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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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7 知られた弱点 矢が当たらないんです

 カラコは狩猟ギルドでアイテムを換金した。これで一気に俺より金持ちになったようだ。しかし俺は狩りに参加してなかったせいか、全くドロップを得られてない。だけど、共有財産だからね! 実質俺のモノ!

 ちなみに狩猟ギルドでは草の名前はわからなかった。そりゃそうだ。

 雑貨屋ならわかるだろうと言われたので後で行くつもりだ。


 そして俺たちは西通りの武器屋に来ていた。街には東西南北に1軒ずつの武器屋があるが、どこも売っている製品は変わらない。

 さっき値切ったばかりだから少し嫌な顔をされたが気にしない。どうせただのNPCだ。


「脇差しが安いですね……」

  二刀流を持っているから2本目を買うのだろう。

「防御用1本と攻撃用の1本か。金がなかったら貸すぞ」

 俺がそう言うと、カラコはおかしなものを見るような目で俺を見た。


「わかってませんね。ここはゲームですよ? 二刀流を極めれば両手に大剣を持つことだって可能なはずです」

 本人がそれを目指すなら良いのだが。

「確かに小柄な少女がでかい武器を持つというものはロマンがある。しかし小柄ながら相手の攻撃を防ぎ、隙が見えた時にもう片方の武器でズバッとやるのも……」


「相手が人ならそれでもいいんですけど、これから大きいモンスターとかも出てくると思いますし、受けるのは無理があるかと。私はスピードアタッカーを目指しているので」

 なるほど。スキル構成が終わってるくせにまともなことを言う。

 カラコには純粋なアタッカーでいてもらおう。


 スピードアタッカーというと盾役がいりそうな感じがするが、また必要になったら募集をすればいいだろう。


「脇差し2本ください」

『まいどありー』

 カラコの腰に脇差しが2本装備される。なぜ職業を侍にしたのだろうか。忍者の方があっていると思うのだが。

「第二職業は暗殺者にするつもりです」

「心を読まれた!? てか第二職業ってあったんだ!」

 何なんだこいつって顔をされたから別に心を読んだわけじゃなさそうだ。

「私よりまともなスキル構成をしてるのに、そんなことも知らないんですね」

 なんか馬鹿にされてる気がする。てか自覚してたんかい。


「忍者もいいのですが、忍者は魔法を使う暗殺者なので種族的に向いてないんですよね。敏捷と筋力が高くなるのが暗殺者。敏捷と魔力、精神力が高くなるのが忍者ですね」

 なぜこの人は戦えないスキル構成をしていたのだろうか。とても不思議だ。

「っていうより職業ってステータスに補正入るの?」

「あ、はい。私の場合は筋力と耐久力に入っていると思います」

 不思議だ。狙撃手なのになぜ俺の器用さは低いのだろうか。


「シノブさんの場合、何に補正が入るんでしょうね。狙撃手というと……何でしょうか。器用値でしょうか」

「動いているウサギに弓が当たらないぐらい器用さは低いです」


 何か可哀想なものを見る目で見られた。武器屋の店主も俺の話を聞いて微妙な顔をしている。


「いや、俺狙撃手だから。相手に気づかれてない状態で狩るのが基本だから。一対一は専門外なんだ」

 やめろ! NPCのくせに俺のことをそんな目で見るな!



「確か隠密ってスキルありましたよね。持ってますか?」

「すみません。色々やりたくてとってません」



「レベリングに行きましょう」

 カラコは感情のこもってない声で俺に宣告した。

「え、ちょ、次ボスって……」

「ウサギも1人で倒せないような人に、ボスなんか倒せるわけ無いでしょう」

 ずるずると引きずられていく俺にはひたすら店主の目が痛かった。

 次来るときには絶対値切ってやる。

 ただの八つ当たりだけど。



「私が注意を引きつけるので、タイミングをあわせてウサギを仕留めてください」

 また戻ってきた草原でそんな無茶ぶりを要求される。



 カラコはウサギの突進を上手くかわしている。拍手をしたくなるような挙動だ。

「ウッドショット」

 当たった。当たるはずだ。

 5メートルも離れていない相手に当たらないほど器用が低いわけでもない。


 カラコが注意を引きつけてくれているので、近寄っても攻撃されない。

 戦うのが快適だ……パーティーとはこうあるべきだな。



 カラコのおかげでサクサクとウサギは狩れ、レベルも上がった。




《レベルアップによりスキル【狙撃】を取得しました》


《戦闘行動によりレベルアップしました。ステータスに5ポイント振り分けてください》

《スキルポイントが2増えました》

《戦闘行動により【火魔法Lv3】になりました》

《戦闘行動により【木魔法Lv3】になりました》

《戦闘行動により【弓術Lv4】になりました》



名前:シノブ

種族:半樹人

職業:狙撃手 Lv6

称号:魔王の守護

スキルポイント:10


 体力 :90

 筋力 :25

 耐久力:40

 魔力 :50

 精神力:40

 敏捷 :15

 器用 :40(+5)


パッシブスキル

【弓術Lv4】

【火魔法Lv3】

【木魔法Lv3】

【火耐性Lv1】

【収穫Lv2】

【発見Lv2】


アクションスキル

【光合成】【ファイアボール】【ウッドバインド】【ファイアショット】【ウッドショット】【ファイアフライ】【狙撃】





 木魔法のレベルが3になったが、新呪文を覚えるということはなかった。火魔法と必要ポイント数が違っていたからか。レベル5に期待しよう。


 そして職業レベルが5になって取得したのが、スキル【狙撃】だ。パッシブではなくアクションスキル。

 狙撃が発動すると集中力が大幅に上がる……ような気がする。対象以外の存在が希薄になり、対象の動きがより鮮明に見えるようになる。視野が狭くなるといえばいいのだろうか。

 ただし発動するのに時間が少しかかるのと、発動解除にも時間がかかるので乱戦には不向きだろう。文字通り狙撃用のスキルだ。


 カラコはレベル7である。少し前までレベル1で泣いていたのが嘘みたいだ。いや、泣いてたのは俺の記憶の中だけでか。



 そしてたまったポイントで何のスキルを取得するか、なのだが。

「隠密を取るのがプレイスタイルにあっているような気がしますけど、他になにか取りたいものがありますか?」

 今取得できるものを確認してみる。

 そして今の俺にぴったりのスキルを発見した。


 【精密操作】

 器用を上げて、精密な動作を可能にする。


 キタコレ! これの補正がどんなものかわからないが、これえ器用さの問題は解決して欲しい。

 そしたら精神力に全てをつぎ込めるだろう。


「精密操作にするよ」

「精密操作?」

 カラコは知らなかったようだ。

「生産スキルのところにある」

「……上昇値にもよりますが随分いいスキルですね。生産系のスキル一覧は確認していませんでした」

 戦闘しかやらない人は生産系スキルを確認しないのだろうか。




《スキル【精密操作】を取得しますか?》


 迷わずYESを押す。

 これで解決されるはずだ! そういう願いを託して。



《スキル【精密操作】を取得しました。残りスキルポイントは0です》




名前:シノブ Lv6

種族:半樹人

職業:狙撃手

称号:魔王の守護

スキルポイント:


 体力:90

 筋力:25

 耐久力:40

 魔力 :50

 精神力:40

 敏捷 :15

 器用 :45(+2)




 レベル1だからかなんとも言えぬ補正だ。器用さを使う作業をすればレベルが上がるのだろうか。



「どうでした?」

 カラコに無言でステータス画面を見せる。


「微妙ですね。補正率どのぐらいなんでしょう。レベル1につき+2とかだったらゴミスキルですね」

 記憶継承持ってるあんたに言われたくないよ……。

 なんかの役に立つかもしれないけどさ。


「じゃあ、あと1レベル上げて確認してみるか」

 さっさとカラコに追いつこう。




シノブ

キャラクター名は本名の一部から取った。ゴーグルを額につけた狙撃手。背中に弓と矢筒を背負っている。

全体的に灰色っぽい体をしている。高身長で髪は暗い緑色。

種族は半樹人。体力と魔力が高いことで治癒魔法を備えたタンクとしての運用が一般的な樹人で弓を使う珍しい人。案の定器用さが足りず、至近距離か魔法で拘束した状態じゃないと当たらない。

体力が多いので少々ダメージを食らっても平気。なので至近距離でも攻撃できるが別にダメージが上がったりはしない。遅い敏捷が狙撃手の補正で更に遅くなっている。しかし背が高いので歩いている分には遅くはない。

真面目で頭も良いはずだが、ゲーム内だと気が抜ける模様。

リアルでは大学生。

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