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009.作り手の想い

「何か心当たりは――」


 そこまで言って、晃生さんは何故か私の方をじっと見つめました。


「トウマ……そのネックレスは――」


 私の胸には先日完成したばかりのドラゴンブレスライカ。


「この子は私が作ったドラゴンブレスライカという名の子ですが――」


 そういえばあの時――龍石のあの人が『我の力を増幅するそのペンダントは――』と……


「声が聞こえなかったから、気づかなかったが――ソイツも相当な力の持ち主だな……!」

「え――」


 それはどういう――


「どうやら……そのネックレスが龍石の力をサポートしたみたいだな」

「確かにあの人はそのような事を言っていましたが……本当にこの子にそんな力が――⁉︎」


 胸にかけたままペンダントを手に取り見ると、揺らめく虹が見え隠れしているのはこれまで通りです。そこに――全体を包み込むような淡い光を確認して、私はさらに驚きました。


 光はどんどん強くなっていき、内部の虹と共にゆらゆらしています。


 その様子から“嬉しそう”に感じるのは……気のせいでしょうか――?


「今まで黙っていたのは、俺が信用できるかどうか、伺っていたんだと」

「……!……」


 驚きと、ワクワクで動悸がおさまりません。手に持つこの子が、どのような意志を持っているのか――シリタイ――


「はっはっは、よく喋るやつだな。お前さん今までよく黙ってられたな!」


 え……一体何を話して……?


「ソイツ、トウマのことをベタ褒めしてるぞ」


 笑いが止まらない様子の晃生さん。

 ちょっと待ってください。一体私の何を話して――


「それで、その時トウマはどうしたんだ?」


 ドラゴンブレスライカに向かって問いかける晃生さん。

 楽しそうなのは良いのですけど、これは――――


「ありゃ、黙っちまった」

「……ダメですよ晃生さん。

 確かに私はこの子達の声を聞きたいと思ってます。けど――話したことを勝手に他の人に伝えるのは、よくないと思います。

 何を話していたのか……めちゃくちゃ気になりますけど――」


 私はドラゴンブレスライカをじっと見つめて、右手の人差し指で軽く撫でました。

 揺らめく虹が、深い赤色が、何かを語りかけてくるようで……でも私の耳には聞こえない――。


「大事な事だと思うので、もう一回言わせてください。二人だけで話した内容を、許可を取らずに他の人に話してはダメです」


 キッパリと、晃生さんの目を見て私は言いました。

 特に――この子達は、私に声が聞かれることを想定していないのだから、と。


「――それはすまなかったな……」

「あなたもですよ、ドラゴンブレスライカ。

 私の、私以外の人が知らない言葉や行動、そういったものを勝手に他の人に話したらダメです」


 私は晃生さんと自分の胸のネックレスを交互に見て言いました。

 すると、双方から“しょぼん”とした空気を感じます。


 私の話をちゃんと聞こうとしてくれている――


 二人の、その素直な様子に私は思わず微笑んでしまいました。


 自分の作ったアクセサリーに話しかける。

 人前でやるのは初めてで、ちょっとドキドキするけれど――。

 面白いですね、違和感もなく、とても自然な気がします。


「次からは気をつけてくださいね、二人とも」

「……すまない……」


 晃生さん、人当たりが良いし優しそうな人だとは思うのですが……どこか私と似たような雰囲気(コミュ障)を感じますね……。


「とりあえず、話を戻しましょう。

 ドラゴンブレスライカ……じゃ長いのでこれから貴方のことを“ライカ”と呼ばせてもらってもいいですか?」


 私はドラゴンブレスライカのネックレスをじっと見つめて言ってみました。


「イエスなら三回、ノーなら一回、光り具合をコントロールできますか?」


 そう続けてみると……揺らいでいた光がふいに動きを変えました。

 まるで頷くように――リズムを刻むように、三度の強弱を繰り返したのです。


 ――すごい――!


「では、ライカ。龍石は、貴方のおかげで力を……強化することができた、ということなのでしょうか?」


 私の言葉にライカの光はゆらゆらとしばらく揺れて、再び三回光りました。


「晃生さん、良ければ通訳をお願いします。

 おそらくですが……今の質問の答え、“多分そうだと思う”程度のイエスだったと思うんですけど――」

「よくわかったな、その通りだ。“絶対じゃないけど”と言っている」


 光の揺れ具合で、勘で思ったことを聞いてみたのですが、正解だったようです。

 少しだけですが、自分でも意思疎通ができそうなのは、とても嬉しいですね……!


「ライカは――自分の力を“浄化の炎”だと認識しているようだな」

「浄化の……ですか? ドラゴンではなく」

「ドラゴンズブレスというのは、その見た目がまるでドラゴンの吐息のようだから、ということから付いた名なのだろう?」

「はい。私が見つけた資料にはそのように書かれていましたが……」


 その話はライカから聞いたものなのでしょうか……晃生さんはライカを見ながら、耳を傾けながら話を続けます。


「トウマ、ドラゴンの吐息にはどのような力があると思っている?」

「力……ですか――」


 初めて写真を見た時、私の目はそのドラゴンズブレスに釘付けになって――――


「全ての物を焼き尽くし――浄化する、と――――」


 まさか――


「私のイメージが……反映されている、ということですか……?」

「アーティファクトとはそういう物だ」


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