男子校の姫はどうしても離れられない【その1】
煌びやかなシャンデリアが夜の暗闇を背景に窓ガラスにその姿を滲ませていた。
その窓に細身のシルエットが影を落とし、重厚なカーテン越しにため息をついている。
ここは結城家の本邸。
その3階には薫の部屋がある。
蓮は自室の大きな窓に凭れかかりながら、夜の街をぼんやりと見下ろしていた。
クリスマスが間近であることもあり、イルミネーションに彩られた遠景は確かに美しく、普通ならば心を明るくするだろう。
けれども、彼の表情はどんよりと曇っている。
「クリスマスまでには告白しろって言ったのに…」
ぽつりと溢れる声にはどうしようもないほどに苛立ちが混ざっている。
薫が浮かない顔をしている理由は1つだけ。
宗田紡が原因である。
寡黙で無気力なのに、誰よりもカッコよくて、誰よりもずるい、薫が恋した男。
学祭の日、薫は紡にクリスマスまでに告白するように伝えた。
だが、紡が何も言ってくることはなかった。
薫がどれだけ構ったところで、紡はいつもわざと軽くあしらう。
それでも紡の瞳には薫だけしか映っていないような気がして、離れられなかった。
(それも俺の勘違い…?いや、でもあいつも僕のことを好きなのは認めている訳だし…、後は「恋人になってほしい」って言わせるだけなんだから…)
薫がうーんと唸っていると、部屋の外からドアが控えめにノックされる音が聞こえた。
「薫様、旦那様がお呼びです」
「…今行く」
もしかしたら唸り声を外にいるメイドに聞かれたかもしれないと思うと、薫は少し恥ずかしくなった。




