ランク試験⑤
首に巻かれた鉄線には一応、光魔法の結界で首を薄く覆ってガードしていたが恐らく強度は足りていなっかっただろう。
勝利宣言を聞いて観客の冒険者たちが騒ぎ始める中でソウは自分の課題を明確に思い知らされた。
(身体能力に頼った攻撃で実践での武器の扱いや魔法の扱いが足りて無いのが浮き彫りにでたな。けれど魔核に魔力を流すことで魔力量も増えているし魔力回路も徐々に太くなってきているのは感じるからまだまだ強くはなれそうだな)
ソウがそんなことを考えているとラルグから声を掛けられる。
「ソウさんは高明な魔導士に弟子入りしてたんですか?」
(そう言えば無詠唱で魔法を使ったことで驚かれていたな…変な詠唱して不審がられるのもと思って無詠唱にしたけど……とりあえず門兵の時の話とも帳尻が合うようにしないと…)
「えっと一応村の外れに魔法の師匠は居たんですが偏屈な人で魔法意外は余り自分のことは話てくれなくて、それに修行の途中で亡くなってしまって……何でせっかく魔法も使えるようになったので兵士か冒険者になろうとここに…」
「そうですか。」
ラルグは一瞬だが少し目を細めてソウを見る。
(無詠唱を使える魔法センスに恐ろしい程の身体能力…所々で見える知性、他国のスパイのような気もしますが…しかし余り常識が無い感じ申し訳少し観察して見極めたいですね)
まるで嘘を見逃さない暗殺者のような目を向けられたソウだが逆にラルグの目を真っ直ぐ見返し尋ねる。
「それよりラルグさんこそ何であんなに強いんですか?ギルドの解体担当の人は皆んなあんなに強いんですか?」
「それはラルグが元A級の冒険者だからですよ」
ソウの質問に対してリアナが答える。
「ラルグは元々腕の良い斥候でしたがある依頼で怪我をして利き足に後遺症が残ってしまったの。そのまま引退しようとした所をギルド長がギルドに勧誘したの」
リアナの言葉にラルグは毒を抜かれたようになり少し張り詰めた空気が和らぎラルグが話し始める。
「まぁいつまでも冒険者で生活出来るとは思って無かったので助かりました。冒険者時代はソロ活動も多く1人で解体もしていたのでその知識を活かせますしね」
それを聞いてソウは尋ねる。
「えっと冒険者もギルドに依頼を出すことは出来ますか?」
リアナがソウの質問に答える。
「それは当然出来ますけど、どのような依頼でしょうか?依頼内容によって金額なども変わってきますよ」
「出来ればラルグさんに指名依頼がいいんですが…実戦練習の相手と斥候の知識を教えて貰いたいです。報酬はちょっとどれくらいが相場かわからないんですが…」
リアナがラルグの方へ視線をやるとラルグが少し考えたあと話し始める。
「わかりました。ソウさんの実力は並の冒険者異常ですので実戦練習は1月の間、ギルドのお昼休憩時に行いましょう。斥候の知識は私の休みの日に一緒に依頼を受け教えるのはどうでしょう?」
「それは俺はすごい助かるけどラルグさんの休みが無くなっちゃうのは申し訳ないよ…」
「いえ、問題ありません。報酬は別に頂きますが報酬の一環としてソウさんに魔物の解体も手伝て頂き負担を減らしますので」
今度はソウが少し考えてから話す。
(解体魔法があるけどそれは使えないよな…まぁ魔法が使えない状況もあるかもしれないし習って損はないか)
「わかりました。報酬とは別に解体作業の手伝いもします。それで報酬はどれくらい必要でしょう?今の手持ちだと金貨6枚くらいしか出せないかもだけど依頼を沢山受けて払えるようにするよ」
するとリアナとラルグはお互いを見て微笑み合うとソウに告げる。
「ソウくんは試験前に自分が勝つ方に金貨を1枚賭けていましたよ。恐らくソウくんの勝利に賭けていた人は少ないからそれなりの金額になってると思うよ」
ギルドの受付カウンターに戻り冒険者カードを受け取ると胴元のゾランが話しかけてくる。
「坊主のお陰で儲かった。これは坊主の勝ち分だ!」
そう言って金貨をカウンターに置く。
「金貨10枚って俺は相当人気が無かったんだな…」
そう言うソウに向かってゾランは言う。
「それは仕方ない。相手は怪我で引退したとはいえ元A級冒険者のラルグだ。誰もお前が勝つなんて考えてなかった」
「ラルグさんが手を抜いたとか調子悪かったとか思わないんですか?」
「あいつはそんな奴じゃないし。あの動きで手加減とか調子が悪かったと思う奴は上には行けない奴らだ。まぁ大半の奴らはラルグに賭けたせいでお前に多少の恨みはあるかもしれんが大抵酒を飲めば忘れるわい」
それを聞いてソウは酒場の主人に金貨を2枚渡してこれで全員にお酒を振舞って貰うよう伝える。
これで少しは風当たりが良くなることを期待して酒場を離れる。
そしてギルドを離れようとしたその時。
『ソウ!』
『うわ、なんだよ。ルビー急に話しかけるなよ』
『別にいいでしょう。周りに声なんて聞こえないんだから!』
『俺がびっくりするのと、こう頭の中で喋ると声に出して喋りそうになるんだよ』
『それはソウが私に沢山話掛けて治しなさいよ』
『それでルビーいったいどうしたんだよ』
『あのゾランって人間少し警戒しなさい』
『何でだよ。良い人じゃないか?』
『ゾランやその近くの人達から時々こちらを観察するような視線で見てくるのよ。今は悪意がある感じでは無いと思うけど…こう言うのは黒龍の愛子が得意だけど今は詳しくわからないから警戒だけしときなさい』
それを聞いてソウはまだ起きてない龍核を早く起こせるように修行に励もうと思いギルドを出る。
ギルドを出たソウは少し小腹が減ってきたので屋台がひしきめ合う通りで買い食いして宿に戻った。
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