図書館とパン作り①
日も落ちかけている中でギルドを出たソウは屋台の美味しそうな匂いに釣られて街を探索していた。
大通りを歩いていると活気のある呼び声で肉を焼く屋台や果物や野菜みたいなのを売っている市場にたどり着いた。
「雑多な感じの市場とか来ると異世界ぽっさがますな」
そんなことを言いながら歩いていると屋台の親父から呼び込みを受ける。
「そこの兄ちゃん焼きたてのフォレストディアーの肉はどうだい?今なら半銀貨1枚だ!」
「フォレストディアー?」
ソウは聞いたことの無い名前に少し戸惑ったがそもそも異世界なので知らない名前しかないので仕方ない。
そう思って銀貨を渡して屋台の親父の肉を貰う。
「上手い、口に含んだ味は牛肉と変わらず噛めば肉汁がドバッと出てくる!そしてめちゃくちゃ柔らかい肉だ」
ソウが食べながら感想を言うとそれを聞いていた周囲の客達も肉を買い始める。
ソウはもっと食べたかったが屋台の前の人の群がりに揉みくちゃにされるのを避けて別の場所に向かう。
次に目を付けたのは果物や野菜などが置いてある市場だ。
見たことも無い様な野菜や果物もあれば地球の野菜や果物に似たモノもある。
その中でもソウが気になったのはゴーリンと言われるリンゴに良く似た果物だが色は水色で着色されているのを疑うレベルだ。
『さっきから地球に似た野菜や果物を見るけど色が異世界の色で戸惑ってばかりだ』
『ふふ、異世界なんだから仕方ないでしょ。それよりその果物はどうするの?』
『これが俺の思ってるのと同じ果物だと酵母ってのが作れてパンが柔らかくなるはずなんだけどいまいち覚えてないんだよな…』
『その酵母が出来るとパンが柔らかくなるなら作ればいいじゃない』
『やり方がうる覚えなんだよな…確か切った状態で水を入れて振って置いておくんだったと思うけど…』
『ソウ、何度も言うけど素材と知識があれば創造魔法である程度は出来るわよ』
『そうだった!さっすがルビー』
『あら、誉めてくれるのは嬉しいけどお店の人が険しい顔でずっとソウを見てるわよ』
それを聞いてソウはすぐさまゴーリンを10個程買って店を後にした。
宿に戻るとレナが食堂の手伝いをする為に食堂に入る所だったがソウに気がつくと嬉しそうに尻尾を振って近寄ってきた!
「おかえりなさい。ごはんはもうすぐだけどたべる?」
レナはソウの膝に抱きつきながら聞いてくる。
「部屋で少しやることがあるからそれから食べに行くよ。そうだちょっと使ってない小さな壺とかがあれば貸して欲しいんだけどサナさんに聞いてみてくれないかな」
「わかったー」
そう言いながらレナは大きく手を振りながら食堂に入って行った。
しばらくすると厨房からレナが大きな声を出しながら走って来てその後ろ姿をサナさんがゆっくりと見守っていた。
「おにぃーちゃーん!これならつかっていいってー」
ソウはサナさんにお辞儀をしてからレナの目線の高さに視線を合わせて言った。
「ありがとう!これはお礼だから後で皆んなで食べな」
そう言って買ってきたゴーリンを4個レナに渡した。
「ゴーリンだ!おにぃーちゃんありがとう」
レナはゴーリンを落とさないように抱えて後ろを向くとサナさんの方に走っていった。
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