双頭狼 討伐③
魔法を試してわかったことはソウには数種の特性
があることだ。
これは魔核の主人達の力が大きく反映されている。
赤龍からは火魔法、青龍からは水魔法、緑龍からは風魔法、金龍からは創造魔法、白竜からは光魔法、黒龍からは闇魔法、紫龍からは付与魔法という具合だ。
火、水、風魔法はその名の通りの系統の魔法だ。
火や水を出したり消したり風を纏わせたり出来る。
創造魔法は凄い魔法かと思ったが物品と魔力を使ってモノが創れる魔法だった。
どちらかと言えば錬金術に近いのだろうか?
光魔法は治癒や結界を使え、闇魔法は影を操れるこれの便利な所は何と影の中にモノを収納出来ることだ。
ただある程度の大きさのモノは触れていないと入れることが出来ない。
付与魔法も色々と使えそうだがどの魔法もまだ威力や持続時間が短い。
ルビー曰く魔力回路がまだ細く安定していないのが原因らしい。
その他にもこの世界には様々な魔法があるらしいが使えない魔法のことは今考えても仕方がない。
ひとしきりの魔法を試して幾つか有用な魔法の使い方を考えていた所でソウの腹の虫が鳴いた。
「グルルルゥ」
ソウは自分の腹の虫の音を聞いて自分がかなり空腹だったことに気がつく。
「そう言えばここに来てからまだ何も食べてないな。100km先に川があってそこには魔物か…出来れば動物辺りがいいんだが…」
ソウが少し戸惑っているとルビーが伝えてくる。
「言っとくけどこの森には動物なんて居ないわよ。居るとしても森の本当に浅い所でしょうね」
それを聞いてソウは若干のため息と共に諦めて川に向かって走り出した。
「…はぁ、食料を得るには木の実を探すか戦うかか…」
走り始めると、ソウは以前の自分とは異なる身体の変化にまた驚いた。
「スピードが段違いだな。軽く走る感じのつもりだけど、まるで短距離選手の全力疾走の速さで走れているぞ」
それだけではない。
以前ならば10分でもランニングすれば息が上がり、苦しい思いをしていたはずなのに、魔力を身体全体に巡るようにすれば全く呼吸が乱れず、驚くほどの体力を感じた。
ソウは笑みを浮かべながら言った。
「これなら何時間でも走っていられるぞ!」
目的の場所に近づくに連れて感じるのは数多くの生き物の気配。
それ等から感じる気配は殺気を織り交ぜたような圧倒的な気配だった。
「気配にまで敏感になったんだな」
「当たり前でしょ。適合したばかりとはいえ私達の魔核を馴染ませた身体なんだから肉体や精神、感覚だって研ぎ澄まされているわ」
ルビーからの言葉にソウは相槌を打つ。
「それでも、まだ身体が馴染んでいない状態だし少し慎重にいくべきか」
どんな未知の出来事があるのか、興奮と不安が入り混じった気持ちでソウ達は森を進んでいき目的の場所に着いた。
「とりあえず無事に目的の場所には到着したな」
そう言ってソウは木漏れ日が差し込んでいる森の奥を警戒しながら川の近くに近づいていく。
川の水は透き通っており飲んでも問題無さそうに見えたが水道の水やミネラルウォーターしか口にしたことが無いソウにとって川から直接飲むのは少し躊躇ってしまった。
「水魔法で水は飲んだけとやっぱり川から水を飲むのもちょっと憧れるよな…なぁルビー、この川の水は飲めるのか?」
ソウの言葉に対してルビーは若干呆れたように応える。
「はぁ…ソウはまだ完全では無いにしろ魔核と適合しているのよ。多少の毒を食らっても状態異常になったりはしない身体よ。川の水位なんでもないわ」
それを聞いたソウは川の水を手ですくい勢いよく飲んだ。
「ぷッは、冷たくて美味しいな」
ソウが何度か水をすくって飲んでいたその時、
周囲の草が少し動く音がした。
微かな音と空気の変化から状況を読み取ったソウは逆鱗へと魔力を流し剣を出現させる。
「もう少し焦ると思ったんだけど冷静に行動出来ているな」
「これも核との融合の影響なのかな?」
そう言いながらソウは気配がする方向に目を向け戦闘態勢をとっていった。
喧嘩などした事がないソウは過去に因縁を付けられた時にガタガタと震えてしまった記憶が蘇ったが未知の魔物との遭遇だと言うのに恐怖心は無かった。