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057. 怖くても、楽しむ

 そして私たちは、軽く食事を済ませてから作業へと取り掛かりました。


「まず作業を始める前に、この本家に持っていく予定のアーティファクトを増幅くんに入れる」


 晃生さんが言いながらアーティファクトを玄関横の箱に設置すると、これまでとは異質で、とても強固な結界が離れ全体を包みました。


「これはまた……すごいですね――」


 来るもの全てを拒むような雰囲気の、太陽の光を薄く伸ばしたような光を見て、私は思わず呟きます。


「元々本家の敷地一帯をカバーできるくらいの結界だ。それを増幅くんで範囲を“この離れ”に固定、増幅してるからな」

「この子なら本家の結界も大丈夫なんじゃないですか?」


 晃生さんは調整が必要だと言っていたけれど。


「結界の範囲指定が上手くできていなくてな。光の膜が室内に見えているだろう?」

「――そういえば」

「外側が素のまま、無防備なんだ」


 素……。


「守れるのが内側だけってのは、屋敷の守りとしてはどうよ? って感じでな」


 玄関から作業用机のところに戻ってきて、はっはっはと笑う晃生さんに、私は思ったことを伝えます。


「それでもすごいと思うんですが――」

「……だといいんだが」


 晃生さんは、苦笑しながら厚めのコルクボードを引き出しから取り出します。そして机の中央あたりに設置し、上に例の首飾りのトップを置きました。


「まぁ、そうなった原因もわかってはいるから、そこを調整しようと思ってたんだが――」


 机の上には外からの日の光が入ってきて、首飾りを優しく包み込んでいるかのようにも見えます。

 晃生さんはそのトップを人差し指でそっと撫でながら言いました。


「この首飾り、力の系統は“浄化”だろう?」

「はい、おそらく……」


 日の光と混じって溶け込んでいるようにも見えるけど、ハッキリとわかります。その子の纏う白い光が。


「やっぱりか――。

 “自分”というものを保つので精一杯で、今もあまり声は聞こえないが……もし呪い化を防ぐのに成功したら、屋敷の外側の守りを頼んでみようと思っててな」

「この子に?」


 浄化と守り、少し方向性が違うけれど……


「マクラメが最大に力を発揮するのが“守り”の力だからな。浄化と守りの力が合わさることになる。本当に成功したら、きっとすごいことになる――」


 これから、ものすごく危険で大変なことをやろうとしているのに、どこか楽しそうにも感じる晃生さんの表情と声に、なぜか私はハンドメイド仲間たちのことを思い出します。


 あの人たちでも、きっとそうやって言って、楽しそうにこの事態を超えていくんでしょうね、と――。


「いいですね、それ――私もみてみたいです!」


 失敗したら、と考えると……緊張から心臓が口から飛び出しそうですし、なんなら手もちょっと震えていますが。


 精一杯楽しそうに、私も言ってみました。


「じゃあ……はじめようか」


 晃生さんはイスに座り、先に用意しておいたマクラメのパーツをペンダントトップの横に置いて言いました。


「その結界アーティファクト、使用者が敵意を感じるもの以外は素通りできるから気にせず発動してくれ」

「はい。では――」


  作業中の手元が覗けるように、晃生さんの左後ろに立った私は……シャボン玉のような結界アーティファクトを両手で包み込み、心の中で語りかけました。


(お願いです。呪いの力を抑えて――――)


 虹色のシャボン玉がペンダントトップを包み込みます。


「さすがだな……見たこともないくらい強い結界だ。これならきっと――」


 晃生さんが結界の中に手を入れて、左手で台座を、右手でカボションを押さえました――

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