ランク試験④
試験が始まってからヤジという名の歓声を飛ばしていた冒険者達だがソウの放った火弾に会場にいた冒険者のうちそれに気づいたモノだけが息を呑む。
賭けを取り仕切っていた胴元のゾランもその1人だ。
(あのガキ、今無詠唱で魔法を放ったのか?ちっワシ意外にも何人か気づいているな…)
ゾランは周囲を見渡し気付いていると思える冒険者たちを見る。
(今日に限って中堅の上位の奴らが何人か残っていたか…うーむ、正攻法だとあのガキの勧誘は難しくなりそうだな。後で少し探っておくか。)
ゾランは少し考えたあと気付いてないフリをして他の冒険者と同じようにまたヤジを飛ばすのだった。
ラルグはソウの火弾を片方は避けもう片方は魔力を通した短剣で切り裂いたあとに声を掛ける。
「魔法剣士とは書いてありましたがまさか無詠唱とは驚きました。今のは初級のファイヤボールのようでしたが?それにしては威力が少し弱かったですが…?」
ラルグはそんな話をしながら考える。
(たまたま休養日だったりした何人かは無詠唱に気付きましたね。魔法剣士は魔力が少なく器用貧乏になりやすい聞きますがそれでもその年齢で無詠唱を放てるなんて器用を通り越して異常ですね)
ソウは動揺を悟られないようにしながら気づかれないようにルビーに話しかける。
『おい、俺この世界で結構強いんじゃないのかよ?手加減何てしたらこっちが負けそうなんだけど…』
『知らないわよ。この男がこの世界でも強い部類なんでしょ。』
ルビーとそんな会話をしていると近くにラルグの短剣が迫ってくる。
「おや、考えごととは余裕ですか?」
ラルグの短剣の切先をソウは身体能力で交わしながら答える。
「余裕なんてないよ。それに流石に何でもは答えられないな!情報は金貨より高い時があるんだよ!」
そう言いながらソウは火弾を3発放って距離をとる。
ソウの動きをラルグは観察して気づいたことを言う。
「身体能力はかなり高いですが大分それに頼ってますね。剣技は行わず魔法の練習ばかり行っていたのですか?」
(さっきの情報は金より高いの発現も含め恐らく魔法の才を見出されて名のある魔導士の弟子になって修行を積んでいたが魔力量が少なく威力が上がらずに魔導士を諦めた感じでしょうか)
ソウは若干イラッとし本当のことを言いたくなりますが堪える。
「魔法の練習が好きだったんだよ!」
(くっそー剣なんてこっちは学校の剣道くらいしかやったことないんだよ…確かに魔法の練習しかしてないけど魔法もまだ2日目だ)
ソウは勝負に出ようと火弾を2発放ち距離を詰めながら風弾を1発放つ。
ラルグは最初と同じように火弾の1発目は避けもう1発は短剣で切り裂く。
ソウは次の風魔法による不可視の衝撃によりラルグの体勢が崩れると思い近づいたのだがラルグは視認しづらい風魔法にも反応して身体を捻って避けた。
風の弾丸は本来視認しづらいのだが足場が砂だった為、巻き上がっていた砂よ僅かな動きで見破り交わしたのだった。
そして近付いてきたソウの振り下ろしの一撃にラルグは短剣で反応してソウの剣を弾き飛ばす。
「まさか2属性も無詠唱で使えるとは…ソウさんもあなたに魔法を教えた方も何とも規格外な逸材だ」
剣を弾き飛ばしたラルグはそのままソウの首元に短剣を当てようとした瞬間。
ソウの指先から水が鋭く伸びておりそれが自分の首に当たっていた。
「3属性使えるのも驚きましたが水魔法まで無詠唱出来るとは少し規格外過ぎますね」
そう言ってラルグはソウの首元に巻き付いていた鉄線を外して立ち上がりリアナの方を見る。
「勝者!ソウ!」
リアナの宣言が終わりその声が会場に聞こえると怒号のような冒険者の声と共に試験は終了した。
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