015. 古の巫女
「あの……あちらの方に逃げたようですけど、追いますか――?」
「いや……どうせまた来る。追ってる間にここが手薄になることは避けたい……ってトウマ、あの暗闇の中見えてたのか⁈」
「途中から、なんですけど……持ってきた作品たちのどれかが、あの事態に対応できたようです」
驚愕の顔を見せる晃生さんに、私は答えました。
自分の視界を確保するタイプの物なんでしょうか? いまいちピンとこないのですが。
「なかなか貴重な能力のアーティファクトのようだな……。それとトウマ、お主あの暗闇の中体も動かせていたな?」
「はい。手も足も普通に動かせましたが……?」
龍石……クロの質問に私が答えると、晃生さんが先ほどよりも驚いた顔をして私の顔を見ます。
「なるほど、お主アーティファクトの同時使用が可能な者なのだな」
同時使用、って晃生さんが厳禁だと説明していたあの――?
「そう――なんですか?」
「何で疑問系なんだ⁉︎」
「だって、全く意識してなかったんですもの――!」
「まさかお前、古の巫女か――!」
古の巫女?
「なんですかそれ?」
「古の巫女とは、アーティファクトを壊さぬよう己の内の力で補助をし、さらなる力を引き出せる者の総称だ。数年前に最後の巫女が亡くなって、以来は……」
そんな大それた力が私に備わっているだなんて、到底思えないのですが――
「“再生の日”直後には、同時使用ができる者達はチラホラいたのだがな……」
再生の日……?
また、初めて聞く単語に意識が向いてしまいます。その単語から、とても穏やかなものではないと想像はつきますが――
「だが、コントロールする力はまちまちで……多くのアーティファクトが無理な使用によって失われていった――。
そして新しく生まれてきた子達には、等しくその能力がなく。全てのオリジナルが破壊し尽くされる前にと規制がされるようになったのだ。
トウマが再生の日よりも前の時代からやってきた人間ならば、同時使用ができても不思議なことではない」
「たびたびすみません、再生の日って何ですか――?」
先ほどから聞いてばかりなので、少し気が引けましたが、興味に勝てず私は質問しました。
「そこらへんの説明はまだだったな……再生の日、それは――約七十年前。ありとあらゆる天変地異が起きて世界が崩壊した日のことだ……。人の数は激減し、そのままでは人類は滅亡の一途を辿ることになるのではと思われていたらしい――」
「流星が大地に落ちたのを皮切りに、地震や津波がおきたからな……あの時、本当に沢山の人が亡くなってしまった――。
我がこのような力を得たのはその頃からで、ひびも、その頃に入ったものだ」
そんな――大変なことが――――
人類滅亡の危機までいく災害なんて、想像もできない……私の知る災害など、取るに足らないものなのだろうと思うと、私は何も言えなくなってしまいました……
「アーティファクトというものが認知されだしたのは再生の日以降。
いつ誰が気づいたのかはわからないが、その存在はあっという間に世界中に広がっていき、現在に至る」
その災害で、この世の理が変化した――ということなのでしょうか……?
私のいた時代がここに繋がっているのなら……もし元の時代に戻れても、その天変地異に巻き込まれる可能性があります――
でも……だからといって、戻りたくないとは思っていません。なぜなのでしょう……天変地異なんてものを越えて生き残っている自分なんか、想像できないのに――それでも私は、帰りたいと思っている――――
「そう……なんですね――――」