ゴブ↓リン↑?
トモキのほうは気絶でもしたのかぐったりとして動かない。せめてやり合ってでもくれれば逃げられたのに、役に立たないやつめ。蔦をなんとか外そうと悪あがきするが、疲れと緊張から思うように外れない。
「おglkjほうおわ、だkmほじょmlふぉあか!?」
鼻息荒くコワモテの怪物が顔を近づけてくる。おいしくないです食べないでください。普通は出てもゴブリンでしょ。いきなりホブとかハードモードですかね!?
多分意味はないだろうが、敵意は見せず引き攣った笑顔で固まっていると、ホブゴブリンは俺の足の蔦を引きちぎった。こわぁ、俺のことは引きちぎらないでほしい。
ぐいっと手を引かれて立ち上がると、のしのしとホブゴブリンはトモキのほうへと向い、襟首を掴むとずるずるとひきづり始めた。おやつかな。お弁当かな?
「どlnljfosaしたjlkjlふぁ、いlこふあぜfぁs!」
親指でくいっと、こっちへこいと指示されているのはわかる。
「はい、なんなりと!」
「なljlにいててあんっlkじょ?」
言葉がわかっているようで通じていないのかもしれない。首を傾げながらも歩きだしたので俺はゆっくりとついていくことにした。必死で逃げたから正直どこかもわからん。すぐに食べられないだけマシだと思おう。あいつらは無事かなぁ。
しばらくすると見慣れた少し開けた場所に出る。ってやばい。敵をつれてきちゃったんじゃないかこれ。あっ、でも迷わず向かっている以上無理か。
「よljんflさjみたlj lkljdふぁだkfんsl!!」
なんて考えているうちに、ついてしまったようだ。ホブパイセンの声で我に返る。そこには、仲間を介抱しているゴブリン達がいた。こっちを見てギャーギャー騒いでいる。はて? 俺はホブパイセンの顔と、目の前の光景を何度も見直し、酷似した状況を思いかえしてみる。ホブパイセンにまずは声をかける。
「ホブゴブ↓リン↑?」
「なんljkljfてんfなsdljだ?」
ちょっと英文っぽく聞いてみたら、めっちゃ怖い顔で首を傾げている。うん、まぁそうだよなぁ。今度は近づいてきた小柄なゴブリンに声をかけてみる。
「ゴブ↓リン↑?」
「なんファljヵsdんlんのんlさlふぁs!!」
めっちゃ頭叩かれた。だが殺意といったものは感じられない。そうか、そうだったのか。謎は大体多分きっと解けた!寄ってきたゴブリン達を指差し俺は真相を語る。
「お前ら、いつの間に魔物にクラスチェンジしたの?」
こんどは全員から叩かれた。解せぬ。
**
「どうしたもんかねぇ」
「なklんdklんfあ!!」
「こたlkldさfわかんljfsjきたふぁき!!」
「ごめん、何いってるかわからん……」
判明したのはこのゴブリン達は、ゴブリンじゃないってことだ。もしかしたらゴブリンになったのかもしれないけど、俺がゴブリンに見えているだけって可能性が高い。地面に横になっているゴブリンは女子2人と助けたさくら先生だろう。ちょっと遠巻きに見ているゴブリンがショウタだな。うん、ゴブリンゴブリンってゴブリンがゲシュタルト崩壊してきた。正直言葉が通じないからわからない。通じないっていうかこっちがわからないだけっぽい。多分メグミだと思われるゴブリ……メグミにゴブリンって言ったらレンっぽいゴブリンに何事か聞いてから叩かれたし。
ピピピピッ、ピピピピッ
「おっと、やばっ、タイマーが鳴ったってことは戻らないと」
設定していたタイマーがなることで、びくっ、と周囲のゴブリンもといクラスメイトが驚く。ってかどうやって消すんだ。タイマーを消そうと、なんとなく顔や頭に手をやる。首筋あたりに手をやったときに違和感を感じ、思わず握りしめてしまった。タイマーも止まったわ。
「なんだこれ?」
「うん? どうした?」
「いやさ、タイマー消そうとしたら首になんかあったみたいでさ。潰しちゃったんだよ」
「なんだそりゃ? 粉……蝶々?」
「えっ、っていうかさ、言葉……」
メグミが何か言っているが、レンが言ったようにこれは蝶のようだ。手で潰してしまったようで鱗粉がベッタリとつき、ばらけた翅が手のひらに残っていた。素手で虫潰すとかいやなんですけど。
「うわぁ、水ない水?」
「そんなのに使ってたら水もったいないって」
「服で拭いてしまえばいい!」
「やだよ!」
「ねぇ、ちょっと……さっきから言葉さ」
「なんだよ、メグミ、さっきから〜。水かハンカチとかない?」
手を開いたまま右往左往してしまう。どうしようもないときってさ。なんかキョロキョロうろうろしちゃうよね。体液とかでてないよね。ぞわぞわしてきたんだけど。
「話を聞けー!」
「へぶしっ」
メグミに頭を叩かれ我に返る。
「あっ、そういえばみんな元に戻ってる」
「戻ったのはお前だって」
メグミは怒っていたが、ツッコミを入れたレンと他全員は苦笑していた。やっぱり解せぬ。