間話〜ラルグ〜②
また来たらと思ってましたが彼が来たのは翌日でした。
恰好は少し変わっていましたが思わずこちらから声を掛けてしまいました。
恐らく商人だと思っていた彼がまた来た事実に少し驚きました。
彼に話しかけると彼は昨日のお礼を言ってくれました。
そこで名乗っていないことに気づき私の名前を告げると
彼からやはり以外な言葉を言われました。
「あっこんにちは。えっと今日は冒険者登録に来ました。」
冒険者になる少年は余り珍しくはありませんがどちらかと言ううと貧しいモノが殆どです。
彼のように計算が出来るのであれば商人ギルドで商人になった方が安全です。
それに気づかない程では無いと思うんですが…?
私は彼を登録ブースまで案内しました。
彼をリアナのブースに連れていきました。
リアナには少し怪訝そうな顔をされましたが
彼女も表情を取り繕うのは上手いので大丈夫でしょう。
既ににこやかにソウさんに話しかけています。
彼に気づかれないように彼の後ろに立ちました。
彼はやはり興味深いですね。
まずあの年齢で文字が読めて書けるなんて貴族の子や商人の子位でしょう。
貴族の子であれば護衛などは周りにいませんし商人の子なら商人ギルドに行くでしょう。
冒険者は依頼を行わなければ年会費が高くなりますからね。
商人でそんな無駄なお金を払いたがるモノは居ないでしょう。
そして彼の戦闘スタイルは…魔法剣士ですか。
魔法使いにもなれず剣士にも劣るそのような印象があることから魔法剣士と名乗るモノは居なくはないですが少ないのですが…実際戦闘で使える程の威力もなく使える属性も少ないので大抵は剣士とだけ書いてるモノが殆どです。
受付の用紙をリアナが受け取りギルドの説明の話をしますがきっと彼は受けますね。
大抵の冒険者説明を受けずにそのまま依頼を受けてFランクからスタートしますが…説明を聞けばEランクからスタート出来る方法を聞くことができます。
大抵は懇意にしてる冒険者から既にそのことを聞いていて受けるモノが殆どですが彼ならランクアップ試験を受けるでしょう。
私は気づかれないように彼の後ろ離れ少し根回しをしに行きました。
少しリアナには止められそうになりましたが
本来の試験官への根回しを終え無事ソウ君と戦えるようになりました。
会場に着いた時には冒険者同士が賭けをしていました。
私が中央に向かい歩いているとソウさんは突然賭けに参加出来るかを胴元のゾランに尋ね始めました。
しばらく見守っていると最後には自分の勝利に賭けるではありませんか。
本当に面白い。
普通に考えて試験官が弱くないのはあの子もわかっているはずそれなのにあえて自分の勝利に金貨を賭けるなんて…挑発にしても金額が多い気がしますがまさかそれだけの実力があるのでしょうか?
冒険者が騒ぎ立てる中でソウさんに尋ねます。
「すごい自信ですね…余程腕に自信があるのですか?ソウさんがデュアルヘッドウルフの素材を持ってきた時から気になっていたんですよ」そう伝えると何事も無かったようにただ頑張りたくなったと答える。
そして彼と戦い始めると想像以上でした。
ギルドのしきたりに乗っ取り最初の攻撃を譲りましたがこれをバッカスが相手してたらこの一撃で終わっていたでしょう。
何とか平静を装い反撃しましたがそれを交わされ並の冒険者以上の反応速度で攻撃をしましたがこれにも反応してきます。
しかしフェイントにはすんなり食いついてくれるので何ともチグハグな感じがしますね。
そんなことを考えていると更に驚かされました。
何と無詠唱で魔法を放ってきたのです。
飛んでくる炎を避け片方は切り裂きましたが
魔道具による詠唱破棄や詠唱短縮はありますがそれなりに値段が貼るのに使用回数があるので安易に使えるモノではありませんし彼はそんな魔道具を持ってるようにも見えませんでした。
恐らく本当に無詠唱が出来るのでしょう…
興味が尽きない子ですが危ういですね。
この場にも彼の能力に気づいたモノが何人か居るでしょうが下手なパーティに入れば便利に使われるでしょう。
私自身かつてAランクに届いたからわかりますが人は嫉妬深く狡猾な生き物です。
それを跳ね除ける強さがなくては冒険者として上に行けなくなります。
とはいえランク試験での実力は十分見せてくれてますのでそろそろ終わりにしましょう。
そして彼の放った魔法をガードして勝つ予定でしたが私も鈍ったものです。
3属性の無詠唱に何とか相打ちに持っていくので精一杯でした。
まぁ私に勝ったことで周囲を牽制出来れば良いのですがと考えていたら何と彼から指導の依頼がきました。
本当に何とも面白い少年です。
これは少し本気で指導することにしましょう。
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