花畑
1つ飛ばして投稿していました。修正済みです。申し訳ない。
違和感があったらすぐ報告。それを見事同時に果たした俺たちは、顔を見合わせ苦笑しながら歩き始める。どうせMAPはわからない。まずはこの匂いの元を辿ってみることにした。一番前が俺、後ろにメグミがついて歩き、その両サイドにレンとサトシがついて歩く。森なので歩きづらいが、一列になり一番前や殿が何かあったりするのを防ぐためだ。幻惑蝶の例があるからな。
RPGよろしく一列に歩かなければいけない理由もないだろう。3人曰く俺が一番前なのは決定事項らしい。これだから多数派優位の民主主義はいかんよ。解せぬ。徐々に強くなっていく香りにレンが顔を顰めながら呟く。
「すっげぇ甘ったるい匂いだなぁ」
「あー、レンは甘いの苦手だっけか?」
「私的にはいい匂いだと思うんだけどなぁ」
「食えるものならいいな!」
甘いものが嫌いなわけじゃないが、はちみつを濃くしたような独特な香りは好き嫌いがわかれそうだ。周囲を警戒しながら歩いていると、木々が途切れ景色が一変した。
「うわ……」
「綺麗……」
「すっげぇな……」
「食えるのか?」
一面色とりどりの花畑が視界いっぱいに広がる。幻想的な風景に、約一名を除く俺たちは息を呑んだ。別に花が好きとか嫌いとかじゃなくても、これはちょっと感動してしまうほど美しいと思う。ある意味ぶれないサトシはすごいと思うよ。うん、まじで。
「結構歩いたし、景色も綺麗だからここで少し休憩するか?」
「あぁ、そうだな。階層も跨げたしいいんじゃね」
「賛成賛成! お弁当じゃなくて保存食だけど、毛布敷いて食事にでもする?」
「む? 早くないか?」
「まだ1日は猶予あるだろ? 大丈夫だって」
「そーそー」
「しかし、まだ何も見つけてないぞ!」
「綺麗な花畑見つけたじゃん! サトシは夢がないんだからぁ〜」
「いや……だがしかし……」
俺たち3人が休憩しようって提案しているのに、頑なにサトシは受け入れようとしない。全くさっきの民主主義はどこへいったのやら。こんなに綺麗な花畑を俺たちが最初に見つけたんだ。少しぐらいこの景色を楽しむぐらいいいじゃないか。ここで暮らしたっていい。あぁ、とってもいい香りだ……。
「お、俺はバカだ、だからどういったらわからないが、いつものお前ららしくないぞ! 何かがおかしい! そんなとき、ど、どうしたらいい! お前らならどうする!? ヒロト! レン! メグミ!」
「ん〜? わたしだったらヒロトとレンに頼るよね〜?」
らしくもなく慌てふためくサトシの声に、いつも以上のぽやっとしたメグミが答えている。おいおい、他力本願かよ〜。ま、考えを理解したうえでの行動力は頼りになるよな〜。
「サトシはどんと構えてりゃいいだろ〜。体力担当ってやつ? 考えるのはヒロトの役目、悪巧みは俺の役目だぜー!」
いつも以上にヘラヘラしたレンがサトシの肩を叩きながら、俺の方を親指で指している。あいつ悪巧みって認めやがったよ。あー、あれだ。これやばいな。頭に霧がかかったような……。
「ヒロト!」
サトシが俺の両肩につかみかかるようにしてゆする。いや、顔ちけぇよ。んーそうだな。
「……粉出して俺たちにぶちまけろ」
「わかった! うぉー!」
靄がかかったような頭で、捻り出した案をサトシになんとか伝え切った。インベントリにしまっておいた幻惑蝶の鱗粉をサトシは取り出し、俺たちの顔面にぶちまけた。その瞬間からすっと頭が冴え渡る。
「レン! 片っ端から鑑定かけろ!」
「おう!」
「メグミと俺は粉だして待機! メグミはレン、俺はサトシの側で異常を感じたらすぐ粉を使え!」
「わ、わかった!」
「サトシは……花畑を踏み荒らせー!」
「おっしゃー!!」
あれだけ時間との勝負と思っていた俺たちが、悠長にここでのんびりしようとしていた。あまつさえずっとここにいようとさえしていた。あきらかにやばい場所だ。完全に花畑の中央にいる今、異常をまた発症する前に現状を打破する!
「花……花……花……。違う、こんなあからさまじゃない? ってことは……見つけた! サトシ! 右側前方、花の根本にある小さな花だ!」
「どっせぇぇぇい!」
レンの言葉に、サトシは某怪盗のダイブよろしく飛び込む。立ち上がったサトシのその手には、非常に小さな星形の花を咲かせた一株が見てとれた。すかさず魔眼(仮)で鑑定する。
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蠱惑の花
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生き物を魅惑し、思考力を徐々に低下させる香りで誘き寄せる。
周囲の花畑は、惹きつけられた生き物たちのなれの果てだとかそうじゃないとか。
……
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「サトシ! インベントリにしまえ! 花畑から退避ー!」
「やっべぇわここ!」
「な、なになにそんなやばいの!?」
「うぉー!」
俺たちは一目散に花畑から退避した。また戦闘とかじゃなくてこんなんかよ!