永久の旅立ち、永久の嘆き
あけましておめでとうございます!ヴェルグラス視点です。
扉を開けた瞬間、集まった視線を無視して、私は進んだ。
真っ直ぐ前を見据え、創世十二神の壁画の前に置かれた祭壇に横たわる、少女の姿だけを瞳に映して。
慌てて少女の前に立ち塞がる司祭を押し退け、さらに前へと進み奴を見下ろした。
普段しない化粧をされた少女は、幾分大人っぽく見えた。
「……お前は、何から何まで勝手な奴だな…」
そっと触れた頬を撫で、呟く。
「突然現れて、人の厚意を蹴って好き勝手して、振り回して…挙げ句の果てに勝手に死ぬ」
冷たい頬が温かくならないかと、手のひらで覆ってみる。
全く変わらぬ体温に、私は瞳を伏せた。
「身勝手で、我儘で、鈍感で……どうしようもない」
まぁ、鈍感だったのは自分もだが…。
なくしてから気づくなど、何て皮肉だろう。
「里桜……、私はお前が大嫌いだ」
言葉とはうらはらに、そっと唇を重ねた。
お前は知らないだろう。
本当は正しくお前の名を呼べるのに、わざとカタコトで呼んでいた事など。
「こんなに憎く腹立たしい奴など、後にも先にもお前だけだ」
だから、忘れるなんて出来る訳がない。
「お前の願いなど叶えてやらない。…叶えられない」
どうか幸せに…、そう言って泣きながら笑った里桜が頭から離れない。
こんなにも里桜の事で埋め尽くされてる私が、彼女のいない世界で幸せになんて、どうしてなれるだろう。
「私は、この先ずっと、お前の幻影に囚われて苦しみつづけるだろう」
どれだけ待っても、……どれだけ探しても、彼女はいない。
そんな地獄のような世界に、決して救われぬ罪悪感を抱いたまま独り生き続ける。
「それが、私が自身に課す、最高の罰だ」
考えるだけでゾッとするが、己の罪を忘れ、里桜をも忘れてのうのうと生きるよりは、ずっと良い。
「世界を創りたまいし創世十二神よ」
左手の甲に刻まれた刻印が呼応し、光をまとう。
「陛下っ!」
司祭が私のせん事を察して声をあげたが、止まるつもりも、この役を誰かに譲るつもりもなかった。
「我、今ここに心より願う。現世の鎖を解き放ち、旅立たんとする善良な民に、祝福と加護を授けたまえ!」
祭壇に描かれた魔法陣が作動し、赤い炎が燃え上がる。
炎は、私から彼女を隠すように激しく燃え上がり、聖灰になるまで少しも勢いが衰える事はなかった。
残り2、3話で完結予定です。




