街へ④
川沿いを歩いて1時間くらい経つと明らかに何かが通って出来た土を踏み固められただけの道のようなものが出来ていた。
「これは人か獣が通ってるはずだから道を辿って行ったら人に会える可能性があるな」
道らしきモノのあとを辿っていくとやがて大きく開けた道に続いていた。
「これは確実に道だよな?なんか車輪の跡のようなモノもあるから街道なのか?」
周囲を見渡して見るが人らしき影はなくどっちに行ったら人里に着くのかもわからない。
「ルビーどっちに人里があるかわからないか?」
「わからないわね。そもそも私達が居た時に周囲に生き物の気配は余りなかったもの」
一か八かでルビーの知識に頼ろうと声をかけたがあえなく撃沈の答えだった。
「数百年で徐々に生存範囲を広げてきてるってことは人間はある程度栄えているんだな」
「ソウさっきから人間の可能性ばかり考えているけど此処には人間以外も多くいるのよ」
「そうか、人間の住んでる所じゃない可能性もあるのか…」
ソウは以前の地球での知識を思いだす。
(人間の国では無い可能性…もしくは人族を重視している可能性…逆に皆んな仲良くの可能性もあるのか…)
「これは一度偵察が必要だな…」
ソウはそう言って道から外れ草原の方へ戻って行った。
「さて、どうするかな…創造魔法で透視魔法みたいなのを創るか?」
そう考えながら上を見てると上空を鳥が飛んでいるのが見えた。
「確か闇魔法に使役に似た魔法があったような…」
「確かにあるけどあれは…洗脳だから意思疎通が出来ないと無意味よ」
「そうだよな…風魔法で浮くのも今の俺じゃ出力が足りないし影には生き物は入れないし…」
「あの鳥を洗脳して飛ばして付与魔法で視界を共有すればいいでしょ」
ソウがあれこれ悩んでいるとルビーが呆れながら教えてくれた。
「なるほど!まだまだ頭が凝り固まってるな…ありがとうルビー」
ソウはルビーにお礼を言うと早速上空を飛ぶ鳥を風魔法で捕まえて洗脳と視界の付与を実行した。
(うーん視界の共有はなんだか慣れないな…)
飛び立った鳥と視界を共有しながらソウは街がある方を目指して飛ぶ。
やがて視界には明らかに人工の塀が見えてきた。
その周りにはポツポツと人影も見えてきた。
(あれは人か?いや獣人ぽいのもいるな…見た所、虐げられている様子も無いな)
ソウはゆっくり旋回しながら街と人の様子を観察する。
(どうやらあの獣人がいるグループは護衛か冒険者のようだな…皆んな武器を持って馬車を守っている)
馬車の上を飛びながらそのグループを見ていると塀の前で列になっている集団の後に並んだ。
列の先の方を見ると塀の方で門番らしき兵士が槍や剣を持って立っている。
塀は高く10メートルほどあり所々が崩れたり補強されたりしておりこの街を守ってきた感じがする。
更に塀の周りは堀で囲われており街に入るには降ろされている橋を渡る形になる。
橋の前にいる兵士に何やら見せたり手渡してるのが見えるが上空からだと良く見えない。
ソウは鳥を橋の方に下ろしていく。
(どうやら通行証を見せている人とお金を渡している人がいるようだな)
そこまで観察するとソウは鳥の洗脳を解いて視界を自分の身体へと戻すのだった。