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プロローグ
突然の地震、そして突風。
ちょうど石段の一番上にいた私は、なすすべもなく転げ落ちる――はずでした。
「――!――」
実験を重ねてようやく出来上がったドラゴンブレスライカ。そのペンダントと迫り来る石段が目に映り、これから受けるだろう痛みを覚悟した私は、目を固く瞑りました。
けれど痛みに襲われることはなく。代わりに感じたのは、下から吹いてきた突き上げるような風と、誰かに抱きとめられたような感覚――
おそるおそる目を開けてみると……長い黒髪を一つに束ねた、整った顔立ちの男性が目に入りました。
「我の力を増幅するそのペンダントは一体――⁉︎」
何故だか驚愕の顔をしてペンダントを見る男性。
「――これは私の作ったレジン作品ですが……」
「このレベルの物を作っただと⁈ お主――何者だ?」
それはこちらのセリフと思うも、空中に浮いているという事実に気が付き息を呑みます。
そして、付近の変化に気がつきました。すぐそこにあるはずの街がなく、車の音もしない。
湿った土のにおいと静けさは、まるで深い森の奥のような空気で――