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第7話 クエスト完了と謎の仮面の男

 冒険者のお姉さんたちに集めてもらった大量の薬草を抱え、僕たちは再び冒険者ギルドへと戻ってきた。


 カウンターにドサリと薬草を置くと、受付嬢のイルダさんが目を丸くした。

「すごいわ! こんなに早くクエストを達成してくるなんて、流石ルカくんね!」

「あ、いや。これはその……なんというか」

 僕が言い淀んでいると、「謙虚なところも可愛いわ」とイルダさんはモジモジと身をよじり、熱っぽい視線を送ってくる。

「クエスト完了の報告は、全て私がやっておくわね。薬草も必要量以上あるので、査定ボーナスもつけておくわ!」

 僕の顔をチラチラ見ながら、イルダさんはものすごいスピードで完了報告を書き上げていく。

(……何もしていないのに、クエストが完了してしまった。……本当にこれでいいのかな?)

 僕は申し訳ない気持ちを抱きながら、イルダさんのペン先を見つめた。


「はい、これ報酬ね。……それと、これ。私の家の住所が書いてあるの。いつでも遊びに来てね……?」

 甘い声でウインクするイルダさんが、そっと僕の手に小さな紙切れを握らせた

 だが次の瞬間、横から伸びてきた手が、そのメモをひったくった。

「なっ!?」

「油断も隙もないな、この泥棒猫が!」

 シオンが目の前でメモをビリビリに破り捨て、さらに指先から小さな炎を出して燃やし尽くした。

「ああっ! 私の愛のメッセージが!」

「ふんっ!」

 シオンは床に落ちた灰を、親の仇のように足でグリグリと踏みつけた。


 バチバチと火花を散らす二人。

 僕は一触即発の空気になる前に、シオンの首根っこを掴んで逃げるようにギルドを後にした。


 ◇


 初めて自分で稼いだ(?)報酬を握りしめ、僕たちは今日泊まる宿屋へと向かう。

 冒険者のアデラさんたちから。おすすめの宿を聞いていたのだ。


「いらっしゃいませー!……あっ!」

 宿屋のカウンターにいた同年代くらいの宿屋の娘が、僕を見るなりハッと息を呑んだ。

 そして、お約束のように顔を真っ赤にして、身をよじり始める。

「な、なんて素敵なメガネ男子なの……っ! ささ、こちらへ!」

 宿屋の娘は、すさまじい勢いで宿の台帳をめくり始めた。


「ルカくんっていうのね、素敵な名前! お部屋は一番見晴らしのいい最上階の特別室を、通常の部屋と同じ……いえ、少し安い値段で用意するわ! もちろん、豪華な夕食もサービスしちゃう!」

 宿帳に記載を終えた僕に、宿屋の娘は尋常ではない速度でまくし立てた。

「ほ、本当ですか!? でも、なんか申し訳ないです」

「全然遠慮なんてしないで大丈夫! 本当は私の部屋に……ゴホン。ル、ルカくんのためなら当然よ! あたしはビビっていうの、よろしくね。……それと、そっちの緑髪のおチビちゃんは……えーと、普通の部屋ね。夕食は別料金だから」


「なんなんだい、この待遇の差は!!」

 案内された部屋の前で、シオンが地団駄を踏んだ。

「ボクたちは同じ部屋に泊まる予定だったじゃあないか! なんでルカくんだけ、こんな豪華な一人部屋なんだ!」

「まあまあ、シオン。おかげで安く泊まれたんだし……」

「納得いかない! ボクだって、君と同じふかふかのベッドで……っ!」

「……でも、僕は少しホッとしました。シオンもれっきとした女性ですから、やっぱり部屋は分けたほうがいいと思ってましたし」

「……え?」

 僕が何気なくそう言うと、シオンの動きがピタリと止まった。

「ぼ、ボクをちゃんと、女性扱いしてくれているのかい……?」

「そりゃあ、当たり前じゃないですか。さすがに女性と一緒の部屋となると、僕も緊張しますし……」

 シオンは顔を真っ赤にして、もじもじとし始めた。

 そして、チラリと上目遣いで僕の顔を見た。

「あ、あのさルカくん……ボク、本当は……」

 見る見るうちに、シオンの顔が上気を帯びていく

「……ああっ、ルカくんの気遣い、最高だよ……! こんなボクを一人の女性として扱ってくれるなんて……。でもやっぱり、ボクたちは同じベッドで寝るべきなんじゃないかな? うん、そうするべきだ。それも今すぐに! さあ、スイートな時間を二人で過ごそうじゃあないか!!」

「ええええ!? シオン!?」

 シオンが目を血走らせて、僕に飛びかかってきた。


 ガァンッ!!

 僕はすかさず、アイテム袋から取り出したお盆でシオンのアタマを引っ叩いた。

「あだっ!?」

 激しい金属音と共に、シオンは廊下に突っ伏した。

(……結局いつも通りじゃないか)

 僕は小さくため息をつきながら、気絶したシオンを両腕で抱え上げる。

 小さな体をそのまま部屋へと運び、ベッドへ下ろした。

 ふと、目の前のシオンの無防備な寝顔(?)を見て、息が止まりそうになった。

 ぷっくりとした唇から、スースーと息が漏れている。

 思わず、その唇に吸い込まれそうになり、あと数センチまで顔が近づくと、ふと我に返り慌てて顔を離した。

(何考えてるんだ、僕は……!)

 僕は自分の頬をパチンと叩き、そっとシオンに毛布をかけ、部屋を後にした。

 その夜、僕はなかなか寝付くことができなかった。



 ●SIDE:シエラ


「えっ?メガネの少年? ……ルカくんに個人指名の依頼ですか?」

 冒険者ギルドのカウンターで、受付嬢が驚いたような声を上げた。

「ええ。聖女フェリシア様からの、直々のご指名です」

 私――聖女様付きの護衛騎士シエラは、静かに頷き、顔にかかった青い髪をかき上げた。


 今日の昼間、馬車から見かけた少年のことが、フェリシア様はどうしても忘れられないらしい。

 彼がギルドから出てきたということは、冒険者である可能性が高い。

 そう推測したフェリシア様の命により、私はこうして依頼を出しに来たのだ。


 あのフェリシア様がこんなにも執着なさるとは、ルカという少年は一体何者なのだろう?

 純粋な好奇心も湧き上がるが、グッとこらえた。


 フェリシア様も年頃の女性だ。

 変な噂が立たないように細心の注意を払い、依頼という形で少年を呼ぶ必要がある。

 ギルドでの手続きをそつなく終えると、私は足早に聖女様の待つ大聖堂へと帰路を急いだ。


 日が落ち、街の裏路地は薄暗い影に覆われている。

「……ん?」

 ふと、背後に気配を感じて足を止めた。

「誰だ?」

 剣の柄に手をかけ、振り返る。

 そこに立っていたのは、深いフードを被った一人の男だった。

 顔には不気味な仮面をつけている。

『――美しい騎士殿。少し、お話をよろしいかな』

 男の声は、まるで地獄の亡者のような、低く、かすれた声だった。


「怪しい奴め。何者だ!」

 私が剣を抜こうとした、その瞬間。

 男の仮面の奥で、何かが不気味に光った。

「……っ!?」

 急激に、意識が朦朧とし始める。

 手足から力が抜け、視界がぐにゃりと歪む。

 男の低い声が、直接脳内に響いてくるようだった。

『そうだ……君には、やらねばならないことがあるはずだ』

「私の……使命……?」

 焦点の合わない目で、私は虚空を見つめた。

 頭の中に、ひとつの明確な意思が植え付けられていく。


「……そうだ。フェリシア様を、殺さないと」

 暗い路地裏に、冷たい声だけが響いた。

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