男子校の姫はどうしても離れられない【その6】
「…なんで?」
紡は優しく微笑んで、薫の髪にそっと触れた。
「お前が俺のこと、好きだって分かってるから。それだけで良かったんだよ」
「…最低」
泣き笑いになる顔を紡から隠すために薫は俯いた。
「僕、…何があっても紡が世界で1番好き」
紡は何も言わずに薫を抱き寄せた。
そして薫の頭に顎を乗せる。
「うん」
薫は紡の背に手を回すと、もしもあった別の未来をぼんやりと考える。
もし紡が告白してくれて、両想いになっていたとしても。
薫は結城家を見捨てることはできない。
どちらにしろ紡とは別れることになる。
だからこの恋はきっと始まりすらしなかったこの結末でよかったのだ、と薫は紡の胸に顔を埋めながらそう自分に言い聞かせた。
その後、薫は家に戻ると、父に言った。
「僕、婚約受けるよ。大丈夫、安心して」
はっきりと言い切った薫を見て、父親は少し悲しげな表情をしながら、「すまない」と返した。
それから薫と紡はろくに話すこともなかった。
薫が紡にちょっかいをかけなくなると、紡も話しかけてくることがなくなったのだ。
薫は一抹の寂しさを感じたものの、できる限り紡のことを思い出さないように努めた。
そして告白の期限だったクリスマスも過ぎた。
お互い受験に専念し、ただ時だけが流れていった。




