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氷の女王  作者: 中川 篤
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八幕 氷の女王の援軍



 玄関に出ると、昨日の子たち――ぼくの友だちだった。氷の女王には光明が見えた気がした。逃がすものかと三人をふんずと捕まえると中に招じ入れた。それからソファに座らせ(自分は立っていた)、昨日、ぼくがどこかに行きたがっていなかったか尋ねた。


――「さあ……、知らないです」


 そう言ったのはそばかすで顔の半分が埋まっている重田くんだった。昨日はマリカで一番はしゃいでいた気がする。

 氷の女王は尋ねた。

――「何でもいいから。何か言ってなかったか覚えてない?」

――「う~ん、お金が欲しいとか言ってましたよ」

――「お金? なんで」

 といって、はっと気づいた。理由なんて自分にあるにきまってるじゃないか。

――「勇ちゃん、今日ガッコ来てなかったけど、何かあったんですか」

――「それが分からないの」

――「えっ、それって、お姉さんがいじめるからじゃね?」


 重田くんが言い過ぎそうになるのをレオちゃんが止めた。眼鏡の、ややぽっちゃりした女の子だ。


――「そんなのまだわからないよ。けどそれでわたし、勇ちゃんに、競馬の話をしました。あの……兄がそれでお金を増やしたことがあって」


 それでレオちゃんは怒られると覚悟していたんだけど、話を聞いた氷の女王は、


――「それで行こうって話したんだ?」

――「いつか。みんなで何かの記念に」

――「そうなんだ……」

 重田くんが話に加わる。

――「何か、わかりましたか?」

――「ううん。ぜんぜん。そっちの子は何か知ってる?」

 といって、氷の女王は半くんに視線を泳がせたが、半くんはスマホをいじってばかりで身じろぎさえしない。レオちゃんが言葉を発した。「知らないですけど……でも、探すの、手伝います」


 くいくい、とスマホをいじってばかりいる半くんがおりこうちゃんの手を引いてスマホの画面を見るように突き出した。おりこうちゃんが画面をのぞき込むと、「あ」と、声を漏らして、氷の女王にも見るように言った。

 氷の女王は素早く反応して、その小さな液晶画面をのぞき込んだ。


 横浜駅周辺のライブカメラ映像だ。

 時間軸のバーを半くんがゆっくりと横にスライドさせる。開始から二十分あたりの映像で、半くんが画面の一点を指で指した。見覚えのあるTシャツ。そしてポケモンの野球帽。

 半くんは、いろんな意味で天才なのだ。


――「何でこんな場所に……」

――「勇ちゃんは、スマホは持ってないんですか?」

――「駄目、置いて行ってる」

――「警察に連絡して、あの辺りを探してもらおう」

――「私、あそこまで探しに行ってくる」氷の女王が言った。




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