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狙撃手の日常  作者: 野兎
神の弓は月の形
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14 真夜中の生産活動

 初日だからか、街にいるプレイヤーも多い。フィールドに出られるのは暗視スキル持ちか松明や魔法などで暗闇を照らせるものだけだ。



 俺は新呪文を試すのとこれからの方針を尋ねるために狩人ギルドへと向かった。

 何か売るものがないかとアイテム欄を見るとさっき倒したボスのドロップアイテムが入っていた。


「そういえば弱すぎて忘れていた」


 ボスラビットの牙と耳がドロップしている。これも錬金を使えば装備を強化することができるのだろう。未だ錬金術士の知り合いはいないから取っておくか。



 雑魚モンスターのドロップ品は分けられないのに、ボスモンスターのドロップ品は分けられる。パーティー間でのドロップアイテムの揉め事を起こさないようにか、雑魚モンスターでもそういうのは起こるような気がするけどな。




 俺は階段を上がって第二訓練室へと向かったのだが。

『すみません。夜間の利用は控えさせてもらっているんです』

「ああ、そうですか、ありがとうございます」

 何たることだ。そういえば受付数も減り長蛇の列となっていた。


 リアルと利便さでリアルを取ったんだな。いいと思う、そういうの。



 もしやと思い雑貨屋へ走る。案の定閉店していた。


「はあー、一体どうすりゃいいんだ」

「ちょいとそこの兄さん。ポーションなら安くしておくぜ」

 雑貨屋の前に立っているプレイヤーに声をかけられた。


 黒のフルプレートアーマーを着ていたので気が付かなかった。


「ポーション?」

「そう、この雑貨屋目指してきたってことはポーションか、矢か何か必要になったんだろ? MPポーションはまだ取り扱ってないが、他にも色々なものがあるぜ」

 見た目は重戦士だ。


「……俺も生産をしようかと思ってここで草の鑑定をしてもらおうと思っていたんだ」

「そうかそうか同業者か。草ということはポーション系を作るのか。手広くやってる俺には同業者なんて問題ないけど。それにしても生産したいのに識別をもっていないとは」

 どことなく口調が軽い男だ。夜で顔も見せてないので胡散臭さ二割増しだ。


「スキルポイントが足りないんだ」

 識別、鑑定。どちらも10ポイントが必要だ。


「確かに作った製品の品質には鑑定、素材の名前には識別が必要だ。合計20ポイント。きっついな。しかしポーションを作るだけならもっといいスキルが有る。鑑定、識別の代わりになって2つ合わせて10ポイントだ」

 な、何?


「そのスキルを教えてくれないか?」

 黒鎧は手を出した。

「対価をくれ」


 俺は黙って取得できるスキル一覧を探る。感知系のところに鑑定と識別はあるが5ポイントで取れるようなものはない。生産系スキルも上から下まで見てみる。

 見つからん。


 黒鎧がニヤニヤ笑ってるみたいなのが苛立たせる。鎧で顔が見えないのにどうして表情がわかるのだろうか。運営さんありがとう。鎧つけたままでもコミュニケーションが円滑に働くようにしてくれたんだね。


「取った草を全部やる」

 俺にとっては苦渋の決断だ。

「いらないね。ラビットの草原だろ? あそこは品質が低いんだ」



 ……どことなくイラつくやつだ。

「じゃあ、一体何が欲しいんだ?」

「ポーションか何かを買ってくれ」

「金がない」

 これは本当だ。矢を買って金が無い。


「あー、金が無いなら教えられないなー。情報でもいいけど……そんな重要そうな情報持ってなさそうだしな」

 確かに情報は……情報? 俺の周りにはβテスターが2人もいたじゃないか。さあ、会話を思い出すんだ。


「情報ならある。称号に関してだ」

「称号? 知っているが何か新しいのでも出たのか?」

「他人の称号が今は見えないらしい」

「何?」


 黒鎧からステータス部分だけ送られてくる。




名前:ゴールデンマスター

種族:ヒューマン

職業:行商人

称号:


 体力:60

 筋力:40

 耐久力:30

 魔力 :20

 精神力:20

 敏捷 :30

 器用 :30




 黒鎧なのにゴールデンマスターとは……。それにしても弱いな。ヒューマンだからだろうか。

 今度ヒューマンの利点をヴィルゴさんに聞いてみよう。


「ステータスのことは置いておいて、どう? 称号見える?」

 称号持ちということはβテスターなのだろう。


「見えないな」

 黒鎧……ゴールデンマスターは何かを考えこむように首をかしげると何やら納得したのか、1人で頷いている。


「これは推測にしかすぎないが、称号システムがまだ機能していないんだな。本人に表示されたままになっているバグだ。運営が意図的にやったとしても告知はすべきだ。んーじゃあ、スキル教えてあげるぜ。植物鑑定と薬品鑑定。どちらも5ポイントで取得できる。ポーション作り、頑張れよ。さあ行った行った。そんな辛気臭い顔で立っていられると商売の邪魔になる。

 次はお金のある時に来いよ。

 攻城兵器から石ころまで、行商人ゴールデンマスターは何でも揃えております」

 ゴールデンマスターは慇懃に礼をすると手で追い払った。客に対する扱いがなっていないな。


 植物鑑定なんて一体どこにあったのだろう。このゲームのスキルは確認しづらい。情報っていっても話しても何も損にならなかったので問題ない。時間がかかっただけだ。


 植物鑑定を習得する。



「ありがとよ」





 俺は街の中心の広場に戻り、草を何種類か具現化させる。

 他にも色々な生産活動をしている人が集まり賑わっている。



 ヤク草

 品質 F

 食べると少し体力を回復させる薬草。


 ドク草

 品質 F

 食べると状態異常【毒】になる草


 オイシ草

 品質 F

 美味しそうな草。肉の臭み取りやサラダに使われるハーブ。



《行動により【植物鑑定Lv2】になりました》




 オイシ草の説明をみてやっぱり思うが、これは野菜炒めにするものじゃないよな。野菜炒めなんかにしたらすごく量が減りそうだ。

 全て品質がFなのは固定されているのだろう。

 スキル収穫は効いてないようだ。


 具現化させたものを仕分けてまたアイテム欄に戻していく。

 今まで草としか表示されていなかったものが、ヤク草、ドク草。オイシ草と分けられて表示されている。便利なものだ。


 しかし俺はポーションを創る道具を持っていない。周りを見るとひたすらゴリゴリと草を石臼で押しつぶしているものや、ぐつぐつと煮込んだりしている。俺は金がないから買えない。詰んだ。



 ステータスを開きこれからの予定を考える。




名前:シノブ

種族:半樹人

職業:狙撃手 Lv10

称号:魔王の守護

スキルポイント:0


 体力:90

 筋力:25

 耐久力:40

 魔力 :50

 精神力:45

 敏捷 :15

 器用 :60(+3)


パッシブスキル

【弓術Lv4】

【火魔法Lv5】【木魔法Lv5】

【火耐性Lv1】

【収穫Lv3】【精密操作Lv1】

【発見Lv4】

【狙撃Lv1】【隠密Lv1】

【植物鑑定Lv2】


アクションスキル

【光合成】【ファイアボール】【ウッドバインド】【ファイアショット】【ウッドショット】【ファイアフライ】【レジストファイア】【エクスプロージョン】【グロウアップ】【ポイズナスフラワー】



 次に取るべきなのは調合、そして薬品知識だ。

 そしてワイズさんに言われた強弓術。取得可能なスキル欄にはなかったが、強弓を使っていると取得可能になるだろう。

 合計25ポイント必要だ。後13レベル上げる、もしくはボスを倒しまくってポイントを貰うしかないだろう。13レベル上がるまで待ってはいられない。明日辺りにでもボス周回。カラコさんにでもサポートしてもらってやろう。それより次の街に行ってスキル取得クエストを受けたほうが効率がいいかな。ヴィルゴさんに聞いておこう。



 未だにレベルが1なのは火耐性、精密操作、狙撃、隠密だ。

 狙撃や隠密は取得してから時間がたっていないので仕方ないが、今上げることはできない。


 そう、俺が鍛えるべきは火耐性だ。



 新魔法の火耐性をつけるっぽいレジストファイアもあるし、少しやってみよう。



「レジストファイア」


 俺の体が仄かな赤い光を発する。

 さて……ここからが本番だ。



「ファイアボール」

 俺の手から火の玉が出てくる。やはりファイアショットに比べると精神力を消費する。

 そのまま撃たないように集中しながら、手を自分の体にぶつける。


 強い衝撃と熱さを感じ、俺は後ろへ吹っ飛んだ。




《行動により【火耐性Lv2】になりました》

《スキル【魔法制御】を取得可能になりました》



 以外と簡単に火耐性が上がったな。それに新しいスキルも取得可能になった。

 今日は精神力が尽きるまで、これの繰り返しをするか。



《行動により【火耐性Lv3】になりました》

《行動により【火魔法Lv6】になりました》

《スキル【マゾヒスト】を取得可能になりました》

《スキル【頑丈】を取得可能になりました》




 変なスキルも取得可能になったが放っておこう。触らぬ神に祟りなしだ。

 火魔法も上がるのは想定外だ。レジストファイアとファイアボールを使っていたからか。

 精神力がもうなくなった。矢が当たらなくてはしょうがないが、精神力も並行して上げていくべきだろう。精神力を底上げするスキルも欲しいものだ。



 俺は精神力がなくなったため、広場から出て散歩しようと歩き出そうとして気づいた。皆俺のことを奇異なものを見るかのような目で見ている。


「火魔法を自分で自分にとか……」

「いや、状態異常耐性を上げるために毒飲むのは知ってるが……」

「あれで死に戻りしたらおもしろいな」

「Mか……」


 俺はその場から逃げ出した。


 もう掲示板は見ない。見ないったら見ない。

 少なくとも一週間は見ないようにしよう。半樹人で火魔法を持っている人なんていくらでもいる。特定はされないはずだ。




 シノブは自分が背中に弓を背負っていることをすっかり忘れていた。

 半樹人のような元からの器用が低い種族は生産にも弓にも向いていない。器用を重点的に伸ばさなければ使い物にならないからである。




「しかし状態異常耐性を上げるために状態異常になるのはあるのか」

 俺は耐性を持っていないのでする気はないが。


 俺は大通りを抜けフィールドに出ていた。門近くには篝火があるため、真っ暗ではない。

 狙撃と隠密を上げたいが、真っ暗なので狙撃は無理だろう。


 隠密は隠れればスキルレベルが上がるのか?


 シノブは篝火の影になっているところに実を潜めた。即ち篝火の下の部分である。



 俺は空気だ。俺は空気だ。俺は空気だ……。

 隠密を発動させることを意識して動かず、呼吸も静かにする。



《行動により【隠密Lv2】になりました》

《スキル【毒耐性】を取得可能になりました》



 あまりにも暇だったのでドク草を食べていた結果だ。

 体力を見ながら、ドク草を食べていく。幸い対して毒性は強くなかったらしく、元々体力が多い俺には対した脅威にはならなかった。ヤク草の回復量とドク草のダメージが同じだ。

 ヤク草とドク草を交互に食べる。



《スキル【草食】を取得可能になりました》

《スキル【毒耐性】を取得しました。スキル欄が限界なので控えに回されました》




 また変なスキルが取得可能になったが取るつもりはない。

 やはり可能か。大量に蓄えたドク草がつきようかとした時に毒耐性を取得できた。

 かなり長い時間草をモグモグしていたような気がするが、隠密は上がらなかった。

 何かから隠れなければダメなのだろう。



パッシブスキル

【弓術Lv4】

【火魔法Lv6】【木魔法Lv5】

【火耐性Lv3】

【発見Lv4】

【収穫Lv3】【精密操作Lv1】

【狙撃Lv1】【隠密Lv2】

【植物鑑定Lv2】


控えスキル

【毒耐性Lv1】


アクションスキル

【光合成】

【ファイアボール】【ファイアフライ】【レジストファイア】【エクスプロージョン】

【ウッドバインド】【グロウアップ】【ポイズナスフラワー】

【ファイアショット】【ウッドショット】




 パッシブスキルは10が最高なのか。

 火耐性を外して毒耐性を入れる。火を使ってくる敵より、毒を使う敵のほうが多いだろう。

 植物知識はレベルがないようだな。植物系で識別できないものがないということか。ちなみに俺の周りに生えている草をちぎってみると、ただの草と表示されている。

 特に何の効果もない草。繁殖力が強く、陽の光が当たるところではすぐに生えてくるそうだ。




 カラコには徹夜すると言ったが、特にやることもなくなったのでログアウトするっとその前に新しい火魔法の呪文でも確認してみようか。


「エクスプロージョン!」



 何かが破裂したような音がなり、当たりが一瞬強い光で照らされる。


 夜の暗闇に慣れていた目がリセットされ、周りが全く見えなくなる。


「うん、爆発が起きるんだな」


 それ以上のことはわからなかった。それにかなりの精神力を消費した。

 あまり連発はできない魔法だろう。敵が一箇所に固まっている時などに有用だな。




 今度こそ俺はログアウトした。

称号ってどんなものにしようかまだ決めかねている

1話を適当に作ったしわ寄せが今になって来ているな

あまりに強力なものだとゲームバランスが崩れるような気がする

ステータスアップが妥当だろうか

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