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男子校の姫はどうしても離れられない【その5】
それから服屋をいくつか見て回った後、2人はカフェに立ち寄った。
軽くランチを済ませ、薫だけ食後のデザートとして苺のパフェを頼んだ。
薫が幸せそうにパフェを口に運ぶのを見て、紡は口元を僅かに緩めた。
ふと紡は薫の頬に生クリームがついていることに気付く。
それを指先で掬い上げると、薫は驚き、きょとんとした顔で紡を見つめた。
「ついてた、生クリーム」
「…うん、ありがと」
薫は恥ずかしそうに口元をゴシゴシと拭う。
初心なその姿に紡の方がなぜだか照れくさく感じてしまう。
その後、薫と紡は海へ向かった。
薫がどうしても行きたいと言い出したのだ。
冬の海は人もまばらだ。
だが、その冷たさを理由にして、2人は寄り添って歩いた。
「これって初デートだよね」
薫がぽつりと呟いた。
紡は静かに笑いながら、「そうだな」と淡々と返した。
紡とのデートは最初で最後だ、と海に目を向けながら薫はしみじみと思った。
夕暮れの空が水面をオレンジ色に染める。
静かに寄せては返す波の動きを見つめながら、薫は泣きそうになった。
懸命に涙を堪えながら、か弱い声で紡に問いかけた。
「…紡はどうして告白してくれなかったの?」
紡は黙ったままで答えない。
それでも薫は続ける。




