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ナマズとプロローグ

僕がナマズについて知っていることは多くない。淡水魚、夜行性、ウロコがなく粘液で体が覆われていて、食欲が旺盛でどじょうも食べてしまうとか、せいぜいそんなものだ。


それでもナマズと言われればその姿が思い浮かぶし、ヒゲが特徴的だなとか思う。いわゆる一般的なナマズを僕は知っている。



しかし、僕の隣にちょこんと座るナマズのような少女のような、どっちつかずの生き物を僕は知らない。図鑑でも見たことがない。



「なあうなぎ、何か思い出したか?」



ナマズ少女は首をひねる。首と言っても、ナマズの部分ではなく、少女の方だ。僕も言っていて頭がおかしくなりそうだけど。



「うな~おもいだせませんな」


「そうか、まあゆっくり思い出せばいいと思うよ。どうだ、どじょう食べるか?」



プラスチック製の小さな箱から生きたままのどじょうを取り出して、ナマズ少女へと見せてあげる。


うな、とか驚きと共におなじみの声をあげるナマズ少女。


「またとってきてくれたのですか!うな、いただきます!」


「おー、食え食え」



ナマズ少女の差し出した両手にどじょうを乗せてやる。どじょうは危機を感じたのかうねうねと動きを強めたが、ナマズ少女は意に介することもなく、ほい、と頭上に投げた。


「うなな!」



ナマズ少女の頭上辺りに君臨するナマズの顔、その口が大きく開く。普段は眠ったように機能しないナマズの部分は食事の時だけ飛び起きるのだ。


やがて落ちてきたどじょうをまさにバクンッという擬音とともに丸呑みにして、もぐもぐと咀嚼に移る。


「いつも思うんだけど、美味いのかそれ?」


「うないです!ちがった、うまいです!どろくささがさいこうなのです」


「泥臭さか。人間はむしろそれを取ろうと必死だからなー」



もったいないですな、と言いながらも頭上のナマズの部分は咀嚼を続ける。タイミングを見計らって次のどじょうを投げてやると、まるで意思があるかのような機敏な動きで食らいついた。


ナマズ少女もうなうなと機嫌良さそうにしている。



ほんの一週間前、僕はこの奇妙な生き物を釣り上げた。自らをうなぎと名乗る、ナマズのような少女をーーー




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