化した城壁と粉々になった橋であった。
周囲を見渡すも、3人の姿はなく気配も感じられない。
「川に落ちたか、そのまま吹っ飛んだか・・・どの道生きてはいないな」
アスト達の始末を確認した夜光は、エモーションを解除した。
「よくやったわ」
するとそこへ、安全な場所で戦闘を見ていたマスクナが現れ、ご苦労様と言わんばかりに、軽く拍手を送る。
マスクナの姿を確認した夜光はすぐさま彼女の元に駆け寄り、熱い抱擁を交わした。
「邪魔なガキ共は始末した」
夜光がそう報告すると、マスクナはまるで幼子を愛でるかのように、夜光の背中を優しく撫でる。
「ありがとう。 でもあなたにはまだ頼みたいことがあるのだけれど・・・」
「お前の頼みを断る理由なんてないよ」
2人は互いを愛し合う恋人のように体を寄り付け、グレイブ城内へと入って行った。
2人が立ち去った後、がれきの山と化した城壁が突然崩れ出した。
「行ったか」
がれきの中から現れたのは、両脇にキルカとライカと抱えたエアルであった。
元々、偵察のために物陰から夜光達の様子を見ていたのだが、3人が衝撃波を受けて危機に晒された際、とっさに飛び出してキルカとライカと両脇に抱えて、がれきの中に身を隠したのだ。
すぐに隠れたおかげで、夜光とマスクナに勘づかれることはなかった。
だがルドは衝撃波によって川に落ちてしまったため、助けることができなかった。
「・・・息はあるか」
エアルはすぐさま2人の脈をはかり、2人の安否を確認した。
先ほどの戦闘でケガは負っているが、命に別状はない。
「・・・ウォーク、そちらはどうだ?」
2人の安否を確認した後、、エアルはすぐさまウォークに連絡を取った。
『落ちたショックで意識を失っているが、命に別状はない。 先ほど落ちてきた子も確保した』
現在、ウォークはセリア達の落ちた川の底にいる。
アストとの戦闘を避けてグレイブ城の潜入するため、川の水をくみ上げている城のポンプを通ることを試みた。
ポンプの中はとても人が入れるような広さはないが、体を水に変化させることができるウォークには問題ない。
ポンプ内に入ろうとした直前、エアルからの連絡で夜光がアスト達と戦闘を繰り広げていることとセリア達が川に落ちたことを聞き、放っておけなかったウォークは川で待機し、川の水を操って作ったゼリーのようなクッションで落ちてくるアスト達をキャッチしていたのだ。
「そうか。 残りの2名は今私が保護している。 ケガはしているが、命に別状はない」
『・・・キルカは無事なのか?』
娘の安否が気になったウォークが思わず口から言葉を漏らしてしまった。
エアルは少し間を開けて言葉を考えるも、「無事だ」と言う一言しか浮かばなかった。
命に別状はないとはいえ、キルカのケガは決して軽くはない。
だがウォークに言えば、彼の心に不安を与えてしまうと考えたエアルはケガのことは伏せて置いた。
『わかった。 そちらのことは頼む』
そういうと、ウォークは通信を切った。
キルカの心配はしているが、エアルのことを信頼しているため、冷静さを失うことはなかった。
通信を終えたエアルは、急いでシャドーブレスレットのヒール機能でキルカとライカの地領を開始した。
これはシャドーブレスレットにしかない機能で、原理は不明だが、精神力を回復魔法のように使用することができる。
以前も、この機能でスパイアに負傷を負わされたアスト達を助けたことがある。
「・・・」
精神を集中し、シャドーブレスレットからまばゆい光がキルカとライカの体を優しく包み込む。
光を浴び続けていると、キルカとライカの傷や痣が徐々に消えていった。
「・・・うっ!!・・・俺はいったい・・・」
夜光に腹部を蹴られて意識を失っていた誠児が目を覚ました。
くらくらすつ頭を抑えながたゆっくりと立ち上がる誠児。
不思議な事に城庭の真ん中で倒れていたはずの誠児は、なぜか城庭の隅で横になっていた。
その上、腹部には全く痛みを感じなかった。
立ち上がった彼の目に映ったのは、変わり果てた城庭と見た瞬間、意識を失う前の記憶が蘇った。
「そうだ!夜光!!」
一気に頭のふらつきが吹き飛んだ誠児は周囲を見渡す。
次に視界に映ったのは、倒れているキルカとライカ、そして2人に手をかざしてまばゆい光を浴びせている男であった。
「キルカ! ライカ!」
おぼつかない足で2人の元に駆け寄り、膝を付いて心配そうに顔を覗く。
そんな誠児に、エアルはこう語り掛ける。
「あまり深く心配なさらないでください。 2人共命に別状はありません。
ケガもまもなく消えます」
言い終えると同時に光が止み、2人のケガは嘘のように完治していた。
「この2人以外の方々はどこに行ったんですか?」
キルカとライカ以外の顔見知りが見当たらないことに気付いた誠児が、エアルに問い掛ける。
「他の方々はこの川に落ちてしまいましたが、幸い無事だと言う連絡を受けました」
初対面だと言うのに、誠児はなぜかエアルの言葉が信用できた。
なぜ信用できるかはわからないが、今の誠児にはそれより気がかりなことがあった。
「夜光は!?・・・いえ、ここで暴れていた鬼はどこに行ったのかご存じですか?」
「彼なら城の中に入って行きました。 マスクナという女と一緒に」
「マスクナさんと?」
豹変してアスト達に剣を向けた夜光がマスクナと一緒にいることが謎であったが、誠児がやるべきことは1つしかなかった。
「・・・夜光」
誠児は城の中に向かって歩き出そうとするが、やはりまだ足元がおぼつかず、つまずいて転んでしまった。
だが誠児は諦めずに手を使って這うように前進する。
その様子を見ていたエアルが「なぜそこまでするのです?」と問い掛ける。
「俺は決めているんです。 どんなことになっても、夜光を守るって・・・」
「なぜです? 彼は仲間であるあなた方に剣を向けたのですよ?」
それを聞いた瞬間、誠児は強い口調でこう返した
「あいつは理由もなくあんなことをするような人間じゃない!! 絶対に何かあったんだ!!
俺はそう信じている!!」
「なぜそこまで・・・」
「・・・あいつは俺にとって、たった1人の家族だから・・・」
誠児の夜光に対する思いを聞いたエアルは、一瞬だけ優し気な笑みを浮かべ、誠児の元に歩み寄った。
「わかりました。 ですが、無理はいけません。 お気持ちは察しますが、ある程度調子が戻ってからでも十分間に合うでしょう」
エアルは誠児に肩を貸して起き上がらせると、そばに落ちていたがれきのかけらに腰を掛けさせた。
しかし、夜光への心配が顔ににじみ出ていた誠児に対し、エアルは安心させるかのような優しい声でこう言う。
「これも何かの縁です、 私もご家族の捜索に協力しましょう」
「・・・あなたは一体・・・」
「私の名はエアル。 ただの通りすがりです」
夜光「もうすぐ年明けか。 早いもんだな」
誠児「いいのか? 本編無視してここに出てきて」
夜光「構うかよ。 主人公の俺が年内最後の後書きに出ないでどうする!?」
誠児「それにしても長いな。 この話」
夜光「今でだいたい6、7割くらいは書き終えてるんだろ?」
誠児「この長さで? 一体いつまで書く気なんだ?」
夜光「話が終わるか作者がエタるか、どっちかしかないな」「
誠児「後者はやめてほしいな」
夜光「まあとにかく、来年もこの調子でやっていくので」
誠児「それではみなさん」
マイコミメンバー達『良いお年を~』
夜光「お前らどっから出てきた!?」




