041. 光の道標
「思ってたより……大きいですね――」
私は洞窟の天井部分を見上げて言いました。
「空間の固定、本当に……」
私の言葉に、晃生さんが質問をしようとしましたが――
「大丈夫みたいだな」
胸に着けたブローチ、スーちゃんが光をピカピカと、イエスを意味する三回点滅をして返事をしていました。
「ですね。では、スーちゃん。これから私たちが通る場所の空間をオンタイムで固定して行ってください」
「……全体を、か?」
晃生さんが少し心配そうな声で聞いてきました。
「洞窟内部“全体”ではなく、天井部分に当たる岩肌の“表面”を、です。厚さ五センチくらいをイメージして固定しますが、私一人を崖の上まで運ぶのよりは楽……みたいですよ」
ゆらゆらと光り続けているスーちゃんを見ながら私は言いました。
「……こいつの声、聞こえてる――わけではないんだよな?」
「残念ながら……。この子の光り具合から予測してます」
「それは……すごいな――」
驚いた顔をして私を見る晃生さん。
彼ががこう言うということは、私の予測が合っているということで……嬉しいですね――。
「さ、行きましょう。場所はわかるんですか?」
「一応、な。もしかしたらトウマの方がわかりやすいかもしれないぞ。とりあえず進んでみよう」
私の方が?
晃生さんについて洞窟の中へ入ると、その意味はすぐにわかりました。
「なるほど、目印にアーティファクトが置かれているんですね?」
暗い洞窟の中を進んでいくと、点々とアーティファクトの小さな光が奥に続いているのが確認できます。
「あぁ、そうだ。人が一定の距離まで近づくと明かりがつく仕掛けになっている。
これのおかげでランプアーティファクトを使わなくて済むのはありがたいな」
腰に下げている小さなランプ型のキーホルダーを指して言う晃生さん。
ゆっくり内部へ進むと、アーティファクトが反応して足元には十分な明かりが灯りました。
「発掘作業でよく使われるアーティファクトだ。ただ、近づかないと明かりが付かないから、急ぐ時には不向きだ。
まぁ、こんな洞窟内で急ぐことなんてないと思うがな」
言いながら大きめの岩を乗り越えていきます。
私はスーちゃんの力を借り、足を置く時だけ維持する空気の階段を作って後を追いました。
「そういえば……この洞窟って、どこか別の出口に続いてるんですか?」
奥の方から、微かに空気が流れてきているのを感じて私は聞きました。
「通じてはいるらしいが、人の通れる大きさではないそうだ」
「そうですか――」
いざとなったらそちらから出ることができるかも、と思いましたが。そうは問屋が卸さないようですね……
何かあっても対処ができるように。色々な方向へと思考を巡らせていたその時――。
進む先の方に違和感を感じて、そちらの方を注視してみました。
「――⁉︎ 晃生さん、ストップです――」
できる限り小さな声で、晃生さんの着物の袖を掴んで私は言いました。
点々と続くアーティファクトたちのずっと先には、一つの大きな力を持つアーティファクトの光が――




