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氷の女王  作者: 中川 篤
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六幕 氷の女王の帰宅



――「え、勇作が……それってどういうことですか?」

――「それが学校から電話がかかってきて、今日、来ておりませんって」


 氷の女王は校舎の柱時計を見た。二時十分。四時限目の授業終えて、くつろいでいるところだった。


――「いいから、落ち着いてよ……私が……私のせいかもしれないから」


 桜おばさんが何か言おうとしたのを遮るように、氷の女王はスマホを切った。昨日のケンカのこと、普段からきつく当たりすぎていること、そうしたもろもろを思い出して激しく動揺した。

 もし「バカ」なんて言わなければ、階段から落ちた時、あんなに過保護に振る舞わなければ、こんなに嫌われることもなかったに違いない。


 ベンチの横で110円の紙パックのジュースを飲んでいたおりこうちゃんが、何かを察したように、

――「だいじょうぶ……?」

 と、心配そうに尋ねる。

――「リコ……どうしよう?」


 氷の女王はおりこうちゃんに事情を説明する。おりこうちゃんは考え深げに眉根を寄せると、


――「とりあえず、先生に相談しに行こうよ」


       ☆


――「それは大変だな……」


 職員室の教師は皆忙しそうにしていた。今日は何か会議があるのだ。担任の多田先生を捕まえると、先生はわりと親身に話を聞いてくれたが、

――「でもそういうのは小学校の先生がやってくれるんじゃないのか? そうだと思うぞ」

――「それが分からないから警察に」

――「いや、そういうのはおれの一存じゃ決められないんだ。すまないな清川。まあお前はもう帰れ。折原、清川村の家知ってるだろ、送ってってやれよ。部活は休んでいいからさ」


       ☆


 二人は早引けした。警察に通報するのも生徒を家に送るのも全部教師の仕事じゃないのか。何とも言えない不満が、氷の女王の中で鬱屈した。しかし不満以上に悪い想像――事故、変質者、誘拐――がふっと頭の隅を横切るたびに、氷の女王は足元から大地が崩れていくように感じる。


――「大丈夫だって。今日はわたしも早引けするし、家についたらその桜おばさんって人からとりあえず話を聴こう? それから、どうするか考えようよ」


 氷の女王はこくこくと頷いた。




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