反省会と防具⑤
部屋に戻って来たダンは無言で大きな袋をソウの前に置く。
「…ダンさん、これは?」
ダンの雰囲気に呑まれて言葉に詰まりそうになったがソウは疑問に思ったことを聞く。
「これは昔俺が使っていた防具だ。ソウは魔法剣士と言っていたな、俺は斥候職だったが近接もしていたから斥候にしては軽戦士並の防具を使っていた。これはワイバーンの鱗を元にギランの爺さんに作って貰った奴だ!手入れはしっかりしていたから爺さんに言ってこれをリメイクして貰えば値段は金貨5枚程で出来るはずだ!」
ダンは捲し立てるように言うと昔使っていた防具をソウの胸に押し付ける。
「そんな…貰えませんよ!ダンさんにとって大切なモノなんじゃ?」
ソウは綺麗に手入れをされていたダンの防具を見てそれを返そうとする。
「良いんだ!コレはその…パンのお礼も兼ねてるんだ!」
ダンも引く気は無くソウに防具を押し付け2人が押し問答をしているとそれを遮ったのはサナだった。
「アンタがこれを人にやるなんて随分とソウを気に入ったんだね!すまないが貰ってやっとくれよ!ソウ。」
サナさんがダンさんの方を向くとダンさんは顔を逸らして答える。
「お前だってソウを気に入ってるって言ってただろ!」
「はっはっは、確かに言ったね!だからってアンタまで大切にしていた防具を上げるとは思わなかったけどね。」
そう言ってサナさんは以前ダンさんから聞いた話をかい摘みながらこの防具がダンさんにとって大切なモノかを教えてくれた。
この防具はダンさんが冒険者時代にギランさんに頼み込んで作って貰ったものだそうだ。
なんでもギランさんはその時から自分が気に入った仕事しかしなくなっており最初はダンさんも断られたらしい。
それでも何とか防具を作って貰おうとしたが幾ら
頼み込んでも作って貰えずダンさんは諦めかけた。
少し落ち込みサナさんの店で料理を食べる為立ち寄るが落ち込んだ状態で食べている為味も良くわからないしサナさんとの話しも入ってこない。
落ち込んだ表情でサナさんの店でご飯を食べていると案の定サナさんに見破られその話をサナさんにすることになった。
サナさんに話した所でどうにかなる訳ではないがサナさんの行動力は凄かった。
次の日にはダンさんを引き連れてギランさんの所に行きギランさんに怒鳴り付けていた。
「アンタが防具を作らないせいで私の新作料理をため息混じりで食われて味の感想が聞けなかった!代わりにアンタがこの料理の感想を言え!」
ギランさんも最初は戸惑っていたがサナさんの余りの剣幕に押されたのとただ料理を食べて感想を言うだけで解放されるならと料理を食べる。
「上手い。」
料理を食べたギランさんの感想はただ一言だった。
だがサナさんの作る煮込み料理を気に入ってのかそのまま無言で食べ続けた。
それを見ていたサナさんはギランさんに続けて言う。
「アンタが防具を造らないと私の料理の味が評価されないんだから防具位造ってやれ!そしたらアンタが上手いと言った料理をもっと喰わせてやる!」
サナさんの言葉を聞いたギランさんは大笑いをしてこう言った。
「ふひ、ふっはは!確かにこの料理以上のモノがまた食べれるなら坊主に防具を造る価値はあるな!」
そう言ってギランさんはダンさんに防具を作りサナさんは約束通り新作料理をギランさんに振る舞った。
ダンさんが冒険者を辞める怪我をしたが助かったのもこの防具のお陰だそうでダンさんは自分の為にギランさんに直談判に言ってくれたサナさんとの想い出の防具をとても大切にしていた。
またギランさんはサナさんの料理をとても気に入りサナさんがタギアツに来る際には料理が食べられなくなるのが嫌で一緒にタギアツまで来たほどだ。
そんな話を聞いたソウはやっぱり断ろうと防具をダンさんに渡そうとする。
「そんな大変な想い出の防具やっぱり貰えませんよ」
ソウがそう言うとサナさんはダンさんの方を見て言う。
「そんな色々な想い出が詰まった防具を手放しても良いと思える相手が出来たんだ!貰ってやっておくれよ。じゃないと墓にまで持ってくんだから!」
サナさんが茶化すがダンさんは真剣な表情でソウに言う。
「確かに想い出のある防具だがこれを託したいと思った男はお前なんだ!Cランク止まりの冒険者の防具で申し訳ないが嫌じゃなければ貰ってくれ!」
「ありがとうございます。大切にします!」
ソウは2人の気持ちに心が暖まる感じがして自然と頷き防具を受け取った。
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