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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
27/166

26 鉱石と刀と新しい弓

タイトルを変えてみました。

特に神と関係ないと思ったので。

 プレイヤーの鍛冶師は少女だったが、NPCの鍛冶師はどうなのだろう。期待通りドワーフの爺さんであるはずだ。『ワシの認めたものにしか売らんわい!』みたいな。


 剣のマークが書いてある武器屋。その店のカウンターには正に俺が思い浮かべる立派なあごひげを蓄えた筋肉質の小さな爺さんが。これは期待できる。


「ピッケルください」

『あいよ。ありがとよ』


 お、おう。そりゃそうか。認めたものにしか売らないんだったら、潰れちゃうもんね……。


 いや、まだだ。何か、何かあるはずだ。


「お爺さん、何か今困っていることはありますか?」

『ああ、あるよあるよ。おおありだよ』

 ビンゴ。俺は内心ガッツポーズをした。これはお使いクエストだな。報酬が鉄鉱石でありますように。


「さすがシノブさんですね」

 そうだ、カラコよ。もっと褒め称えろ。


『なんかゴブリンが攻めてくるんだろ~。本当に嫌な話だな~』

 それかい!


「俺たち冒険者が死力を尽くして街をまもりますので……」

『それは頼もしい事だ』


 それだけでドワーフの爺さんとの会話は終わってしまった。




「今のイベントが終われば何か進みそうな気がしますね」

「イベント発表から5日間待たせるって運営も酷だよなー」

 予め予定を空けないといけない人には知らせてくれていいと思うが、俺のような廃人にとってはただの焦らしだ。


「準備期間という事でしょう。防具と武器を整備して、ポーション類を準備する」

「私が聞いた話だとNPCのポーション類が完売。プレイヤー達も必死になって生産しているがガラス瓶が足りず、ガラスの素材、石英が高騰しているとのことだ。そもそもガラス工を取得している人か少ないからな」

 俺はガラス瓶を持っているが売るには惜しい。確かにガラス工なんて瓶を作るぐらいしか使わなそうだしな。ガラス工を育てていた人はウハウハだろう。


 というよりヴィルゴさんがいるし、俺もカラコさんもダメージ食らうような人じゃないからポーション使わないんだけど。

 カラコさんは筋力と敏捷にしかふってないから一発食らったら死に戻りだし、俺はターゲットにされない。ヴィルゴさんは挑発のスキルを使わなくても自らに治癒魔法をかけて挑発代わりにしているほどだ。

 あれ? 俺いらない子……?



「ピッケルも手に入れたことですし、行きましょう。ゴーレムとの戦闘はなるべく回避。シノブさん、効率よりも精神力を温存する方向でお願いします」

 お、俺には魔法があるさ。でも魔法を使えるのが俺だけってのが問題になってるんだよなー。俺が魔法使いだったら、精神力と魔力を最初から上げれてたんだしなー。

 普通のゲームだったら自動で体力と精神力が上がりそうなもんだけどな。極振りはできないよってことですか。

 後、スタミナとかは何依存なのだろう。体力と筋力? このゲームにはわからないことがありすぎる。





 壁沿いをゆっくりと進みながら、俺が気になるところを発見したらピッケルで掘る。するとゴロゴロと色々な色の鉱石が出てきた。

 以外と簡単に出るな。高騰してるって言われてる石英もこんなかにあるのかな?


「シノブさん、ロックタートルです」

 ロックタートルは動かない砲台だ。砲台は普通動かないか。言い直そう。動かない戦車だ。

 硬い装甲を持ち一定間隔で岩の塊を放ってくる。当たったら土属性耐性がつくのだろうか。痛そうだから当たらないけどさ。

 ヴィルゴさんは器用に盾を使いいなしているが、カラコさんは見切ってかわしている。あれは人外レベルだ。人ほどの大きさの物が飛んでくれば誰だって恐怖心を感じるはずだが、紙一重で何気ないようにかわしている。


 ロックタートルの甲羅部分に当たってもほとんどダメージを与えられないので、頭を狙う。小さい頭だが外すことはない。

 2射目でクリティカルが発生し、ロックタートルは倒された。



《戦闘行動によりレベルアップしました。ステータスに5ポイント振り分けてください》

《スキルポイントが2増えました》

《戦闘行動により【遠見Lv4】になりました》




名前:シノブ

種族:半樹人

職業:狙撃手 Lv16

称号:魔王の守護


スキルポイント:3



 体力:90(+5)

 筋力:25

 耐久力:40

 魔力 :50

 精神力:50(+5)(+5)

 敏捷 :15

 器用 :80(+8)


パッシブスキル

【弓術Lv8】

【狙撃Lv5】【隠密Lv4】

【火魔法Lv9】【木魔法Lv6】

【毒耐性Lv3】【火耐性Lv3】

【発見Lv7】【遠見Lv4】

【精密操作Lv2】



 レベルがまだ低いものが上がったな。遠見は遠くが見えるだけで射程が伸びないのが問題だな。見えてるのに届かないとは何とももどかしいものだ。あ、このぐらいで届くかな、と思い矢を放ったのに届かなかった時など赤面ものだ。



 さて、また採掘に戻るか。

 採掘は最初から取得可能となっているが、どのぐらい掘っていれば実際に取得できるのだろうか。


 簡単に取れれば今まで取った全てのスキルが無駄になりそうだから、取れないでほしい。しかし取れたら効率があるので欲しい。二律背反だな。

 自然に取れたのが毒耐性だけというのは耐性系は取得条件が低いのか。




 その時だった。上空から急降下してきた巨大な鳥がカラコに襲いかかる。それをカラコは一歩前に進むことで回避し、再び上空に舞い戻ろうとする鳥をジャンプして斬りつけた。

 そこで大分体力を削られながらも再び空に戻る鳥。

 これが10秒以内に起こったこと。たぶん10秒。いや、もっと短いかな。とにかくカラコさん凄い。


「上空の警戒を怠っていました。気をつけなければいけませんね」

 完璧に迎撃した癖に何言ってるんだこの人は。

 しばらく空を舞っていた鳥はしばらくしたら落ちた。

 毒って怖い。それにしても毒が発動したところを初めて見た。毒刀っていうけど毒が発生する可能性は以外と少ないのか。


「バトルホークっていうみたいです。尾羽がドロップしました」

 普通は空中位置の魔物って俺が相手するんだけどな……。


 ザクザクと掘っているうちにピッケルが壊れた。


「1度イッカクさんのお店に行って足りるかどうか聞いてみましょうか」


 その後は精神力の消費を気にせず帰ったが、矢の消耗が心配です。また素材売って買わなければ。



《戦闘行動により【遠見Lv5】になりました》

《戦闘行動により【狙撃Lv6】になりました》



 俺たちが朝イッカクさんの所に行った時ワイズさんがいたというとヴィルゴさんは苦虫を潰したような顔になった。


「あいつは小さい女の子に好かれやすいんだ……ロリコンめ」

 俺もそっちの人かなと思ったことはあるけどヴィルゴさんもそう思っていたとは。

 よくよく考えればイッカクさんはドワーフだから小さいだけなのかも知れない。胸は……うん。

 体型は現実と大体リンクして違和感のないようにしているというが、例えばヴィルゴさんがドワーフになっていた場合ロリ巨乳になっていたのだろうか。

 ……ありだな。


 カラコさんがドワーフを選んでいたら、ただの幼女になっていただろう。格差社会だな。資本主義の闇を見た。しかし日本人は貧乳が多いから社会主義だと巨乳がいなくなってしまう。やはり資本主義で良かった。

 カラコさんは育ち盛りだからな。未来に期待しよう。


「私を見てため息を吐くのはやめてください。何を考えていたのかはわかりませんが」

「おっと、すまない。ワイズさんがロリコンだとしたら、カラコが攻略対象になってないのは何故だろうと思ってな」

 誤魔化せたか? いや何やらジト目で俺の事を見ている。何だ俺の格差社会の思考を読み取られたのか?


「まあ、いいです。早くイッカクさんの所に行きましょう」

 渋い顔をしていたヴィルゴさんもラビと戯れて笑顔になっていた。ヴィルゴさんとラビが戯れてるとお互いが毛玉みたいになっている。ラビが雄か雌か知らないが羨ましいやつだ。

 俺はケモナーじゃないよ。本当だよ。






「カラコさん、鉄鉱石は取れましたかー?」

「分析のスキルがなかったので、鉄鉱石かはわかりませんが」


 カウンターの上に鉱石を広げる。

「ゴミから宝石まで色々ありますねー。これだけあれば足りますねー。それどころか金鉱石が2つあるので、刀製作代を抜いても私が払わなければいけないぐらいですー」

 おお、高く売れると言われた金鉱石が2つも。


「シノブさんのお代から引いといてください」

 それはそうだった。ほぼ一文無しに近い俺はヴィルゴさんに借金をしないといけないのだった。弓使いはキツイな……。ドロップアイテムとかを見比べてもカラコさんの方が稼いでいる。恐らく彼女の所持金は1万Gを超えているだろう。


「そうですねー。あの弓は中々素材使いましたからー。剣の性能はどんなものがいいですかー? って言ってもまだ素材が鉄鉱石しか無いので何の効果も無い刀になりますねー」

「普通の刀で大丈夫です」

「了解ですー」


 まだ素材が鉄鉱石しか見つかっていない。しかし弓に素材使った。イッカクさんはβテスター。現在手に入ら無い鉱石、高い。ヴィルゴさんでも払えない。奴隷として売られる。




「ちなみに俺の弓の値段は?」

「んー、色々な人が関わって作られたので皆さんが要求する額にもよりますが……大体100から200ですねー」

 100Gではないだろう。100万だろう。もちろん俺には払えない。

 ヴィルゴさんの方を見ると顔を真っ青にしている。あ、これ終わったな。初心者用の弓のままなパターンだ。


「β時代の各生産職のトップに頼んで素材を譲ってもらったり、技術を施してくれたりしましたからねー。まだサービス開始から間もないというか3日目ですから、この値段なのであって、時間が経てば倍にもなるとは思いますよー」


 恐ろしい。最高400万か……。


「な、何とか負けてもらうことは……」

「俺そんな金払えません。ボスの素材ならありますけど……」

 ここは泣き落とししかない。払えない。てか大トカゲの革、えるるに渡しとけばよかったな。



「料金に関しては心配しないでくださいー。ワイズさんが既に支払ってくれましたー」

「ワイズさんが?」

 なんか……もうワイズ様って呼ぼうかな。


「魔法陣を書けるのでレベルが高い人はワイズさんしかいない状況なので皆さん報酬代わりに自分の仕事道具に魔法陣を書いてもらったりしてますねー」

 私も書いてもらいました、とニマニマしながらハンマーを取り出すイッカクさん。

 ギブアンドテイクというやつか。俺はありきたりな調合しかできないけど、ワイズさんは人口の少ない魔法陣の地で報酬代わりになるほどのことをした。俺もそんな風に不遇スキルを……無理だな。



 錬金、合成、模造、細工、抽出、裁縫、染色、塗装、木工、鍛冶、革細工、掃除、洗濯、栽培、農作、釣り、牧畜。



 今俺が取れる生産スキルはこれだけだ。持っている人がいなさそうと言うと釣りだが、釣りを取って皆に優位になる要素がない。牧畜と農作も未だ農場と牧場を買えないから、いないだろう。

 ありきたりだな。うん、諦めよ。俺は半樹人で狙撃手スナイパー。ポーション作っては小金稼ぎが役目だ。ガラス瓶ないから売れないんですけど。


「ワイズさんに次会った時何を要求されるのでしょうか……」

 カラコさんがそう言っているが、そうだ。ワイズさんは善意で色々なことをしてくれた。しかしこれほどまでのことでは流石に見返りは求めてくるだろう。


「どうしよう、カラコさん……」

「無茶でないことなら、真摯に実行。無茶なことだったら、断りましょう」

 さすがはカラコさんだ。断れるのか。なるべく普通のお願いがいいな。カラコさんがワイズさんと1日デートするとか。案外その程度のものかもしれない。


「イッカク、それで弓は一体どんな性能に仕上がったんだ?」

 既に立ち直ってるヴィルゴさんがイッカクさんに聞いてくれた。




「攻撃力は40。精神力+40。魔力+50。その他特殊機能ありですね。私自身もここまで高い能力の武器は初めて見ました」

「は?」

「え?」

「何それ」

 ちょっと待て、攻撃力が40はわかる。カラコさんの刀にも劣る。ステータス合計90って……18レベルプラスされたってことだよね。何これ。え?


「私が使ってた武器はステータス補正が20だったが……その倍とは何をやったんだ?」

「革命ですねー。最高品質の素材を最高の職人達が使い、作り上げられた弓に、付与術師、魔法陣師、言霊使い、呪符師が追加効果を乗せ、錬金術士が限界まで強化した結果がこれですー」

 イッカクさんは1本の鎖のようなものを取り出した。

「これが?」


「金属で弓を作ることでここまでの強化ができたって感じですねー。手に持って『展開』と言ってください」

 俺はジャラジャラとしている弓を手に取った。


「展開」

 微かな機械音と共に鎖が仄かな青色の光を放ち、弓なりになった。そして同じく青色の弦が張られる。これが魔力を触れるようにするやつか。

 光の線のようにも見えたが、ちゃんと触ることができた。


「おお……」

 こんな良い弓を本当に俺が使っていいのだろうか。わざわざ折りたたみ式にしてるのが更に価格を増してそうで辛い。てかこんな高級なもの持てない。


「ここでは試し撃ちも出来ませんし、外に出ましょうかー」


 俺たちは試し撃ちをするためにイッカクさんの後に続き外に出た。

 


ありがとうございました。

最近やる気が途切れがちです。

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