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召喚された勇者って言われてもなぁ……

「よくぞ参られた、異世界の勇者たちよ。」


目の前の玉座?に座っている男が大仰な様子でそう声を掛けてくる。


「参られたって言われてもなぁ、拉致されてきたんだぜ?」


マイケルが吐き捨てるようにそう言う。


ここは、謁見の間?らしい。


目の前の玉座?に座っているのが領主なのだろう。


その両脇にローブを羽織った神官っぽい男と、騎士鎧を着た完全武装の男が控え、更には両脇にずらりと並んだ貴族らしき人々が、興味深そうに俺達を眺めている。


「大体、無理やり拉致って自由を奪ってから、言う事を聞かせるって言うのがこの国の流儀なのかよ?だったら、礼儀作法も何もないだろうがっ!」


騒ぐマイケルの様子を見て、護衛の兵士たちが剣の柄に手をかけるが、そばにいた近衛隊長らしき人物がそれを制し、俺達に声を掛ける。


「思う所もあるだろうが、お互いの為にも言葉使いや態度は気を付けて欲しい。」


俺はその言葉に頷くのだが、マイケルもザコビッチも納得がいかないらしい。


これが国民性という奴だろうか?


「そうは言われても、こんな扱い受けているんだぜ?言葉にとげが出ても仕方がないだろ?」


ザコビッチが、マイケルに同調するように、手枷を見せながら、そう言い捨てる。


「ウム……それは悪かった。何せ、異世界の勇者はとてつもない力を秘めていると言われておるのでな。」


玉座に座った男が、近衛隊長に目配せをする。


「とりあえず、暴れたり逃げ出そうとしたりせず、大人しく話を聞いてくれるのであれば、枷をはずそう。」


どうする?と聞いてくるので、俺達は揃って頷く。


手足が自由になるのであれば、話しぐらい聞いてやるよ、とうそぶくマイケル。


俺達の枷が外されると、マイケルとザコビッチは、んーっと大きく伸びをする。


俺も同じように体を伸ばして、凝り固まっていた筋肉をほぐす。


「そろそろいいか?」


近衛隊長が感情を押し殺した声で聞いてくる。


しかし、そのこめかみがわずかに引き攣っている所を見ると、かなり感情を逆なでしているらしい。


「あぁ、こっちとしても詳しい説明が欲しかったところだからな。……ところで、椅子はないのか?」


あえてそう言ってみると、思ったとおり、近衛隊長は無言で剣の柄に手をかける。


……おーこわ。揶揄うのはやめた方がよさそうだ。


「べラム、よい。」


玉座から声がかかる。


「お館さまっ!これでは、示しがっ……。」


「よいと言っておる。彼らは異国から来た客人だ。話は晩餐の席でよいか?」


玉座の男の言葉に、俺達は頷く。


少しでも早く情報が欲しいところだが、ここで立ったまま長話をされるより遥かにマシだと思ったからだ。


その後俺達はメイドさんに案内されて客間へと通される。


個室の様で、マイケルやザコビッチとは離れ離れとなった。


「お客様……えぇと……。」


案内してくれたメイドが、何か言いかける。


「あ、俺の事はレイでもゼロでも好きに呼んでくれて構わない。」


「はい、レイ様。ここが当面の間レイ様の御部屋となります。私はレイ様にお仕えすることになるカティナと申します。」


そう言ってカティナは見事なカーテシーでお辞儀をする。


「あ、あぁ、よろしく。」


俺達はそのまましばらく無言で見つめ合う。


……えぇと……なんだ?


カティナは、何やら俺の言葉を待っているような感じだ。


チップか?しかし俺はこの国の通貨など持っていない……と言うか、衣類以外何も持ってないよな?


少し困ってカティナに視線を向ける……よく見ると、緊張しているのか、身体が強張り、脚が小刻みに震えているようだ。


「えっと、あの、カティナ?」


「は、はっ、はいっ!」


「あー、良かったらでいいんだが、少し話をしたいんだが?」


「あ、ハイ……大丈夫です。」


カティナは緊張した面持ちで、ベッドに腰掛け、俺の言葉を待っている。


「先の「お館様」やこの国の事について教えて欲しいんだけど?」


「ハイ?」


「いや、、だからな、俺この国の事何も知らないだろ?だからな……。」


「あ、はい、そうですね……。」


カティナは少しホッとした表情を浮かべ、俺の質問に対して丁寧に教えてくれる。


そこで得た情報をまとめると……。


まず、この世界の中心には、ユグドラシルと呼ばれる、非常に大きな大樹がある。


どれ位大きいかというと、その高さは、雲を貫き、空の遥か彼方まで続いていて、果てが見えないという。


一説では、その果ての果て、ユグドラシルのてっぺんには、神々や精霊の住まう、理想郷……アルカディアがあるといわれている。


そしてそのユグドラシルを囲むように『精霊の森』と呼ばれる森があり、外部からの侵入を防いでいるらしい。何でも資格のないものがそこに立ち入ると、一生迷って出られなくなるのだとか。


だから、ユグドラシル関連については言い伝え以上の事は誰にも真実は分からないのだそうだ。


更に、その『精霊の森』を囲むようにしているのが、人類の住む地域でその全部を合わせて「ミズガルズ」と名付けられている。


ミズガルズは、大陸の名前であり、人類が生存できる世界を現すものだという事だ。


ミズガルズには大きく分けて4つの大国がある。


北の「シルべニア」、南の「アトラス」、西の「ユーロ」、そして、ミズガルズの東に位置するのが、この国「ラー」他にも小国は多数存在するが、「大国」と言えるのはこの4国であり、他には「龍族の末裔」が住むという「ドラゴニア」という国がシルべニアより遥か北の山脈にあるといわれているが、この国は、他国と干渉することが少なく、半ば伝説の国と化している。


先程の「お館様」はドラン・ガナル・ラーという名で、ラーの国の中でも、最大の領地である「ガナル」地方を治めている大領主であり、ラーの国の国王の実弟でもあった。


ラーの国には「ガナル」以外にも、「ゲブル」「ゴーン」「イスタン」「グール」など、いくつかの領地があり、その領主同士が相争い、領地の奪い合いをしているのが現状との事で、大領地であるガナルも、軍事には力を入れている。


国内でそんな争いが起きていて、大丈夫なのか?とも思ったが、何でもラーの国の国王は、国民は税を搾り取るための家畜であり、男は好きに使える奴隷、女は抱かれるためだけの玩具としか思っていない、典型的なクズ王であり、各地の領主たちは、そんな国王を見限り、独自の道を歩もうとする者、国王に倣って、私利私欲のために領民たちを苦しめている者、何とか善政を敷いてもらうため、孤軍奮闘して頑張っている者と、さまざまであり、それぞれの主張がぶつかり合って、争いへと発展しているのだとか。


ガナルは、領主が国王の実弟という事真理、一応国王派ということになっているらしい……。


まぁ、話に聞く限り、ドランはかなり出来る男らしいので、無能なものが、兄というだけで国王となっている今の現状に思う所はあるんだろうなぁ。


でなければ、「異世界召喚」などという、馬鹿げたことに手を出すわけがなかった。



「……成る程な。」


俺はカティナからひとしきり話を聞いた後、彼女に下がっていいよと告げる。


カティナは「本当によろしいのですか?」と問うてくるが、彼女が何を気にしているのかが分からなかったので、「用があれば呼ぶから」と言って彼女を下がらせた。


去り際、ほっとした表情を見せていた所から、きっと、異世界人相手に緊張していたのだろう、もう少し早めに解放してあげればよかったかな?などと思う。


カティナが去り、一人になったところで、俺は、今聞いた情報をもとに、幾つかの推測をたててみる。


まず、この国……というかガナル領が置かれた状況。


大領地とはいえ、反国王派の領地囲まれているため、常に侵攻に備えていなければならない。……まぁ、当然、裏で同盟とか結んでいるとは思うし、意外と、裏では「反国王派」の筆頭になってるかもしれないな。


それから、領内の資源だ。2/3が山岳地帯であることから、鉱物資源はそれなりに豊富だろうが、逆に食料に不安が伴う。


隣接した領地が南に豊かな穀倉地帯を持っているから、そこと仲良くしておけば問題はないのだろうが……。




……様。……イ様っ!


……ん?


「レイ様……あぁ、お目覚めですね。」


目の前にカティナの顔のアップがあった。


少し大きめのヘーゼルの瞳、頬にかかる銀色の髪。少し高揚して、赤く染まった頬に桜色の唇……。


「可愛い。」


思わず本音がボソッと漏れる。


全く似ていないのだが、彼女を見ていると明日香の事を思い出してしまう。


「な、何言ってるんですかっ!寝ぼけてないで、早くこちらに着替えてくださいっ!もうすぐ晩餐の時間になりますっ!」


少し慌てたように言うカティナ。


どうやら俺は考え事をしている間に眠ってしまったらしい。


俺は、まだぼーっとしたまま、カティナの言われるがままに着替えをするのだった。


ご意見、ご感想等お待ちしております。

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