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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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16 ゲーム内でも妹は欲しい

 森の中には思ったより木はなかったものの、暗く膝下まで伸びる下草が歩くのを邪魔していた。カラコさんは目の前に伸びるツタなどを切りながら進んでいるが歩きにくそうだ。カラコさんの代わりに俺が頑張らなければ。



 街道と平行に進むように確認しながら進んでいる。透視ゴーグルと高身長なのがなければ遭難するだろう。



 透視ゴーグルを通して何かが動くのが見えた。

「何かいるぞ」


 その言葉にカラコは立ち止まり警戒する構えを取る。

 俺も弓を構える。





 カラコの斜め後ろ、死角から灰色の狼が襲いかかった。

「後ろ!」

 振り向きざまにカラコが斬りかかるが、狼の爪もカラコに届いていた。


 今の一撃でカラコの体力は大分削れていた。

 斬り裂かれた狼はカラコに斬られたまま飛んでいってそれから姿を現さない。


「厄介ですね。視界がきかないのと私並みに速いです」

 カラコは初心者用ポーションを取り出し、飲んだ。

 敏捷と筋力にしかふってないカラコさんと拮抗する速さとは俺の矢は当たりそうにもない。


 そう、ここは魔法を使うべきだ。

 狼共よ、木の後ろに隠れて様子を伺ってるようだがバレバレなんだよ。


「エクスプロージョン!」


 狼の1匹が隠れている木ごと爆発四散した。



「残り恐らく3匹。俺が魔法で片付ける」

 仲間が目の前で爆発したのに怖気づいたのか、狼共は逃げるか逃げないかに迷った。素直に逃げればよかったものの。


「エクスプロージョン!」

「エクスプロージョン!」

「エクスプロージョン!」


 周りがクレーターだらけになったが良いだろう。精神力がなくなったが、それに見合う経験値は貰えたはず。




《戦闘行動によりレベルアップしました。ステータスに5ポイント振り分けてください》

《スキルポイントが2増えました》




名前:シノブ

種族:半樹人

職業:狙撃手 Lv11

称号:魔王の守護

スキルポイント:2


 体力:90(+5)

 筋力:25

 耐久力:40

 魔力 :50

 精神力:45(+5)

 敏捷 :15

 器用 :60(+5)(+3)




 スキルのレベルアップなしか。火魔法しか使ってないから仕方ないか。とりあえず器用を80まで上げたい。そこまでいって普通に使い物になるだろう。体力は初期値で90いってるのにね。



「上がったのは危険察知だけですね。これで少しは索敵に役立てばいいのですが」

 そういえば危険察知を持っていたのに後ろからの攻撃への対応が遅れていたな。まだレベルが低いからだろうか。



「それより、俺の精神力が尽きた。次同じことがあっても同じ手は使えない」

 エクスプロージョンは威力も高いし、複数体に有効だが燃費が悪い。4発で精神力が尽きてしまった。


「……そうですね。もう街道に戻りましょうか」


 戦闘中に迷子になるということもなく、無事に街道に帰ってこれた。



「私が無茶なこと言ったせいで迷惑をかけてしまい申し訳ありません」

「新しい呪文の試し撃ちもできたし十分だよ」

 うんうん、反省しているようだ。わざわざ森の中に行った甲斐があった。


「スキルポイントが10溜まっているのですが……何か取ったほうがいいのでしょうか」

 そのスキルポイントが欲しい。


「サブウェポンとしての体術、投擲術か。跳躍や立体機動などの機動性を上げるスキル。20ポイントのを取得するため貯めておくか。どれにしましょう」


「俺は貯めておく派だな。10ポイントのものは頑張れば自力取得できるとのだということに気づいた。投擲術なんかは、投げていればいずれ取得できる」

「何か取得できたんですか?」

「毒を食べ続けて毒耐性を手に入れた」

 カラコさんが引いているが俺はそんなことではめげない!


「なら私もやってみましょうか」

 カラコは毒耐性取る前に毒で死にそうだな。相当な微毒でやらなければ。



 カラコはその場で飛び跳ね始めた。

 ウサギさん……。胸が微動だにしないのは少ないからか、はたまたアバターがそう設定されているのか。

 アバターの容姿はランダムだが、体格は本人に合わせるように設定されている。つまり胸を大きくしたかったり、足を伸ばしたかったら課金しろとのことだ。

 おれは元から背が高いから、アバターも現実より少し高いぐらいで設定されている。

 カラコさんのロリ体型も現実のものなんだろう。まだ若いので成長の余地はあると思うが。


「この跳躍ってどのぐらいしてれば取得できるんですか?」

 俺の場合はどのぐらいしていただろう。


「1時間……ぐらいかな?」

「それだったらボスを周回するほうが早いです。とりあえずスキルポイントは保留にしましょう」

 健気に飛び跳ねてるカラコウサギさん可愛かったのに……。





「あれが毒持ちというトカゲですか」

 街道上でのエンカウント率本当に低いな。


 灰色の大きなトカゲ。コモドドラゴンをモチーフにしているのだろうか。

 俺たちを見るとドタドタと駆け寄ってくる。


「カラコ、俺は毒耐性を上げたい。俺が攻撃を食らってから仕留めてくれ」

 精神力がない俺には攻撃手段がない。毒矢も効かなさそうだし。




「ギャー!」

 変な鳴き声を上げたのは俺ではないトカゲだ。俺の足にがぶりと噛みつく。体力がゆっくりと減っていく。

 毒を食らったようだ。


「ハッ!」

 カラコさん気合の一閃と共にトカゲは消滅した。相変わらずのクリティカル率だ。



《戦闘により【毒耐性Lv2】になりました》



 目論見通りだ。意外と毒がきつくて、体力が削れたけどな。



「毒耐性上がりましたか?」

「ああ、上がったよ。ありがとう」


 しかしこれ以上上げるのはさらなる毒を受けなければ無理だろう。精神力も少し回復したし矢を使って仕留めていきたい。




 それから歩いているとそれに遭遇した。

「大きいですね」


 家3軒分ぐらいある大トカゲ。ここのボスだろう。先ほど見た小トカゲをそのまま大きくしたような感じだが、色が灰色ではなく真っ黒になっている。ボスウサギは3メートルほどでそれでも大きいと思ったがこれはそれ以上だ。


「これって倒せるの?」

 日の光を浴びてボスは眠っている。歩いていて踏まれるだけで死に戻りだろう。

 装甲も硬そうでカラコさんの刃が通るとも思えない。


「……倒したいところですが、シノブさんが万全じゃありませんしね。やめておきましょう」

 俺の精神力が満タンなら開戦したのかよ!

 せめてヴィルゴさんを待とうよ。





「あれ? あれってワイズさんじゃないですか?」

 大トカゲの頭の近くで座っている人影がある。



 確かにワイズさんだ。それと白い幼女。2人は楽しげに話している。


「……どういう関係なんでしょうか」

 パーティーメンバーじゃないかな? 普通。


「……ロリコンという可能性が」

 いやいやいやいや、カラコさんの思考回路がおかしい。



「ここで話していても、何だし話しかけに行くか」

 待てよ。例の仮面を被っていないということは挨拶だけで作文が始まってしまう。


「話しかけに行くのより先にメールを使ってあの仮面をつけてもらいましょう」

 なるほど。そうすれば話しかけなくていいというわけか。



 ワイズさんにメールを送る。



 大トカゲの近くにいるんですが、仮面をつけるか、簡単な言葉で話してくれないと近づけません。どうにかしてください。




 我ながら酷い文だな。

 まあ、いいか。



 届いたのに気づいたのだろう。キョロキョロするとこちらを見つけたのかブンブン手を振りだした。


 仮面つける前は本当に行動的な人だな。


 俺たちがその場から動かないのを見るとため息をついて、仮面を取り出した。

 途端に元気な様子が消えて、その場に座り込む。


 仮面をつけてくれたので近づく。



「……シノブくん達も……酷いな」

「会話が進まなくなるからな。キャラメイキングの時も結局何がいいたいのかわからなかったし」

「こんにちは、一体ここで何をしていたんですか?」


 そういえば昨日会った時もボス部屋だったな。



「妹と……話していた」

「「妹?」」


 妹だったのか。ワイズの妹は俺たち2人に見つめられ、ワイズの後ろに隠れた。



「妹と言っても……ゲーム内だけの話だが……。彼女の名前はヨツキ……ほら……挨拶」

「……こんにちは?」

 ゲーム内だけ? そういう設定ってことか。ワイズさんと知り合いってことはβテスターなんだろうな。



「義兄妹ってやつですか。確か結婚システムもありましたね。このゲーム」

 そんなものがあるのか。

「結婚したりするとどうなるんだ?」


「アイテムの共有、マネーの共有、お互いがパーティーにいるときにステータス上昇、後特別なスキルが色々と取得できるって噂ですね。裏切られた時のデメリットが大きすぎてあまりしている人がいないので情報不足らしいです」


 それをしているワイズさんとヨツキちゃんは余程の信頼関係を築いてるようだな。



「……ボスを倒すのなら……サポートはするぞ。パーティー外からでいい」


「本当ですか? ありがとうございます」


 パーティー同士がかち合った時、経験値はパーティー2つに分けられる。他人の獲物を奪うのはマナー違反とされている。しかし治癒魔法などのモンスター本体に直接攻撃しなければ経験値はわけられない。

 ワイズさんは心が広い。



 ワイズさんはまた本を取り出しページをめくり始める。


「その本は何ですか?」

 カラコさんが聞くが俺も気になっていた。このゲームの召喚魔法はいわゆるガチャガチャだ。何が出るかはわからない。掲示板では召喚獣のステータスを見せ合って自慢をしている。最強の召喚獣を召喚するためにキャラの作り直しをしている人までいるらしい。ちなみにこれはワイズさんの召喚魔法が気になって調べたことだ。


「レアスキル……【グリモワール】だ。……β時はただの本だったが……運営がスキル化したみたい……だな」


 れ、レアスキルか。憧れるな。

「取得条件を聞きたいですが、無理ですよね」

「……運営に無闇に……口外しないよう……言われているからな」



召喚サモン【小鬼の魔術師】」



 魔法陣と共にローブを被った醜悪な小鬼が現れる。

 ゴブリンの魔法使いだろうか。


「……俺の加護は……効いてないんだったな」


 一体どのような効果なのだろうか。



「グギャア」

 ゴブリンの魔法使いの杖の一振りで俺達の精神力と体力が全回復した。



「……サポート系は……揃えていなかったな」

 ワイズさん、十分です。



「ありがとうございます。回復役がいるだけで、大分やりやすくなりますから」



 ヨツキちゃんは補助系かと思うが違うのだろうか。ワイズさんの影からこちらのことを興味深そうに見ているだけだ。

 初対面だから補助してくれなくても仕方ないか。



「シノブさん。手持ちで1番威力の強い魔法をお願いします。盾役がいないので攻撃は……耐えてください」

「お、おう」

 耐えてくださいって……。前衛ならヘイト値ぐらい管理しようよ……って言ってもカラコさんはアタッカーだもんな。自分に出来ないことを他人に求めるのはよくない。



「じゃあ、行くぞ。エクスプロージョン!」


 大トカゲの顔に爆発が直撃した。

 大トカゲはゆっくりとこちらを確認して咆哮した。


「グオオオオオオオオオオ!!!!」


 これがボス戦ってもんだよな。体力が1割しか削れてない……1割も?



ありがとうございました。

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