追跡
はい、みなさんこんにちは、歩くヘッドライトことヒロトです。俺は今先頭を歩いている。なぜかって? 階段を数歩登ってすぐ、サトシがすっ転んで俺たちを巻き込んだからだよ! 数歩で俺たちが転がってきたから一瞬クラスメイト全員騒めいたわ。委員長も涙目でにらまんといて、ごめんって。
「よく見えん!」
「……照らしながらいこうぜ」
「あんまり見えん!」
「ガラケーってライトそんなもんだったなぁ」
「よし、行くんだ、アンパ⚪︎マン号!」
「誰がアンパ⚪︎マン号だ!」
「見える!見えるぞ!」
「あははははっ」
サトシのガラケーでは明かりが足りず、試しにと俺がやってみたら、車のヘッドライトのごとく明るい。まったく、誰がアンパ⚪︎マン号だ。えっ? 写メ撮ったのメグミさん? あぁ、アンパ⚪︎マン号だわ……。
俺は魔眼(仮)を全開にすると先を照らしながら歩く。人間やめた感があるわ。
特にハプニングもなく進むと、文字通り急に暗闇から抜け、眼前に緑が広がった。
「そこまで眩しく感じないのな。空? 森? 地下100階節はどこへ……」
「いやいや、ヒロト。ダンジョンでこうゆうのお約束だろ? まぁ、俺もちょっと怪しんでるけどさ。普通洞窟とかからだよなぁ」
「もうここ外なんじゃないの?」
「あー、ファンタジーとかじゃ地下とかにこうゆう空間が普通にあるってのがお約束でさ。まだ確証もてないんだなこれが」
「ふーん。でも洞窟よりはいいかも」
「暗いのと狭いのは苦手だからな!」
普通に太陽のようなものがあり明るい。正直光源とか洞窟だったらどうするんだって思ってたから、少し安堵した。先生もいたし、周囲を探索にそのまま行ったのか?
「何かいたら危ないのは変わらないからな。気を引き締めようぜ」
「おぅ、ってもどこいったんだろうな」
「闇雲に歩いたら2次遭難しちゃうよね」
「むぅーん、こっちだ」
「って、おいサトシ」
しばらくしゃがんで何かを見ていたかと思うと、ずんずんと進みだすサトシ。止めようと思ったが、とりあえず聞いてみる。
「なんでだ?」
「他の枝は折れてない、こっちの枝が何本か折れてる。よくみると踏みしめた跡もあるぞ?」
「言われてみればそうかも」
「野生児っぽいなぁ」
「照れるぜ!」
「野生児扱い嬉しいのかよ」
レンの野生児発言にも何故か力瘤をつくり満面の笑みで答えるサトシ。そういえば訓練の一貫とか言って合宿でキャンプ行ってたなぁ。なんも考えてない時とこうゆうときの差が激しいんだよな。俺たちはズンズン進むサトシの後を追う。
思わぬところでサトシの活躍により、先生達を追うことができそうだ。トモキ1人ならともかく、女性3人もいる以上すぐに追いつくだろう。マラソンとか絶対走らずスマホをいじりながら歩いてたからな、ユイとエミの2人は。ショウタもだらだら歩いてたっけ。本気を出すまでもないとか言ってたわ。確実に体力はないだろう。
痕跡を見逃さないように俺たちは歩く。風も吹いているし、木々がざわざわと揺れている。同じような光景に、帰り道もわからなくなりそうだと不安になったが、レンが石を拾って木に傷をつけていた。目が合うとサムズアップしていたので、サムズアップで返しておいた。それを見てメグミもニコニコしている。こんなところにきても俺たちは相変わらずだなぁと思いながら歩いていると、サトシが足を止めた。
「何かいるぞ!」
落ち葉などの痕跡から、草むらの中に何かがいることが見て取れる。不自然にガサガサと揺れているそれに俺たちは息を飲んだ。初めての接敵だろうか。今気づいたが武器も何ももっちゃいない。サトシが前にどっしりと構え、レンがメグミを後ろに下がらせ、いつの間にか持っていた木の棒を構えた。俺はゆっくりとしゃがむと、石を拾う。サトシと目が合うと、コクリとお互いにうなづき合った。頼れる漢だ。思い切り振りかぶって草むらに石を投げる。
「いってぇー! うわー、勘弁してくれー! 俺は魔物じゃねぇよぉ!」
草むらから飛び出したのはショウタだった。着崩した制服は葉っぱや泥まみれで、泣きべそをかいている。俺が投げた石で怪我したにしてもちょっとぼろぼろだ。何故か俺たちから距離を取り、木の後ろに隠れしがみついた。
「いや、悪いって、でも声が聞こえたなら顔ぐらい出してもいいだろ」
「しっ、ヒロト、ショウタ君が隠れてたってことは何かいるんじゃ?」
「なるほど……」
メグミの言うことにもっともだと思った俺は、声をひそめ、ショウタに話しかける。
「なぁ、他のみんなはどうしたんだ? 何かに襲われたのか?」
「お、俺のことがわかるんだよな?」
「なにいってんだよ。ショウタだろ? それ以外になにがあるってんだよ?」
じっとショウタは俺たちのことをみると、やっと安心したかのように息を大きく吐いて膝から崩れ落ちた。
「俺たちは、トモキに……トモキに襲われたんだ……」
泣きながら喋るショウタの衝撃の発言に、俺たちは息を呑むことしかできなかった。