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サイド:アスカ その2

「はぁ………。」


「何、アスカ、恋煩い?」


私がため息をついてると、一つ上の先輩の京子さんが声をかけてくる。


「あ、京子さん。何で溜息吐いたら恋煩いなんですかぁ?」


私がそういうと、京子さんはふふんと笑って言う。


「だって、明日香ちゃんは仕事にかけるオンナ、じゃないでしょ?だったらオトメの悩みは恋以外にないじゃないの?」


……大きく外れていないって言うのがつらい。


というか、春日センパイの事は、アレから気にはなっているけど、恋してるのとは、また違うと思う。


あの後、私が出社したら、課長に呼び出され、「やめないで欲しい」と頭を下げられた。


色々聞いたら、やっぱり打ち合わせというのは口実だったという事。


事が事だけに騒ぎを大きくしたくないとの事で、盛岡センパイは体調不良という事で、プロジェクトリーダーを外れ、私には、当別ボーナスと特別休暇が頂けるらしい。


まぁ、私としても、あまり蒸し返されたくない事でもあったので、もらえるものはしっかりと貰って、その件はなかったことにしたのだが……。


「失礼ですねぇ、こう見えても悩み多き年頃なのですよ?」


私は、脳裏に浮かぶ春日センパイの姿を振り払い、京子さんにそう反論する。


「ふーん、で、相手は誰?」


「……聞いてないですね。」


私はそれ以上反論する気はなくなり、話題を変えることにする。


「それより、忘年会の話ですよぉ。なんかやれって、なにすればいいんですかぁ?というよりまだ夏ですよ?忘年会の話って早くないです?」


私がそういうと、京子さんが笑いながら言う。


「ウチは、これから忙しくなるからねぇ、今の内に言っておかないと忘れちゃうのよ。」


「今の内……って、忘年会シーズンまで、4か月以上あるんですよ?いくらなんでも……。」


……私はこの時、本気でそう思っていたのだけど、その後、京子さんが笑っていた意味を知ったのは、その忘年会直前になってからだった。



「……そう言うわけだから、今の内に考えておかないと、苦労するのよ。」


私は、遅めのお昼休憩の時に、新入社員の女の子にそう諭す。


あれから1年が経ち、私にも、後輩が出来た。


その後輩に、伝統になった「早すぎる忘年会の出し物の告知」をしている所だ。


そして、1年も会社に居ればわかってくる……この行為に、まったく意味のない事が。


「成程ぉ、それが「アスにゃん」誕生秘話なのですね。」


「……あのね、めぐちゃん、私がいつ「アスにゃん」の話をしたのかなぁ?」


ww太氏は、キャッキャと笑う新入社員を嗜める。


「だってぇ、準備の時間がなくて、昔の冬コミに使ったコスを流用して誤魔化そうとんでしょ?」


「コス、言うなぁっ!……」


そう、あの時の私は、忙しさのあまり、思考がおかしくなっていたのだ。


「忘年会って、要はお祭りよね?」


そんな風に考えた、当時の私を殴ってやりたい。


……まぁ、そのおかげで、春日センパイとの距離が縮まったのも確かなんだけどね。


「それより、今日、でしたよね?」


「うん、今日こそ先輩を口説き落とす。」


「頑張ってくださいねぇ。」


「ウン、頑張るよ。」


いつも定時に帰るセンパイを口説き落とすため、私は今日一緒に帰ることを決めていた。


その時間を確保するために、めぐちゃんを始めとして、何人かには少し負担をかけているけど、センパイさえ口説き落とせば、充分お返しが出来る。


去年のあの事件の後から、私はセンパイの事を見てきた。


すると、今までの悪い噂に隠されてきたものが見えてくる。


センパイの関わっているプロジェクトが堕ちたことは一度もない。


それどころか、その時のプロジェクトリーダーは、必ずと言っていいほど、重要で、一番時間がかかる部分を、センパイに押し付けている。


にもかかわらず、センパイは、普段通りやる気を見せず、定時で帰宅し、それでいて自分の仕事をこなすどころか、他人のフォロー迄さりげなくしていた。


……まぁ、フォローしてあげてるのは女の子に限定しているのが、なんとなくイラつくんですけど。


勿論、私も何度か一緒のプロジェクトになったこともあり、フォローも十分してもらったこともある。


ただ、私の場合、他の人よりセンパイに絡んでいたから、より一杯フォローを受けていた。


……アスにゃんを見せてからは、何も言わなくても、別チームでも、フォローしてくれているのは、「あすにゃん」がお気に召してもらえた証拠だと追うけど……ちょっと複雑。


とにかく、現在、私が携わっているプロジェクトがヤバい。


どれくらいヤバいかというと、このままいけば、締め切り前1週間は、乙女がおふろにも入れずに会社で泊まり込まなければいけない、というぐらいヤバい。


そして、そんな事になろうものなら、めぐちゃんを始め、私以外の女子社員は、まず退職するだろう。……ってか、私だって、春日センパイの事が無ければ辞めるに違いない。


そんな目に合わないように、私はは今日、春日センパイにヘルプを頼む役目を仰せつかったのだ。


……まぁ、そのついでに、センパイとの関係をすすめてもいいよね?


………。


そんな下心を抱いて、センパイとのデート?に臨んだのだけど……、


……マズい、飲み過ぎてクラクラする……。


ちょっといい雰囲気のレストランで食事でもして、それから……と考えていたのに、気付けばセンパイの部屋で、センパイの手作り?の食事も頂いて……。素面じゃいられないよぉ。


……ダメだぁ……酔って何をしゃべったか覚えてないやぁ……。センパイの顔が近づいて来る……、キスされちゃうのかな?かな?……あ、されてる……、センパイ好きぃ……。


私が覚えているのはそこまでだった。


気づいたら、私はベッドに寝ていて、センパイは机に向って何かしてる……。

……普通、ここで放置なんかする?センパイのヘタレ!


まだ、アルコールが残っている頭の中で、センパイに毒つきながら、私はそのまま、再び意識を手放す。……なんだか、センパイに抱きしめられている気がした……。



「………うん、確かに、センパイの部屋のベッドで寝てたはず。」


私は、そう声にだしてみる。


……うん、現状が変わらないのは分かった。


周りは一面の森。


そして、何故か頭に生えた猫耳。自分で触っても確かに感触がある処から、これはカチューシャでもつけ耳でもない本物だという事が分かる。


頭の中によぎる「異世界転移」という言葉。


「あぁ、うん、これがそうかぁ。」


ラノベでよく疑似体験をしたが、実際自分の身に起きれば……。


「迷惑以外の何物でもないわね」


アレは、社会に対し、何の責任もない学生やニート達だから喜べるのであって、重要なプロジェクトにかかわる身としては、無断欠勤の所為でどれだけ迷惑をかけるか?と考えるだけで恐ろしい。


それ以上に……。


「クゥッ、愛する二人を引き裂く神様なんて……あったら絶対責任取らせてやるっ!」


そう大声で叫んでみる。


……まぁ、私の片思いなんだけどさ。


でも、記憶違いじゃないなら、センパイ、キスしたよね?


って事は、彼氏彼女の関係になるのも時間の問題だった?


そう考えたら、今の状況にムカついてくる。


「……神様のぉ……バカぁぁぁぁっ!」


私は内側からせり上がってくるムカムカを、思いっきり声に乗せて叫んだ。


「ひぃっ!」


突背後から悲鳴が上がる。


振り返れば、女の子が、ナイフとロープを持って倒れていた。



この後の明日香ちゃんについてはまた後日。

次回から、零サイドに戻ります。



ご意見、ご感想等お待ちしております。

良ければブクマ、評価などしていただければ、モチベに繋がりますのでぜひお願いします。

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