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登った先に待つものは

「くそっ、まじでむかつくぜ」


 長身で引き締まった身体、愛想良くしていれば芸能人にでもいなくもない整った顔。しかし、眉間には皺がより、金髪にピアス、着崩した制服は素行の悪さを顕著に表している。トモキは担任の教師を引き剥がすと、機嫌の悪さを隠さず力強い足取りで、壁伝いに階段をどんどんと登って行く。


「ねぇ、ちょっと待ってよ〜。うわっ、暗っ〜これ大丈夫なの〜?」

「待てってば〜。うわっ、暗いし、階段だるいんだけど〜」


 その後ろから、派手なメイクにスカートの下にジャージを着込んだ、トモキの彼女であるユイが、スマホのライトをかざしながら必死に追いかけていた。似たような背格好をしたエミもそれに続く。違いと言えばユイが長さが腰ほどまである黒髪、エミがそれよりもやや短めで茶髪なぐらいだろうか。


「あぁもう、くんぢゃねぇよ!」

「こらっ、だめです。なにかあったらどうするんですかー!」


 少し遅れながら、ショウタと担任のさくらが若干揉み合いながら追いかけていく。さくらは身長が低いほうなのだが、ショウタも似たり寄ったりの背丈だ。傍目に見れば子供が戯れあっているようにも見える。ショウタは背が小さく、金髪にピアス、襟足が妙に長い。髪の色、ピアスの位置。常にそばにいることからも、先頭を行く男を意識していることは間違いないだろう。その男の足がぴたりと止まった。


「うぉっ! あん? なんだってんだよこりゃ…」

「どうしたのトモキ〜? えっ!」

「うわ、何これ…笑えないんだけど〜…」


 3人はポカンと口を開け、足が止まる。後ろから追いついた2人も、似たような表情になり呟いた。

「「森……?」」

 

***


 話し合う間もなく登り階段を登って行ってしまった5人。俺たちはどうしたものかと首を捻る。周囲も似たようなもので、ざわざわと騒がしい。肩にぽすっと負荷がかかり、軽薄な口調でレンが言った。


「どうするよ? 行っちゃう?」


 くいっと親指を階段に向ける。メグミはオロオロとしているが、サトシは鼻息が荒い。俺は目を細めてサトシを見ながら息を吐く。


「ミイラ取りがミイラになりそうだなぁ」

「負けん!」

「だから何にだよ!」


 根拠のない自信に思わず突っ込んでしまった。そんなだから心配なんだよ! 多分どこの集団も行く、行かないの相談してそうだな。よし、ここは一旦投げよう。


「委員長! どうする?」

「へっ!? わ、私?」

「まぁ、委員長だし……」


 今ここで肩書きがあるの委員長しかいないんだよ。すまん。指針は決めとかないと、このまま全員バラバラはまずい。


「個人的には先が気になるから行きたいけど、さ。戻ってくるならそれが一番だし。少し待って戻ってこないようなら俺たちが行ってくるってのでどぉ? 他に行きたい人がいたら譲るけど」


 レンは目がキラキラしてるし、サトシは……なぜかスクワットで体を温めている。あんまりやると膝痛めるぞ。うん、行くと言ったら行くだろう。委員長に話しかけながら全員に聞こえるように俺は言った。


「え〜っと、そ、そうしよっか。みんな一旦待機で!」

「ねぇ、アヤカ、タイマー使えるみたいだから30分……いや、15分ぐらいしたらってのはどぉ?」

「よし、それ、それにしよっ!」


 急に振られてテンパる委員長を、ヒナがフォローしてくれている。ナイスだ副委員長。ってかタイマーあるんだ。メガネで使えんの!? っとそれは置いといて。目先の目標が決まったら、さすがにちょっとみんな落ち着いたようだ。


「戻ってこねぇなぁ」

「先生も一緒なのにね?」


 レンが階段をじっと見つめつぶやくと、メグミも首を傾げた。危険そうだったら戻ってきてもおかしくないんだが、判断がつかない。安全そうだから進んだか、それとも戻れなくなった? そうこう考えているうちに、ピピピピッ、ピピピピッとヒナのメガネからアラームが聞こえてくる。どこから鳴ってるんだろうか。クイっとメガネを上げると、アラームが止まった。使いこなしてんなぁ。ヒナが残念そうに言葉を漏らす。


「立っちゃったねぇ」

「行くしかなさそうだな」

「任せろ!」


 言い出しっぺだし先陣は切ろうかと思ったら、サトシがずんずんと進み始めたの肩を掴んでステイする。ステイだって、力つよっ! とまれや!


「メグミはどっちでもいいぞ?」

「うーん、どっちみち不安だしなぁ、まだ好奇心の方が勝つかも、行くよ」

「えっと、私たちはどうしよう?」

「あぁ、委員長達は待っててよ。そうだな。俺たちは30分ぐらいしたら一度もどるからさ、戻らないようなら次のグループでも出したら? もめるようなら全員でもいいんじゃない?」

「わかった。話し合っておくね」


 申し訳なさそうな顔をしながら委員長はうなづくと、他のグループのほうへとヒナと駆けて行った。


「さぁーて、あの先には何が待ってるんだか」


 俺は魔眼(仮)でタイマーをセットする。不安を押し殺すように、階段の暗闇を睨みつけるようにしながら、サトシを先頭に俺たちは歩き出した。


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