街へ①
ソウは初めての戦闘の勝利がなんだかパッとしない勝ち方ではあったが一先ずは生き残ったことに喜びを感じていた。
「初戦闘での勝利だが何ともカッコ良くないな」
「相手が最初に油断して魔法を使われなかったから助かったわね」
「そうだな、初めから息を潜めて魔法を使われてたら危なかった」
絶命したオルトロスの横でソウはしゃがみこんで会話していた。
「死体の傍に居ると他の魔物が寄ってくる可能性もあるからなるべく早く移動しないとな」
周囲には戦闘による足跡がしっかり着いており戦いの音も聞こえていたはずだ。
「一先ずこのオルトロスは影に収納だな」
ソウはオルトロスに触れながら影の中に押し込んでいった。
「やっぱりこの闇魔法の能力は便利だな。後は影の中時間がどうなっているかだがオルトロスの体温で判断出来るかな?」
ソウはなるべく物音を立てないようにしながらその場を離れていった。
15km程離れた場所でソウは足を止めて影からオルトロスの死体を出した。
「少し冷たくなっているな」
どうやら影魔法での収納には時間停止能力は無いようだ。
「とりあえず食料確保の為にもコイツをら解体しないといけないが……」
「あら、そんなことしなくても創造魔法で素材に分解すればいいじゃない?」
「創造魔法はそんなことが出来るのか?」
「ソウ誤解しているようだけど創造魔法は物体の創造から魔法の創造とあらゆるモノを創造出来る魔法よ。」
「俺はてっきり錬金術とかをイメージしていたけど違うのか?」
ルビーは少し呆れたようだが創造魔法について簡単に説明してくれた。
最初に魔法を創るには莫大な魔力が必要となること。
また物体の創造には対価となる物質が必要となる。
魔法の創造に至っては何を創り出すのかその効果範囲や時間制限などを明確にイメージするのと魔法に対する対価が必要となる。
これは強力な魔法程、範囲、時間制約、対価が厳しくなる。
「その対価っていうのは何なんなんだ?」
ルビーはソウが自分の話しを真剣に聞いてるのに対し少し自慢げに応える。
「対価とは制約よ。その魔法を使っている間はその場所から動けなくなる等の制約を自分の中で決めるのよ!」
「なるほど無制限にホイホイ創れるわけではないのか?」
「そんなこと出来ないわよ。それとイメージが曖昧だったり制約が緩すぎる場合は魔法が発動しないわ」
「つまりは世界のバランスを保つ為の制約ってところか」
ソウはある程度理解したのでオルトロスの解体に使う魔法イメージを始める。
まずは魔力を流し物体をスキャンして位置構造を把握、次に核部位事に風魔法で切り分けることをイメージして対価に関しては5分その場から動けないを設定して創造魔法を発動する。
「何とか出来たが思った以上に魔力を使うな…これは魔力量の強化が必要になるな」
そう言いながらソウの前には綺麗に剥がれた皮と爪と牙があり、またその隣には内蔵と各部位の肉が置いてある。
そしてソウが手に持っているのが魔核。
大きいビー玉みたいなサイズのが心臓に覆われるように着いていた。
「緑色に光っているから風属性なんだよな?」
「そうよ、その魔核は色が1つだからシングルね。さっきの狼は風属性しか使えなかったようね」
魔核はその魔物の属性によって色が変わり1属性ならシングル、2属性ならダブルと複数の属性を持ってる魔物からはそれだけ高価な魔核が取れる。
なぜ魔核が高価かというと魔力媒体に使われエネルギーの変わりになるからである。
「異世界の動力源みたいなものか?」
そう言って魔核を影の中にしまおうとした時、ルビーが喋りかけてきた。
「ソウ、その魔核を取り込んでみなさい」
「魔核を取り込むってどうするんだ?まさか食べるのか?」
「食べるんわけではないわ。魔核を持って自分の核の中にエネルギーを取り込むイメージね」
「そうするとどうなるんだ?」
「核にエネルギーを吸収させる事で他の魔核達も早く起きるはずよ。自分の器以上の核を取り込むと激痛に苦しむけどその程度の核なら問題ないはずよ」
ソウは魔核を手に持ち自身の自らの核にエネルギーを流し込むイメージを行う。
すると魔核から色は失われただの石のようになった。
「何か変わったのか?」
そう言いながら自身の核の存在へと意識を傾けると最初より少し龍核の存在に力を感じるようになった。
「多少は力を取り戻したようだけどまだまだ足りないみたいね」
「早く他の皆とも話せるようになりたいんだけどな…」
ソウは多少のガッカリ感を出しながらも他の荷物を影の中にしまっていった。