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072. 託された役目

 楽しげに話すクロと、対照的な様子の晃生さんを見ていると――


 晃生さんは……どこか、自分は関わらなくても良い、そう思っているように見えました――。


 晃生さんの隣に座っている私は、黙ったまま二人の様子を眺めていました。これから先の事を決めるのは、私ではなく彼等だから――


 けれど、何故か私の膝の上で尻尾をパタパタさせてくつろいでいる水晶龍を見てつぶやきました。


「……水晶龍……この子はクロと一緒に、この神社に居るものだと思っていたのですが――

 どうなりますかね……」


 自ら動けるアーティファクトがそうそう存在しないというのなら、かなり特別だということ。

 そして……この子の光り具合から察するに、かなり強い力を持っていそうで……


 この神社が正式に整えられるとなると、もしかしたらこの子はどこか別の所に連れて行かれてしまうのかもしれない――


「……」

「これだけ強い力を持っていれば、単身でも十二分に求心力はある。

 どこぞの神社や仏閣に祀られることになるだろう。役に立てるかどうかは別として」


 どうやらクロから見ても、水晶龍の力はお墨付きのようです。少し含みのある言い方が気にはなりますが。


「それは――

 コイツはここに居る気満々みたいだが」


 晃生さんがチラリと水晶龍を見て言います。


「たとえ自ら動けるアーティファクトでもな……人の決定には抗えぬよ」


 そう言うクロは、どこか悲しげに見えました――。


「――――」


 晃生さんは難しい顔をしたまま、クロを見つめています。


 その時です、微かに地震のような揺れを感じたのは――


 それまで楽しそうにしていたクロは、真剣な表情となり、虚空を見つめています。


「くる――――」


 私と晃生さんが目を見合せた瞬間、地の底から突き上げるような揺れがおこりました。


「「――!――」」


 ミシミシという音を立てて社が揺れています――!


「クロ、大丈夫か⁉︎」

「我は今人型になっているから――本体に影響はない。社もたぶん保つであろう……」


 私は水晶龍を左腕で抱きしめながら右手は畳に置いて、バランスを取っていました。

 そう、そうしなければ倒れてしまいそうなほどの揺れがまだ続いて――


「晃生、街が大変なことになる――」

「……!……」


 きゅぅうきゅぅう


 水晶龍は何かを訴えるかのように声をあげています。


「トウマ、水晶龍を頼めるか?」

「もちろんです――けど――」


 クロの言葉に、水晶龍を抱える腕に力がこもります。

 私も行って何か手伝いを、と言いたいところですが――


「水晶龍はまだ力のコントロールが不安定だ。感じてると思うが、自制もできない子供のような状態だ――だからトウマはここで水晶龍と一緒にいてくれるか?」


 晃生さんが片膝を立てながら言いました。するとクロは立ち上がり、街の方角を向いて目を瞑ります。


 置いていかれるとわかったのか、水晶龍は私の手を振り解こうと暴れ始めます。


「――わかりました」


 お二人のことが、街のことも心配ですが……水晶龍の事も放ってはおけないですし、私は言いながら頷きました。


「晃生、確認した。キヨミズはひとまず大丈夫そうだ。南の方の家屋の倒壊が酷いから、そちらから向かうぞ」

「わかった」


 晃生さんが立ち上がると、クロは私の腕の中の水晶龍を見つめて言いました。


「良いか、水晶龍。トウマを守るのだ。

 信じておるからな?」


 クロの言葉に水晶龍はこれまでの甘えるような声ではなく、しっかりはっきりと返事をするように鳴きました。


 きゅうううん!

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