042. 龍の巫女
「――どうした……?」
私の様子から何かを察してくれたのか、晃生さんは小さな声で言いました。
「奥の方にとても強いアーティファクトの光があります……」
よく見ると、アーティファクトの光はそれひとつではなく。
「あと、他にも複数のアーティファクトの光が見えます」
「なんだって――⁉︎」
複数の小さな光も、その雰囲気から普通のアーティファクトではない気がして、胸の辺りがざわつくのを感じます……。これは……いったい――――
「トウマ、お前もしかして目を瞑った方がアーティファクトの光がよく見えるんじゃないか?」
え? まさかそんな、と思いつつ目を閉じると、
「み……見えますね……」
先ほどよりもハッキリと見える光に、私は動揺しながら答えます。
「――龍の目か――」
「龍の……?」
「その能力の名称だ……。ありとあらゆる能力のアーティファクトを感知し見抜くと言われている」
「そう……なんですか……?」
いまいち理解ができず、疑問系で答えてしまいました。
「この先はな、大きく道が左右に曲がっていて、直接は見えないはずだ」
そんな……よく目を凝らしてみると、光の見えている方角の数メートル先には、暗くて見えづらいけれど岩壁が――!
「そんな――」
「再生の日の数年後、龍石神社をあの土地に移した“古の巫女”がいた。その巫女はトウマと同じような、視る力を持っていたらしい。
そしてその巫女は、他にもいくつかの特殊な能力を持っていて――龍石と共に人々を助け、やがて『龍の巫女』と呼ばれるようになった――。
古の巫女の中でも、そういった力を持つ者はごく稀。これまでそう呼ばれた巫女は、その初代を含めて三人しかいない」
特殊な能力って……
「もしかしたら、トウマは龍の巫女なんじゃないか?」
「そんな――そんな大それた力、私は持ってないです……! 特殊な能力なんて――――」
古の巫女という呼称でさえ私には大きすぎると思うのに、さらに稀少らしい“龍の巫女”だなんて――あり得ないです――!
「そうか……? でも、そういえば……アーティファクトの放つ光の色も、見えるだろう?」
「――そうですけど――」
自分に対して
てっきり、アーティファクトの光には色がついているものと思っていたのですが……
「通常は……色がついて見えるものじゃないのですね――?」
「そうだ。発動時もそうでない時も、白っぽい、黄色っぽいという程度の違いくらいしかない」
その情報に驚きはしました。が……それが何かの役に立つのでしょうか――
「今見えている大きな光、それは何色をしている?」
「色――それが……なんとも形容し難いのですが……」
私は目を瞑り、その方向を見つめました。
心なしかさっきよりもハッキリと見えるその光は――
「白い光の周りに――黒い……光が――――」
自分で言っていても……黒い光だなんて、意味がわからないのですが――そうとしか言えませんでした。
「黒い……光だって――⁉︎」
晃生さんはその光のことを知っているのか、表情をこわばらせてそう言うと、口をつぐんでしまいました。
黒い光はどこか苦しそうに蠢いて、周りの赤青黄色、色とりどりの光はどこか不安げに漂っているように見えます――。
が、その動きにどこか規則性のようなものを感じて……
「たぶんですが……人が一人、いますね――そこに」
黒い光が人の胸の辺りだとすると、少し下腰のあたりに複数のアーティファクト。
そしてそのまた下の方に、色鮮やかな緑色の光が二つ。
足、靴のあたりにスーちゃんと系統の似たアーティファクトを着けている……?




