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鑑定機能

「包帯はわかるけどさ。シリンジってことは、液体を針で体にいれるってこと……?」


 みんなの視線はシリンジの針へと向いて固まっていたが、メグミの発言が時を動かし出す。こほんとわざとらしい咳き込みが聞こえ、さくら先生がシリンジをまじまじと観察した。


「どこからどうみても注射器です。この組み合わせだとこの赤い液体をってことのように思えますが、衛生状況や素人である私たちが使えるような代物ではないですね」


 しばらく眺めていただけだった先生だが、きづくと手に持ってうんうんと唸っている。あれ? 帰属条件はどうなってんだ?


「メグ、譲渡とかした?」

「えっ? そういえばしてないや? なんで?」

「あっ、なんだか普通に触れましたね」


 どうゆうこっちゃっと混乱していると、ひながメガネを文字通り光らせながら赤い液体を手に取った。


「ポーション。とても苦い。生命力を回復させる。飲んでよし、かけてよし」

「えっ? ひな?」


 委員長が突然呟き出したひなを心配そうに見つめるが、ひなは言葉を続ける。


「包帯。巻いた患部の痛みを緩和。回復力を促進させる。ポーションを浸すと効果がアップ」


 全員いつの間にか、聞き逃すまいとひなの言葉に耳を傾けていた。


「注射器。液体を直接注入する。最も効率的に液体の効果を引き出すことができる。使用に関して衛生問題は影響しない。ちなみに、簡易治療キットは共用アイテム……だってさ」


 ひなのメガネがキラリと光った気がした。俺も意識して魔眼(仮)を起動すると、ある項目を発見し、ひなの言動が理解できた。


「ちょっと、どうしたのひな!」

「へっへへー。私の端末はこれなんだ。じーっとみてたらさ。アプリみたいに鑑定ってのがあったのよ」

「おっ、気づかなかった。鑑定ってチートっぽいのに標準装備かよ!」


 委員長がひなに詰め寄ると、メガネをくいっとしながらネタバラシをする。レンのいうように、異世界ものではチートであったりするのだが、アプリのように鑑定は誰にでも使用できるようだ。さらに、先生が指摘した問題に答えるように説明書きがあるのが怖い。


「回復力? 衛生に問題ない? 誰が判断しているの? でも素人が針を刺すなんてこと……。そもそも生命力をって、危険があるってこと……」


 スマートウォッチでどうやって鑑定するのかなんとなく気になって先生に視線を向けると、頭から煙が出そうなぐらい考えこみぶつぶつと呟いていた。俺たちが楽観的すぎるのかもしれんが、大人って大変だなぁ。今はそっとしておこう。


 そんなこんなである程度の検証を終え、されこれからどうするかと思案していると、上り階段の方がにわかに騒がしくなっていた。


「おらっ、早く行けよ。一番乗りさせてやるって言ってんだろ!」

「びびってんのか! ともきが一番乗り譲ってやるって言ってんだろうが!」

「もぉー、早くしてよね」

「まじきもいんだけど。せめて役にたってよ〜」


 またあの問題児どもだった。トモキとユイに続き、ユイの自称ずっ友エミ。トモキの自称親友ショウタと不良グループ勢揃いだ。トモキが蹴りを入れ、ショウタは肩パンを、えっと、、、タナカ、、、とタカハシにしている。うん、タナカとタカハシだ。


「ちょっ、ちょっ、無理だよ! 死んぢゃうっ!」

「せめて、チート能力に目覚めてからにして!」

「なにやってるんですか! 危ないからやめてください!」


 真っ暗で見えない上り階段に向かって、タナカとタカハシを追いやっていたところを見ると、先行という名のカナリヤにしようとしていたようだ。さすがのさくら先生も命に関わりかねないことに大声で走り寄って行った。さくら先生が言い聞かせようとしているようだが、4人は悪びれもしていない。そのやりとりの隙をついて、2人はこちら側に抜け出してきたようだ。なんとしなしに声をかける。


「よっ、災難だったなぁ」

「ほんとほんと、びびってるのは自分たちだっていうのに勘弁してほしいっよ!」

「だよねだよね! 自分たちが行く勇気がないからやるんだよ!」

「あぁん! 誰がびびりだって!」

「「ぴぇ〜ん」」

「うぁっ、こいつら…」


 解放された途端に大声で聞こえるように煽る2人。トモキの怒鳴り声に俺の背中に回って盾にする動作に澱みがない。ちなみにタナカがノッポでタカハシはぽっちゃりである。そして共通して早口。3年まで残っただけあって、結構な曲者だ。ちょっと心配した俺の良心を返してほしい。


「くそっ! てめぇら腑抜けと一緒にすんじゃねぇ! おいショウタ、行くぞ!」

「おぅ! って、えっ! 行くの!」


 沸点の低いトモキは舐められまいと階段を登り始め、トモキの腰巾着であるショウタは、内心状況にびびっているんだろう。登ると聞いて急に不安そうな顔をしながら後ろをついて行った。目があったが知らん。


「ちょっ、トモキ行かないでよ〜」

「まじか〜」

「ちょっと! 待ちなさい! 何があるかわからないんですよ!」


 取り巻き3人はともかく、止めようとさくら先生もいっちまったよ。どうすんだこれ。

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