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男子校の姫はどうしても誘惑できない【後編】
「…紡、仕事中じゃないの?」
「んー、そうね。今はお姫様の騎士のお仕事中だな」
「え?」
「ほら、悪い虫が薫に寄ってこないように、ね?威嚇?」
薫は口元を手で隠しながら、可愛らしく笑った。
「ふふっ。僕のこと好きなの、知ってるから」
「自惚れてるな。でも、まぁ否定しないでおく」
周囲の視線などお構いなしに、2人の空気は濃密だった。
ふと、紡は真顔で尋ねる。
「そういうメイド服、着るの好きなのか?ノリノリじゃん」
「…好きっていうか、紡の気を引きたくてやってんの。引かれてる自覚あるよね?」
「あるな…」
「告白はクリスマスまでだからね。…もう、待たせないでね」
紡がぴたりと動きを止め、目を丸くする。
薫の大きな瞳は紡だけを見据えていた。
ふっと笑うと、紡はゆっくりと立ち上がる。
そして薫の耳元にそっと囁いた。
「あと1回、可愛いと俺に思わせたらな。頑張りたまえ」
頬を真っ赤に染めた薫の頭をポンポンと優しく叩くと、何事もなかったかのように紡は仕事に戻っていく。
ばっと振り返り、紡の広い背中を睨みつけながら、薫はスカートの裾をぎゅっと握りしめると、まだ誘惑されてくれない紡へのリベンジを心に誓う。
2人の攻防はまだまだ続くのだった。




