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男子校の姫はどうしても離れられない【その3】
翌朝、いつものように登校したものの、薫の機嫌は最悪だった。
あれから父とは顔を合わせていない。
気まずくて、わざと時間をずらしたのだ。
「あーコンディション、最悪…。寝不足だからお肌もボロボロ…。はぁー、こんなんじゃ姫失格…」
「…なんかいつもより機嫌悪くない?」
通学路を歩きながら項垂れる薫に紡がいつも通り無気力に話しかけてくる。
横に並んだ彼を見ていると、薫の怒りが沸々と湧き上がる。
「うるさいっ! 紡のせいでしょ!」
薫は道の真ん中で怒鳴る。
近くにいた他の生徒たちは突然の怒声に驚く。
だが、紡だけは顔色一つ変えない。
「なんで告白してくれないの! 紡がちゃんと気持ち伝えてくれてたら…、僕は…」
目の端が熱くなり、涙が溢れる。
『僕は他の人と結婚せずに済んだのに』
その先の言葉は薫には言えなかった。
これが八つ当たりなのは分かっている。
でも、どうしても薫が怒っていることだけは紡に理解してほしかった。
「ずっと、ずっと僕ばっかり…、紡のこと…」
その瞬間、紡がそっと薫を抱き寄せた。
小柄で細い薫の身体は温かい腕に包まれながら、すっぽりと紡の身体に収まった。
「…今から駆け落ちでもする?」
ぽつりと、紡がいたずらめいた表情で言った。




