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017. 朽ちゆく神へ――二人の想い

「なぁトウマ――お前はどう思う?」


 龍石神社からだいぶ離れ、随分と白んできた空に、朝露が煌めく森の中。

 ゆっくりなペースで進んでくれている晃生さんが聞いてきました。


「クロ……龍石について、ですか?」

「あぁ」


 表情は見えないけれど、その大きな背中がどことなく悲しそうに見えました――


「私はクロを……龍石を朽ちるに任せることはしたくないです――」


 出会って、間もない私でもこう思うのだから、晃生さんはきっともっと――


「俺もだ……だが本人に全くその気がないのがなぁ……」


 それは確かに――本人が望んでいないことを関係のない私が手を出して良いものかどうか――。けれど……


「そんなこと――関係ないです」

「関係ない……?」


 晃生さんが歩を止めて私の方を見ました。


「はい。龍石がこのまま朽ちるのは、私が嫌なんです。だから精一杯考えて、対策を講じれるものなら講じます――」


 そう言い切ったものの……それが龍石のためになるかどうかは……正直わかりません……


「何というか……コレは私のエゴなんですが……どうしても龍石にはもっと長生きしてほしいんです――」

「ははは……良いな、それ!」


 また。ぽんぽん、と私の頭に手を置く晃生さん。


「じゃあ……今晩あたり、龍石が長生きしたくなるような策を互いに出し合ってみないか?」


 頭に手を置いたまま、そう問いかけてきます。


「望むところです!」


 そして私たちは、決意を新たに高樹家の本家へと向かいました。


「そろそろで森を抜けるぞ」


 そう晃生さんが言った時、そこには木々に呑まれた鳥居が建っていました。所々色が落ち、古ぼけていて……しめ縄はかろうじて付いている、といった感じで……


 晃生さんは鳥居の所で立ち止まると、柱をそっと撫でました。


「ここが本家の土地じゃなかったらな……俺が勝手に切って手入れするんだが――」

「私有地……なんですか?」


 そこは、これといった目印もなく、森の一部にしか見えない場所でした。


「龍石神社を除くこの山一帯が、な」


 それは……またなんと広大な――?


 鳥居の向こうには草がまばらに生えた空き地が横に広がり、十数メートル先には石垣の上に木で作られた塀が大きなお屋敷を守るように並んでいます。


 もしかして……いや、もしかしなくともあのお屋敷が本家――


「――大きなお屋敷ですね――」


 その大きさからも、かなり大きな……力のある一族なのだと推察できます――。


「……あぁ……」


 塀には裏口のような小さな出入り口があり、草をより分けるように細い筋が一本、そこまで続いています。


 さわさわと草の音をさせながらその筋を進む晃生さん。これまでよりゆっくりな感じがするのは気のせいではないのでしょう……


「この時間なら……本家の者との接触はないと思うが――嫌な思いをさせるかもしれん。そこだけ先に謝っておく――」


 やっぱり、そういうことを気にしてるんですね……。

 晃生さんの優しさが身に染みてくるようで心が温かくなります。


「謝罪なんかいりませんよ。本家の方々が何を言っても、それはその人がどういう人なのかを端的に表してくれているだけです」


 そう……SNSでの文字(ことば)も――


「本当にすごいな、トウマは――」


 私が……自身に対しての戒めとしても口にしたその言葉で、少しは気を持ち直せたのか、晃生さんは先ほどよりは明るい声で嬉しそうに言いました。


「とりあえず当面の食糧と、トウマの服の調達をしよう」

「お手数をおかけします」


 ギィィ、と音をさせて人一人が通れる程度の大きさの木の扉を開くと――


「晃生か――こんな時間に何だ?」


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