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キャラメイク……ってマジなの?

「うぅぅ……もう夢でもいいですからぁ、話を聞いてくださぁぁぃ……。」


ユンと名乗った少女が、泣きながら俺の足に縋り付いてくる。


「わ、分かった、聞くから、ちゃんと聞くから、とりあえず泣き止んでくれ。」


俺は、足元の少女を抱き起す。


これでは俺が虐めているみたいではないか。


だけど仕方がないんだよ。この少女は、宇宙の事象がどうのとか、箱庭宇宙のミクロコスモスがどうたら、とかパラレルな次元震によって分岐するユグラシドルの柄だが……とか、訳の分からない単語を並べ立てるんだよ。


これが夢じゃないとしたら何だってんだって話。


それに、夢じゃないとしたら明日香は?


それとも、明日香が家に来てってところからすでに夢だったのか?


……いや、それはあり得るかも。


冷静に考えて、明日香が俺の家に来る謂れなんて無いし、そもそも明日香とキスするなんて……。



「あのぉ……きいてます?」


ユンがのぞき込んでいた。


いかん、ついキスした時のことを考えてボーっとしていた。


あれが夢だったとしても、あの感触を忘れることはないだろう……ってか、会社で明日香の顔をまともに見れないかもしれん。


「だからぁっ!聞いてますかっ!!」


「聞いてなかった。なんだって?」


「コイツ、最悪ですぅ!……まぁいいでしょう。ですから、レイさん、あなたには「ユグドラシル」を救ってもらいたいのです。」


ユンの話では宇宙に数多に存在する世界の一つ……ユグラシドルという世界に揺らぎが起きたせいで、このままでは、歪んだまま消滅するかもしれないとのこと。


ただ消滅するだけならいいのだが、今回の場合、揺らぎが大きすぎて、近隣の関係ない世界まで巻き込む恐れがあるという。


それを回避するためには、揺らぎの元を断ち切り、本来の道へとその世界を導く……それが出来なければ、せめて安定させる必要があるとのこと。


しかし、女神たちは大まかな流れを誘導することは出来ても、内部の細かい干渉までは難しいという事で、代案となったのが、女神の代行者をその世界に送り込むという事。


とはいっても、多少の融通を利かせるとしても、所詮はタダの人間。どこまで出来るかは不透明。だから、時間をおいて、何人か送り込んだけど、いまだ平定の様子は見えず、最近では揺らぎが大きくなってきたという事。


こうなったら、その人の資質とか関係なく「運命力の強い」人を送り込もうという事になり、それに見事に引っかかったのが、俺、というらしい。


「なるほど、そういう設定ね。で、俺はその世界で冒険をしながら世界を揺るがす根源を探し出し、それを討てばいい、とそういうことだな?」


「ほぇぇぇぇ……。」


「どうした?」


「いえ、あの、……急に理解が早くなってびっくりしたというか……。」


「あぁ大丈夫、こういうのは好きな方だから。それで、この後は?チートは何を授けてくれるの?」


「えっ、あっ……チート???とりあえず、レイさんの能力の方向性をですねぇ……。」


「おっ、キャラメイクからやるわけ?……どうやるの?数値が出るわけじゃないの?」


「えっと、その、数値???とりあえず、レイさんには魔法が使えるように魔力値を上げてですねぇ……。」


「おぉっ!魔法がある世界なのかっ!そりゃぁ、魔法は使いたいよな。……だけど、魔法使いは接近戦に弱いし……。いや、身体強化の魔法を使えれば……どちらにしても武器は使えるように……。」


ぶつぶつ言う俺を、ユンは困ったように見ながら、俺のつぶやきを必死にメモしている。


……数時間後。


「はぁはぁはぁ……こんな感じでよろしいでしょうか?」


息を切らせながら、ユンはメモを読み上げ終える。


「あぁ、それでばっちりだ。」


「はぁはぁはぁ……じゃぁ、いくつかわからないことがあるので……この収納魔法って何ですか?」


「えっ、収納魔法ないの?ほら、何でもたくさん入って、中の物は時間が止まるから鮮度が保てるっていうあの定番の……」


「ごめんなさい、よくわからないので、この水晶に手を当てて、レイさんの持つ収納魔法のイメージを思い浮かべてください。」


俺はユンの言う通り水晶に手を当てて思い浮かべる。


暫くすると、俺の身体が光り、その輝きが水晶に吸い込まれていく。


「あと他に、転移魔法、身体強化、結界……などが認識できないので、登録してもらう必要があるのですが……」


そう言ってユンは口ごもる。


何でも、俺の妄想?は奇をてらいすぎていて、ユグラシドルに適応しないらしい。それを無理やり合わせるために登録が必要らしいのだが、その登録も無限ではないらしく、全部で5つが限界とのことだった。


だから俺は『空間収納』『身体強化』『空間転移』『解析』『状態異常完全耐性』の5つを登録してもらう。

この辺りは普通に設定されてるものだと思ったが、わが夢ながら融通が利かないらしい。


「じゃぁ、これでOKですね。最後に……。」


ユンは急にまじめな表情で俺を見つめる。


「あなたを向こうに送り届けたら、私たちは干渉が出来なくなります。そこで、目印にするため、あなたには、こちらの世界のモノを何か持って行ってもらいたいと思います。何かありますか?」


いきなり言われても困る。


夢にしろ、ゲームにしろ、本当に異世界に行くにしろ、リアルの持ち物は便利すぎる。だからこそ一つに絞るのは難しい。


「あー、だったらスマホで。出来れば充電できるように……」


スマホの中には明日香の写真が入っている。なぜか手放したくないとそう思った。


……夢から覚めたら、告白してみよっか。


そんな考えが脳裏に浮かぶ。ダメだ、これフラグってやつだ。


俺は頭を思いっきり降ってその考えを振り払おうとした……が、頭だけでなく体も揺れる。


「な、何だぁ?」


「いけません、他干渉です…………ダメです……コントロールが……。」


すでに空間はぐんにゃりして、ユンの姿も見えない。


「……レイ……さん……クリスタル……導き……って……。」


ユンの言葉が途切れ途切れに聞こえていたが、あっという間に白い闇に飲み込まれて……。


そして、気が付けば、祭壇の間にいた。


◇ ◇ ◇


……今思えば、あれは夢じゃなく、本当の事だったんだな。そして、ユンが別世界に送ろうとしたタイミングで、この世界の召喚魔術が発動し、それに引き寄せられたってことだろうな。


「……おい、ジャップ、起きろよ。」


「……ふぁぁぁ……その言い方、やめてくれないか?」


「ん?あぁ?わかった。」


マイケルが不思議そうに首をかしげながら頷く。


その態度に俺は違和感を感じる。まさか、蔑称と思ってなかった……とか?


……しかし、夢じゃないってか……。


なんとなく明日香のぬくもりを思い出す。


こんなことになるなら、寝ていてもヤッてしまえばよかった、などとゲスな考えが脳裏をよぎる。


まぁいいやと俺は頭を振って眠気を覚ます。


話によれば、もうすぐ領都に着くらしい。


そこでまず、帰る方法があるかを確認するんだ。


すべてはそれからだろう。


俺は眼前に迫る城壁を目の当たりにしながら、これからのことについて考えをまとめ始めるのだった。


ご意見、ご感想等お待ちしております。

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