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9人目のメンバー

最近めっきり外出することがなくなりました。

思い切って外に出てみたのですが、ものの数分で汗だくになり、やっぱち家の中が一番だと思うインドア派な私・・・。

レオスとアストの再戦は、数々の経験と仲間を信じる心で成長したアストが圧戦。

ついにレオスの膝を地面につけることができたと思った矢先、レオスは最後の手段として【エクスティブモード】と発動させた。

アストの力を遥かに超える力で、アストを窮地に追い込むレオス。

さらにアストが破損したため、機能の一部が使用できなくなってしまい、ゴウマ達は支援することさえできなくなってしまった。


「アスト全機、装甲強度40%ダウン!! 精神力も徐々に低下していきます!!」

「転送システムと通信機能は!?」

「ダメです!! 正常に機能しません!!」


 メインルーム内では、ゴウマとスタッフ達のけたたましい声が飛び交っていた。

そうさせるのは、モニターに映るアスト達の映像である。

レオスの攻撃によって、立ち上がることすら困難になっているほどのダメージを負いながらも、決して逃げようとせず、レオスに向かっていく。

ここで止めることができなければ、ビスケットや孫のココアまで殺されると思っている彼らにとって、逃げるという選択肢はなかった。


「はわわ・・・」

「えらいこっちゃ・・・」


 スタッフ達の邪魔にならないようにメインルームの片隅で、アストを見守るハナナときな子。

「きなさん。 転送システムと通信機能を直すことはできないんですか?」

懇願するような声できな子に尋ねるハナナだったが、それに対しきな子は容赦なく首を横に振った、

「無理や。 破損してるのはここのシステムやのぅで、アスト本体の機能や。 そっちを修理せんことにはどうもならん」

「じゃあきなさんが修理しに行ってくださいよ!」

「か弱いウチにあんな危ないとこ行けって言う気か!? 女神様こそ、一撃で敵を倒すチート能力を授ける!みたいなサービスしてもバチが当たらんやろ!?」

「そんなことができるなら、とっくにやってますよ!!」

「だぁぁもぅぅぅ! 使えん女神やな!!」

「何もできないウサギに言われたくありません!!」

アストのことをそっちのけで、互いに責任を押し付け合う2人。

じっとお互いを睨みつけていると、女神が突然ハッと何かの気配を感じたかのようにキョロキョロし始めた。

「なんや? トイレか?」

「違いますよ! なんか、”呼ばれている”ような気がして・・・」

気になったハナナは、きな子と共に気配の感じる方向へと歩いていく。

道中、「お化けやったらウチ逃げるで?」というきな子の薄情な言葉に怯えるものの、その足は前へと進んでいく。


「この中です」


 2人がたどり着いたのは、地下施設の保管庫であった。

ここには、アストの装甲に使用される心石やエネルギー源になる女神石の予備、アストの設計図等といった重要なものが保管されている。

そんな保管庫には、当然鍵が掛かっている。

きな子によると、壁にあるテンキーに4ケタの暗証番号を入力すれば入れると言う。


「番号やったらウチ知ってるで?」


 きな子はハナナの肩に乗り、テンキーに近づくと4ケタの番号を入力する。

入力後、ドアのロックは解除され、2人は中に入った。

保管庫には部屋中を埋め尽くすほどの金庫が設置されており、爆弾や銃弾でも壊せないほどの強度を持っている。

その上、1つ1つの金庫には違う暗証番号が掛けられており、知っているのはゴウマときな子だけという。

そして、保管庫の中央には、小さなテーブルがあり、その上にはトランクダイヤル錠の掛かった黒いトランクが置いてあった。


「・・・これです。 私をここへ導いたのは」


ハナナの言葉にきな子は「なんやて!?」とすっとんきょうな声を上げた。

「きなさん。 これには何が入っているんですか?」

「ウチが作ったマインドブレスレットが入っているんや。 今は機能停止にしてるはずやねんけど・・・」

「きなさん。 開けられますか?」

きな子は無言で頷くと、ハナナの肩からテーブルに飛び移り、トランクのダイヤルを回す・・・

ダイヤル錠を解除し、きな子がゆっくりトランクを開くと、その中には2つのマインドブレスレットが

光を発し、点滅していた。

「どないなってんねん・・・機能停止してるマインドブレスレットが勝手に起動するなんて・・・」

状況が飲み込めないきな子が頭を抱えていると、ハナナがマインドブレスレットを手に取った。

「・・・」

ハナナは語り掛けるように、じっとマインドブレスレットを見つめる。

その表情は、いつものアホ顔ではなく、女神のような真剣な顔つきになっていた。

「女神様。 なんかわかるんか?」

「・・・マインドブレスレットから、『仲間の元に行きたい』、『戦いたい』という思いを感じます」

ハナナが言うには、レオスと戦っている夜光達の危機を感じ取ったアスト達が、女神石を通して、ハナナをここへ導いたのだと言う。

その理由は、ハナナの力を使って”主となる者”の所へ行くためだと言う。


「主って、ミヤのことかいな」


 ハナナが持っているマインドブレスレットの1つは、アストの実験時にミヤが使用していたマインドブレスレット。

ミヤに受け取りを拒否された後、ゴウマがここに保管していたのだ。

「でももう1個のマインドブレスレットの主って誰や? ウチとゴウマちゃんが予定してた追加メンバーは2人のはずやで?」

きな子の言う通り、影との戦力差を埋めるために製作を予定していたアストは2機。

もう1機は”とある理由”できな子が作ったアストを、制御するためにとりあえず作った物。

持ち主もいなければ、使用した者もいない。

それが反応していると言うことは、近くに装着者としてふさわしい人物がいると言うことである。


「女神様。 どないするんや?」

「主の元に飛ばそうと思います。 もしこの2人方が加われば、夜光さん達を助けることができるかもしれません」


 難しい顔をしつつ、「そうやな」とハナナの決断に賭けることにした。

ハナナは再び目を閉じると、マインドブレスレットに語り掛けるようにこう言う。


「女神、ハナナの名において命じます。 その心に映る戦士たちの元へ、希望と共に飛び立ちなさい!」


 次の瞬間、点滅していた2つのマインドブレスレットは、まばゆい光に包み込まれ、保管室から勢いよく飛び立った。


「女神様! 追いかけるで!」

「はい!」


 ハナナときな子は、マインドブレスレット内にある女神石の反応を頼りに、その場から駆け出した。


 同時刻、ホーム内にある宿泊部屋。

ここは身寄りのない子供やなんらかの事情で家に帰ることができない人を一時的に泊める部屋だ。

そこに泊まっていたのは、ミヤとレイランであった。

帰る場所がないレイランが、ここに宿泊することになったので、ミヤも一緒に泊まることにした。

レイランはミヤに寄り添って、一緒に本を読んでいた。

それはまるで、絵本を読み聞かせる母とお話を聞きながら眠ろうとしている幼子のような光景であった。

「ねえ、お母さん。 本当によかったの? 病院に戻らないで」

レイランがふと尋ねると、ミヤはレイランの頭をなでながらこう返す。

「いいのよ。 病院にいたのは、チップの死を受け入れたくない、単なるわたくしのわがままなんだから。

なにより、あなたを1人にさせる訳にはいかないわ。 明日にでも、退院の手続きを取って、どこか2人で暮らせる家を探しましょう」

「・・・うん」

2人が再び本を読み進めようとした時であった。

まばゆい光が飛来し、2人の左腕を包み込んだ!

「なっ何!?」

「レイラン!!」

突然のことで、パニックになる2人。

光はすぐに収まったが、2人が本当に驚いたのは、次の瞬間であった。

「なっ何これ!?」

「どっどうしてこれが・・・」

2人の左腕に付いていたのは、まぎれもなくマインドブレスレットであった。

突然マインドブレスレットが現れたことにも驚いたが、ミヤは何より驚いたのは、レイランの腕にもマインドブレスレットが付いていたことだ。

それが何を意味するのか。

ミヤには心当たりがあったが、受け入れることはできなかった。

2人が放心していると、マインドブレスレットのカバーが勝手に開き、画面に映像が映し出された。


「「!!!」」


 マインドブレスレットに映し出されたのは、レオスに苦戦するアスト達の姿であった。

レオスの攻撃を何度も受け、アスト体はまるで悲鳴を上げるかのようにあちこちで火花が散っていた。

無論、装着者である夜光達も、立ち上がることすら困難になるほどのダメージを負っている。

そんな状態であるにも関わらず、アスト達はレオスに向かっていく。

アストの攻撃は命中するが、レオスは全くひるまずにカウンターを繰り出す。

ミヤはもちろん、戦闘経験のないレイランも、アストがほぼ負けているということが映像から理解できた。


「ミヤさん!レイランさん!」


 そこへ勢いよく宿泊部屋の扉を開けたのは、息を上げたハナナであった。


「女神様。 どうしてここに?」


 ミヤがおそるおそるそう尋ねると、息を整えたハナナがこう返す。

「マインドブレスレットを主の元に届けに来ました」

その瞬間、ミヤは背筋が凍りついた。

状況が全く読めないレイランが、「どういうことですか?」と尋ねると、きな子がこう返す。

「マインドブレスレットの映像でわかると思うけど、今アストは絶体絶命の危機に晒されとる。

このままやったら全滅も時間の問題や。 2人の手首についているマインドブレスレットは、仲間を助けたいと訴えとるんや。 ”主と一緒に”」

きな子の最後のワードが引っかかったレイランが「あっ主って・・・」と思わず言葉を詰まらせてしまった。

その先を言うことが恐ろしかったからだ。

だがハナナは、意を決してこう告げる。

「信じがたいですが、マインドブレスレットが証明しています・・・レイラン スペルビアさん。 あなたこそ、アストに選ばれた9人目のメンバーです!」

「「!!!」」

ハナナの発した言葉で、ミヤとレイランは一瞬耳を疑った。

だがマインドブレスレットがレイランの手にある以上、それは事実と受け入れざる終えない。


 動揺するレイランを下がらせたミヤがハナナに詰め寄る。

「お待ちください女神様! 何の関係もないレイランに、戦いを強いるつもりですか!?」

「しっ強いるつもりはありません。 ただ私は事実を伝えただけで・・・」

「わたくしは母として、レイランを守ると決めたんです。 そのレイランに危険な戦いをさせるなんて、反対です! それに、わたくし自身もアストに入ることは断ったはずです!」

ミヤの迫力に負け、「そっそれはその~」と言葉を濁してしまうハナナ。

見かねたきな子が、ミヤをなだめるようにこう言う。

「勘違いせんといて。 ウチらはマインドブレスレットをあんたらに届けただけや。 戦えなんて言う気はない。 ただアストのみんなが今どんな状況かは、わかっとるやろ?」

「「・・・」」

ミヤとレイランは、再びマインドブレスレットの映像に目をやる。

相変わらず押され気味なアスト。

ダメージが大きいのか、何名かは倒れたままう動かない。


「今みんなを助けることができるのは、あんたらしかおらんって訴えてんねん」


 きな子の言葉に反応するかのように、マインドブレスレットが再び点滅した。

ミヤとレイランの心は揺れ動くが、やはりせっかく親子2人で生きて行こうとしているのに、危険な戦いに身を置くことなどできないと思ってしまう。

だがそんな2人の思いを変える出来事が起きた。



『おらぁぁぁ!!』


映像内でレオスが闇鬼の顔に向かって、力強く金棒を薙ぎ払った。


 『ぐはっ!!』


 闇鬼は数メートル飛ばされ、地面に叩きつけられた。

ルドとセリアが急いで駆け寄ると、闇鬼のマスクが砕かれ、装着者である夜光の顔が見えていた。

『うっ・・・』

夜光は頭から血を流し、身動きが取れなくなっていた。

そこへ追い打ちをかけるかのようにレオスが突進してきた。

ルドとセリアが迎え撃つものの、簡単に跳ね飛ばされてしまった。


『おい、どうした兄ちゃん。 もう終わりか?』


レオスが倒れている夜光の首を左手で掴み、首を絞めた。

『あっ・・・あっ・・・』

抵抗はするものの、夜光にはレオスの手を振り解くほどの力は残っていない。

『早く逃げないと死ぬぜ?兄ちゃん』



「おじさん!」

「くっ!!」


自分達に親子としての人生を歩ませてくれた夜光が今殺されそうになっている。

2人に迷う暇などなかった。

いや、迷ってはいけないのだ。

ここで迷えば、身勝手な自分から変わることはできない。


「・・・お母さん。 ボク、おじさんを・・・みんなを助けたい!」

「・・・わかったわ。 でも、わたくしも行く。 どこへ行っても、あなたはわたくしが守る」


 2人が固く手をつなぐと、マインドブレスレットから大きな光が発せられ、そのまま2人を包み込んだ。


きな子「なあ、女神様。 前から聞きたかったんやけど」

ハナナ「なんですか?」

きな子「マインドブレスレットが飛んで行く前に言う、あの呪文みたいなのはなんなん?」

ハナナ「あれですか? 気分を高めるために言っているだけですよ?」

きな子「なんやそれ? じゃあ別に言わんでもええんか?」

ハナナ「はい。 なんか魔法みたいでかっこいいでしょ? まあ、実際は私の精神力なんですけど」

きな子「(ウチなんでこんな女に仕えてるんやろ・・・)」

ハナナ「そういう訳で、次回の更新は7月13日です! お楽しみに~」

きな子「こんな宣伝あったか?」

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